53.その後
後日、私は本田先輩に、木村一美が、YouTubeで暴露している内容を告げた、
電話越しだったが、頭を抱えているのがわかる
「内容筒抜けじゃないか」
「あと、白奈が、『ひょっとして睡眠薬とか飲まされていたりして』とか言って茶化してました。」
「白奈は相変わらずするどいな」
「えっ……?」
本田先輩の低い声に、私は思わずスマホを耳に押し当て直した。
「先輩、それって……」
「いや、聞くな、いや、もう遅いか、いいや、いつもの喫茶店で」
「わかりました。」
「わかっていると思うが」
「はい、内緒にしておきます。」
◇
茶店の奥の席で、本田先輩は声を潜めて言った
「死体の男の名前は、福野仁。フリーターだ。
彼は以前から糖尿病の治療を受けていてな。
白奈が言っていた睡眠薬じゃない。
解剖結果では、病院から処方されていた血糖降下剤を、数日分まとめて服用していたことが分かった。
そのせいで重度の低血糖を起こしている。
まともな判断や運転ができる状態じゃなかったはずだ」
それって、
「現状では、自殺の可能性が高いと見られている」
「えっ」
「薬は福野自身のものだし、車の運転席周りからは、持ち主の木村一美と福野の指紋しか見つかってない。
ストーカー行為を注意されたことによる、歪んだ愛情のもつれ――という見方が強い。
血糖降下剤の場合、いきなり気を失うなんてことはなく頭が朦朧とする時間がある、
その期間に、ギアをドライブにして目を閉じたのではないかということだ」
本田先輩はさらに続ける
「あと、死亡推定時刻は二十三時から零時ごろだ。
その時間帯、木村一美は自宅で彼氏と一緒に動画編集をしていた。
木村一美の自宅から、現場迄は四十分はかかる。
二十三時二十分ごろにはXへの投稿も確認されている。
念のため、発信元を調べたが、自宅のパソコンだった。
現状では、自殺と判断しても矛盾はない」
「でも…」
白奈が何か言いたげだ
「白奈、お前なぁ。
なんでもかんでも殺人事件にするのは、コナン君の見過ぎだぞ」
「ぶー……」
だが、白奈は納得していない顔のままだった。




