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黒音と白奈  作者: nakada
第7章
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60/78

60.YouTuber 唯

挨拶を返しながら席に着く。

私は美咲を見る。

わざわざ迎えに来たくらいだ、雑談だけではないだろう。


すると美咲は、少し困ったような表情を浮かべた。


「唯はね、3Dプリンタでいろいろ作ってるんだよ」

「へぇ」

「今までは別の YouTuber とコラボしてたの」

そう言いながら、テーブルの上のロボットを指差す。

「その人がプログラミング担当で、唯が機械担当。ロボットのおもちゃとかを共同開発して動画にしてたんだ」


「なるほど」


確かに、一人で作るには少し複雑そうな代物だった。

「でもね……」


そこで美咲の表情が曇る。

「そのプログラミング担当の人が警察に捕まっちゃって」


「へぇ」

私は何気なく相槌を打った。

「だから今は、フリープログラマー 兼 YouTuber の私とコラボしてるんだけど――」


そこまで聞いて、ようやく言葉の意味が頭に入った。

私は瞬きをした。


「ふーん……えっ?」

私は思わず聞き返した。

「今なんて言った?」


「だから、その人が警察に捕まって」


「そこよ、

 なんでそんな重要な話を世間話みたいなテンションで言えるのよ」

唯が苦笑する。


美咲は首を傾げた。

「いや、説明の流れ的に」

「説明の流れで済ませる内容じゃないでしょう」

私が呆れると、唯は小さく息を吐いた。


そして――

「実は、その件で相談したくて」

静かにそう言った。


「捕まった男は、Kei君っていうYouTuberなんだけど……」

唯さんはコーヒーカップを握りしめながら言った。


「彼の叔母さんが殺されたの」

私は黙って続きを促す。

「それで警察は、状況的に彼が犯人だって考えてるみたい」


「状況的に?」

「叔母さんの家の近くに住んでたし、お金のことで揉めてたって話もあるらしいの」

なるほど。

確かに、それだけ聞けば真っ先に疑われる立場だ。


「でも、彼にはアリバイがあるのよ」

唯さんは即座に言った。

その口調には迷いがなかった。


「アリバイ?」


「うん。Kei君のチャンネルってプログラミング系なんだけど、作業時間を公開するスタイルなの」

「作業時間?」

「プログラムを書いてると時間感覚がなくなるからって、ディスプレイの上にスマホをおいて

 そのスマホで時刻を表示してるの」


私は少し興味を持った。

「動画には常に時刻が映ってるの?」

「そう」


唯さんは頷く。

「Kei君の斜め後ろにカメラを設置してて、Kei君越しのキーボード&ディスプレーの動画でね、殆どプログラミングしてるだけの動画なんだけど」

「その動画に需要あるの?」

「それなりに人気あるみたい、最初の2分くらいは、これから作る仕様の説明、その後

 ディスプレー上のスマホの開始ボタンを押すと、時刻の下に表示されている、ストップウォッチが

 作動して、それからナレーションで今何を作っているかの説明と10倍速でのプログラミング中の動画、

 そして、プログラム作成の切りのいい所まで作ると、コーヒーブレイクと称して、1分程の喋り、

 そして、またナレーションベースの10倍速でプログラミング中の動画、その後のコーヒーブレイク

 それを繰返して、最終的にプログラムが完了すると、ストップウォッチを停止して

 『今日は何時間作業しました、時給三千円換算で、いくらの仕事でした』で締めるの」


「なるほど、珍しいスタイルの撮影だな」

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