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黒音と白奈  作者: nakada
第4章
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37.閑話:富山の移動手段

寮のリビングでバイクのカタログをめくりながら、私はため息をついた。

「はぁ……バイク欲しいなぁ。せっかく大型免許まで取ったのに」


私は元々、白バイ隊員に憧れて警察官になった。当然、バイクの免許も十九歳の頃にはすでに取得している。

しかし、肝心の自分のバイクを持っていないため、完全にペーパーライダーと化していた。

「ねぇ、黒音ちゃん。バイク買うのなら、サイドカー付きにしてよ。そうしないと私、一緒に行けないもん」

「いや、あんたもバイクの免許を取ったらどうなのよ」

「えー。車の運転免許だってギリギリだったんだよ? 無理無理、絶対無理!」


富山に住んでいると、移動手段が無いとマジで詰む。

寮には寮長がシェアしてくれる軽四があるのだが、基本私達は自転車である。

ちょっと遠出したい場合は、その軽四か、美咲に頼むか、レンタカーかと、

何かと不便なのだ。


さて、正直に言うと中古でいいからバイクを買いたい。

でも生活の事を考えると、中古の自動車を一台買った後、セカンドカーとして

バイクを買う方が実用的なのではないかという気もしている。


「最初は車だよ、そして、私にも貸してほしい」

「露骨!!」


「まぁ、でも、中古車屋でも見に行くか!」



非番の日。美咲に車を出してもらい、私達は中古車店を訪れた。


「いらっしゃいませ、どのような、お車をお探しですか?」

「とりあえず、近場への買い物メインの実用的な軽四で」


一通り見て回ったが、ぱっとする物がなかった

やはり、気分はバイクだからだろうか、


「ねぇ、一度中古のバイク屋見に行っていい?」


私達は中古のバイク屋に向かう



「いらっしゃいませ」

「おっ、カワサキのニンジャ(Ninja 1000) か、これまたがってみてもいいですか?」

「お客さん、Ninja 1000 いいですよね、私も好きですよ。お似合いじゃないですか、ちなみに下取り車とかはありますか? あるなら、よりお安くできますよ。」

「いや、バイクは初購入だから、」

「初購入で、大型なんですか?」

「はい、」

「では、御新規契約でお安くさせて頂きます。」


なに、その名目……


白奈が羨ましそうにつぶやく

「いいなぁ、ねぇ、これにサイドカー付けられる?」

「いや、付けないし、ニンジャの楽しさ半減するから」

「いいなぁ、私、普通自動車しか乗れないから普通免許しかなくても乗れるバイクって無いの?」

「原付ならあるでしょ、」

「えー、二段階右折とか面倒くさい」

「ならミニカー登録とかどう?、ほら、ETC事件の時の犯人が乗ってた」

「ピザ屋のバイクじゃなくて、なんていうか、かっこいい奴がいい」


そこで店長が

「ありますよ、普通自動車免許で乗れる、原付三輪ミニカー車だけでなく、三輪車トライクも取り扱ってます」


「えっ!?」

「ほら、こちらのトリシティ125は、トライク仕様に改造申請されてあります。ほら、こちらの書類、三輪車になっているでしょう。」


白奈は首をかしげる

「トライク?」


私は説明する

「原付の三輪バイクの場合、左右タイヤの幅を広げて改造申請すれば原付ミニカーとして登録できるけど、50cc以上の三輪バイクの場合は、同様に改造申請すれば三輪車トライクとして申請できるのよ。

三輪車トライクなら道路交通法上は普通の車と同じ扱いになるし、トリシティ125なら原付ミニカーより余裕を持って走れるわ」

「便利じゃん!でもお高いんでしょう」

「中古ですから、そんなにしませんよ」

「へぇ~」

「だから普通免許で乗れるんです。車扱いですからヘルメットも不要ですよ」

「えっ、ノーヘルで乗れるの」

「あんたはヘルメットちゃんと被りなさい。警察寮から、ノーヘルでトリシティ乗り回してるなんて、絶対クレームくるから」


店長は驚いている

「えっ、警察寮?、えっ、ひょっとして警察関係の方なんですか……」


白奈が答える

「そうだけど?」


「あっ……いや……」


ん?、動揺?

私は思わず聞いた

「どうかしたんですか?」


「いえ……別に……」


「黒音ちゃん」


「何?」


「この人なんか挙動不審」


店長は苦笑した。

「お嬢さん、ひどいなぁ

 警察って聞くと誰だって緊張しますよ」


確かに、警察と聞くだけで動揺する人はたくさん見てきた。

だからわかる。この人は何かを隠している。

しかし――。


「まぁ、それはそうね」


何を隠しているのかまでは分からない。

それに、隠し事の一つや二つ、誰にだってある。

深追いする理由もなかった。


「でも、カッコイイバイクだよね、シュッとして」

「シュッと?えっ、ちょっと待って。これ、本当に前輪の幅広げてあるの?」

「なっ、当たり前じゃないですか、ほら、見てください書類にちゃんとトライクってなってますよ」

「たしか、トライクの規定って、トレッド幅が460㎜以上だったはず」

「トレッド幅?」

「右のタイヤの中心から、左のタイヤの中心までの幅が 46cm 以上って事よ」


白奈が挙動不審な行動をしだした

「ちょ、白奈、何やってんの?」


「大体の大きさ測ってんの、ほら、私の靴のサイズ、23cm だから、二足並べて、おおよそ46センチ……」


「……」


「……」


「どう見ても足りないね」

「そのようね」

「店長さん、ちょっとメジャーを貸してくれませんか?」

「メジャーですか?」

「ええ」

「ど、どうぞ……」

「えーっと、、、40cm だね」


私は白奈と顔を見合わせた


「店長さん」

「は、はい?」

「これ、四十センチしかありませんよ」

「えっ?」

「いや、そんなはず……」

「登録書類は全部トライクだった。だから問題ないと思った……」

「仕入れた車両の確認は?」

「いや……」

「書類を確認したのは分かりました。でも、売り物でしょう?

 自分で現物を確認しないんですか?」


「店長さん、まずこのバイクはこのままで売ったらまずいですよ」

「すみませんでした! スペーサー及び取付費用はサービスさせていただきます!」

「いや、そういう問題じゃないでしょう」

「は、はい……」


店長は、ちゃっかりしている。

反省しているのか営業しているのかよく分からない。

少なくとも――。

この店では買わないと決めた。

そして今日の件は、勤務に戻ったあと上司へきっちり報告しておいた。

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