54.YouTuberって生き物、原田美咲って生き物
喫茶店を出た帰り道。
私は白奈に尋ねた。
「白奈。さっき先輩の前で、何を言いかけたんだ?」
「木村一美の動画、やっぱりアップされるのが早すぎる気がしてさ……
昨日の今日だよ、自分の車が横転してるのに、
喜んで、文句を言いながら動画にしてアップしてる」
「そういう生物なんじゃない? YouTuber って生き物はさ」
「いや、そうなんだけどさ……
黒音のアルトがパンクさせられた時、どうだった?」
「確かに、その日は一日中むかつきながら仕事してたけどさ」
「そう。それが普通じゃない?
自分の車が盗まれて、ストーカーが死んでたんだよ?」
「ねぇ、美咲にも相談してみようよ」
「守秘義務」
「ぶー……じゃあ、大事な部分は上手く隠してさー!」
◇
後日、いつもの喫茶店
「出来るわよ、X への自動投稿。公式の予約投稿機能を使えばいいし、
プログラミングの知識があるなら、簡単に送信プログラムも作れるわよ」
「えっ、そっち!」
そうだった、美咲の本業はフリーのプログラマー、そっちの知識も当然詳しいことを忘れていた。
私としては、副業の YouTuber の意見を知りたかったのだが……
「聞きたかったのって、自分の車が盗まれて、ストーカーが死んでたって聞かされてさ、
そんな状態で動画のアップできるかだったんだけど……」
美咲には重要な部分を伏せて話している
通信記録から、あの投稿が事前に投稿する機能を使用したものではないことは分かっていた。
だが、プログラミング知識があれば自動投稿そのものは可能である、それだけ聞ければ十分だった。
「まぁ、支えてくれる彼氏がいるのなら出来るんじゃない?」
それも納得した
結局のところ、木村一美のアリバイには穴があるかもしれない。
だが、だからといって犯人だとも言えない。
福野仁が自殺した可能性もあるし、誰かに殺された可能性もある。
要するに――何も分からなかった。
隣を見ると、白奈も同じような顔をしていた。
「美咲のおかげで、さっぱりわからない、ってことだけわかったわ」
でもつい突っ込んでしまった
「ずーっと考えて結論それ?」
美咲の優しいフォロー
「推理ってそういうもんでしょ!」
「わからないことがわかったんだから大進歩だよ!」
相変わらず前向きだ。
そのくらい楽天的な方が、生きるのは楽なのかもしれない。




