7.誰を犯人にしたい?
「うーん……」
正直、私にはさっぱりわからない。
提示された条件が完璧すぎて、パズルのピースがどこにも嵌まらないような感覚だ。
ふと隣を見ると、白奈が自分の分のケーキセットを早々に平らげ、私の皿に残ったガトーショコラをじーっと見つめていた。
その目は、獲物を狙うサンのようだ。
私はといえば、話に集中しすぎてフォークを握ったまま手が止まっている。
「……食べる?」
皿を差し出すと、白奈は「いいの!?」と顔を輝かせて飛びついた。
「ちょっと、浜巡査。事件が気になるって言ったそばから、よくそんなに食べられるわね。少しは脳みそを使いなさいよ」
「えー、だってこういう話を聞くと、脳が糖分を欲しがっちゃうんだもん。
……もぐもぐ。……ふぅ、ごちそうさま!」
満足げに口元を拭った白奈が、不意に真面目な顔をして私と本田先輩を交互に見た。
「ねぇ。とりあえずアリバイとか証拠とかは置いといてさ……」
「……何よ、今度は何」
「二人なら、この三人のうち、だれを犯人にしたい?」
「はぁ!?」
私は思わず声を裏返した。
「あんた、何言ってるのよ。警察官が感情で犯人を決めるなんて……!」
「ちがうもん。今なら三人とも犯人にできるって思っただけだもん」
「黒音、すぐ大声になる。悪い癖だ。
……白奈、もしかして“今はまだ情報が足りない”ってことかい?」
「まぁ、そんなとこ。で、だれを犯人にしたい?」
本田先輩が面白そうに目を細めた。
「そうだな、じゃあもし、山中好実が犯人だとしたら?」
白奈はフォークを置き、真剣な目つきになった。
「山中好実の場合は、バイト先の監視カメラと自転車移動のタイムロスがネックですよね。
でも、バイト先って彼女の『ホーム』だし、コンビニにはバイト仲間もいます。
車を運転できるバイト仲間の存在や、帽子を深く被った後ろ姿が本当に彼女
本人なのか疑うポイントじゃないかな。監視カメラの場所が分かってるからこその
後ろ姿なのかもしれないしね。 コンビニ以外の、例えば駐車場に止めて
あった車のドライブレコーダーや付近のコンビニとは別の防犯カメラ等を
確認して彼女が映っていないなら、彼女が犯人の可能性は出てくるよね。」
本田先輩は、迷わずメモを取り始めた。




