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黒音と白奈  作者: nakada
第4章
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43/78

43.事の顛末

富山県警からの緊急要請を受け、東京の警視庁は即座に動いた。

覆面男の供述にあった「マネージャー」という言葉が、捜査を一気に加速させたのだ。


「Xの投稿元IP、都内の漫画喫茶を特定しました」

「防犯カメラ映像を確認……一致。米沢美香で間違いありません」


その報告を聞いた瞬間、私は思わず息を呑んだ。

火乃 精のマネージャー——。

あの、彼女を“絶対売れる”と信じていた女性が。


言い逃れのできない証拠を突きつけられ、美香はその日のうちに逮捕された。


取調室での彼女は、ふてぶてしいようで、どこか晴れやかな表情をしていたという。


「火乃 精は関係ないわ。全部、私一人でやったことよ。

 あの子は絶対に人気が出る。私が見つけた、本物の金の卵なんだから」


その言葉を聞いたとき、私は複雑な気持ちになった。

愛情なのか、執着なのか、狂気なのか。

どれでもあり、どれでもないように思えた。



翌日。

ニュースはどこも火乃 精の話題で持ちきりだった。


『涙の説得劇! 一日署長が人質事件を救う』


そんな見出しがニュースとして報じられた数日後には


『涙の熱演もヤラセ! 勇敢なアイドル“火乃 精”、ひのせい(火のせい)だけに大炎上!』


どこかの誰かが上手いことを言ったつもりなのだろう。

そのフレーズはSNSで瞬く間に拡散され、

面白おかしく消費されていった。


私はスマホの画面を見つめながら、胸の奥がじわりと痛んだ。


(……火乃 精は、本当に知らなかったのか?)


あの涙は演技ではなかった。

少なくとも、私にはそう見えた。

だが、世間はそんなことお構いなしに叩き続ける。


少女の未来を奪った大人の身勝手さ。

そして、それを寄ってたかって叩くネットの悪意。


私はぽつりと呟いた。


「……ぜんぜん、面白くない」


外は梅雨空で、湿った風が交番の窓を揺らしていた。

富山の梅雨明けは、まだ先になりそうだった。


(第四部 完)

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