48.解決編.聞かれなかったので言ってない
「黒音、今、下取りって言った?」
「ああ。最初に会った時も、『下取り車があるならもっと安くできますよ』って言ってたけど」
「ひょっとして、その Ninja 1000 を売った時も下取り車があったんじゃない?」
「えっ。でも、タウンエースの中は空だったって……」
「それって納車前の話じゃない?
納車した後の荷台までは確認したのかな」
「……確かに……あり得るか」
◇
「えぇ、確かに下取りしましたよ、Honda CB400です」
若手刑事が聞き返した。
「なんで、そんな重要なことを黙ってたんですか?」
「え、いやだって聞かれなかったから」
老刑事がなだめる。
「まぁまぁ、此方のミスですすみません。
それで、その時の走行距離とか分かります?」
「えぇ、下取りに出すってなった時に事前に調べてあります。
もともと、異音がするので乗るのを止めて、代わりのバイクを探してます。
と言ったら、どんな症状かやたら聞かれて、答えたら
『大丈夫です下取りできます。』って言われて。」
客の男は、その時のやり取りのLINEを見せた
走行距離、下取りバイクの状況、バイクの写真等のやり取りが載っていた
◇
取調室
「新潟で下取りした Honda CB400 の走行距離が下取り時の記録より約350km増えていた。
長岡~富山の往復距離と一致する。」
「……」
「CB400のタイヤと、警察寮の駐車場に残っていたタイヤ痕。
その特徴が一致した」
「……」
「下取りした CB400 を、タウンエース内にあらかじめ持っていた修理、交換部品で直し、
そして富山へ向かい、警察寮で犯行に及んだ。
その後、長岡へ戻ってきた。違うか?」
「……」
「ドラレコの映像をお前のバイク仲間に見せた。
仲間は全員、お前だと言っている。
そのライディングパンツも、そのグローブも、いつものお前だとな」
「あいつら!」
「認めるんだな」
「俺は悪くない! 被害なんて出てなかっただろうが!
パンクなんて五分もあれば直る。
そんなもん、被害と呼べるのかよ!」
「被害かどうかを決めるのはお前じゃない。
器物損壊だけじゃ済まないぞ、
虚偽申請の件で処分を受けた腹いせに、
通報者と思われる相手を狙ったんだからな」
「くそっ!」
店長は机を叩いた。




