6. 三人のアリバイ
●山中好実のアリバイ
「まず、山中好実だ。
彼女はその日、夜十時半までコンビニでバイト。その後30分ほど、バイト仲間と店内で談笑していたらしい。
防犯カメラには、帽子を深くかぶった彼女らしき後ろ姿が映っている。 犯行現場までは車で十五分ほどだが、彼女は車の免許を持っておらず、移動手段は自転車だ。現場まで自転車を使うと三十分はかかる。
十時半に上がって十一時に犯行はギリ可能かもしれないが……自転車に積んだボウガンを組み立てる時間とかを考慮する場合物理的に無理がある」
●時田茂のアリバイ
「続いて時田。
こいつは当日、会社で残業していた。退勤の打刻は深夜零時。
社長である山崎から『翌朝の会議までにこの資料をすべてまとめろ』という、
明らかに嫌がらせに近い急な指示を受けていたそうだ。
同僚の話では、こうした無茶振りは日常茶飯事だったとか。
他の同僚たちは十九時には帰宅しており、それ以降、会社には時田が一人きりで仕事をしていた。
会社から現場までは車で四十分。時間的には可能なんだが……
同僚たちの証言によれば、彼がこなしていた作業量は凄まじく、とても席を外せるような余裕はなかったらしい。
実際、翌朝には上司が、完成した大量の資料を確認している。」
●村上 拓海のアリバイ
先輩は最後に、一際険しい表情で手帳を指した。
「最後に村上だが、彼は仕事で愛知県に出張していた。
社用車のETC記録では、一宮ICに18時50分に入り、富山ICを降りたのが翌朝7時32分。
つまり一晩中、高速道路上にいたことになる」
「十九時から翌朝七時……?」
白奈が首を傾げる。
「愛知から富山って、そんなに時間かかりましたっけ?」
「ああ。普通なら三時間もあれば着く。
ETCの記録では一晩中、高速から降りていない。どこかのサービスエリアで仮眠でもしていたんだろう。
いずれにせよ、十一時の犯行時刻に現場にいたとは考えにくい」
先輩は苦々しい顔でコーヒーを口にしながら説明を終えた。




