63.白奈の一日
その夜の寮
「えー、私の勤務中に、美咲と喫茶店いってたのー 羨ましい。
私なんて、帰宅途中の小学生に馬鹿にされて散々だったんだからね」
「何があったんだよ」
「外国人が道を尋ねてきて、対応してたら、帰宅途中の小学生に
笑われたの、思いっきり日本語英語だって」
「まあ……」
否定しづらい。
「しょうがないじゃない。
そしたらその小学生が私の代わりに流暢な英語で対応してさ」
「なかなかシュールだな」
「私だって頑張ったんだよ!」
「そうだね、白奈は悪くない」
「慰め方が雑!」
白奈が不満そうに頬を膨らませる。
「で、美咲と喫茶店で何はなしてたのよ」
「実は……」
私は今日あった出来事を話し始めた。
「んー……」
説明を聞き終えた白奈は、しばらく考え込んだ。
そして首を傾げる。
「その唯さんの情報って、どこまで本当なんだろう」
「えっ?」
私は思わず聞き返した。
「いや、そのKei君って今、拘留中なんでしょ?」
「そうだけど」
「だったら唯さんが持ってる情報って、多分直接聞いた話じゃないよね」
私は少し考える……確かにそうだ。
「友達経由とか、家族経由とか?」
「だと思う」
白奈は頷いた。
「だからまず、警察がなんで動画を疑ってるのか、
その理由自体が正確に伝わってるか分からない」
「なるほど」
「仮に唯さんの話が全部本当だったとしてもさ」
白奈は天井を見上げた。
「動画を提出してるのにアリバイ工作だって疑われるんでしょ?」
「うん」
「だったら警察は動画以外の理由でKei君を犯人だと思ってるんじゃない?」
私は腕を組んだ。
「私もそう睨んだんだけど、具体的に何だと思う?」
「犯行現場の近くで目撃されたとか」
白奈はあっさり言う。
「え?」
「だって、その方が簡単じゃない」
確かに。
動画がどれだけ完璧でも、
犯行時刻に現場で本人を見た人がいるなら話は別だ。
「だから私ならまずそこを聞くかな」
白奈はそう言ってお茶を飲んだ。
「とりあえず、動画を見てみましょ」




