61.事件の内容
「叔母さんが殺された日も動画を撮ってたの?」
私が尋ねると、唯さんは力強く頷いた。
「そう」
そしてスマホを取り出した。
「事件当日の動画も公開されてる」
唯さんは三十分ほどの動画を再生した。
画面には作業机に向かう若い男性が映っていた。
モニター。
キーボード。
アイスコーヒー。
そしてモニターの上のスマホに映るデジタル時計とストップウォッチ
「犯行時刻とされてる時間帯も、ずっと作業してるの」
ナレーションで、現在プログラムしている内容をいい
その後、コーヒーブレイクでの雑談、今日見たニュースの話題
「さっきX見たら声優の〇〇さん、亡くなったってショックだよね~」
確かにその日、声優さんが亡くなっている
そして、再びナレーションベースの10倍速
唯さんは言う、
「これ、10倍速とか使うけど、基本はノーカットなんだって」
そして、悔しそうに唇を噛んだ。
「だから私は絶対に無実だと思ってる」
「でも警察は違うと」
「うん」
唯さんは俯く。
「警察は『動画なんていくらでも編集できる』って」
私は思わず腕を組んだ。
その意見自体は間違っていない。
動画は証拠になりそうでいて、案外脆い。
しかし――。
「警察がそこまで言うなら、何か根拠があるんじゃないの?」
私がそう言うと、
「わからない……でも
Kei君は、警察に未編集の、10倍速していない動画データを
警察に提出してるの」
「提出してるのに、まだ拘留されているの?」
「うん」
唯さんは頷く。
「でも、まだ編集点や映像の差し込みがないか調べてる最中なんだって」
私は腕を組んだ。
確かに動画というのは厄介だ。
一見自然に見えても、どこかで加工されている可能性はある。
「だから警察は、まだアリバイとして認めてくれないの?」
「そう」
唯さんは悔しそうに言った。
「Kei君は何度も説明してるのに」
「……」
「でも警察は、動画だけじゃ証明にならないの一点張りで」
私は再び動画を見た。
動画は、丁度終わりの部分に差し掛かっていた
『今日は六時間作業しました、時給三千円換算で、一万八千円の仕事でした。
それでは皆さんチャンネル登録と高評価、宜しくお願いします。んじゃまた』
少なくとも素人目には不自然な点は見当たらない。
だからこそ。
「警察は、何か他にも疑う理由を持ってるんじゃない?」
そう思った。




