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黒音と白奈  作者: nakada
第4章
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38/78

38.売れないアイドル

アイドルグループ『精霊シスターズ』の解散記念として、

元メンバーの火乃ひの せいが週刊誌にグラビアで初登場した。

とはいえ、掲載はたった2ページ。そもそも精霊シスターズ自体の知名度が低く、

発行部数に影響を与えることも、話題になることもなかった。

半年が過ぎ、火乃 精の契約は残り3か月を切ってしまった。

完全に崖っぷちのアイドルだ。


彼女のマネージャーである米沢美香は、

歌唱力もトークもあるのに売れない現状に苛立ちを募らせていた。

「絶対に売れる子なのに……私の力不足なの?」

そんな焦りが、彼女の表情に滲んでいた。


「何か、話題性の一つでもあれば……」

美香はため息をつきながらネットニュースを眺めていたが、

ふと画面に映った記事に目を止めた。

そして、ゆっくりと口角を上げる。


「……そういうことね」


その笑みは、どこか危うい光を帯びていた。



勤務中、私は西署の交番で掲示板に張り紙をしていた。

『グランドプラザ防犯イベント 一日署長:火乃 精』

富山に来るらしいが、私は名前すら知らなかった。


「なぁ浜、火乃 精って知ってるか」

「えっ、知ってるよ。半年前に解散したアイドルグループの子。

 でも……正直、印象は薄いよね」


浜がそう言うなら、世間の評価も似たようなものだろう。


勤務中はスマホをいじらない主義だが、

その夜、私は初めて聞いた名前が気になり調べてみた。

すると、Xに本人の投稿があった。


『【告知】7月7日、富山県で一日署長を務めます!

 会場はグランドプラザ。富山の皆さん、ぜひ見に来てくださいね!』


そのリプ欄を眺めていたとき、妙な書き込みが目に入った。


『じゃあ俺、富山の銀行で強盗するから署長として捕まえてくれ』


冗談にしては悪質すぎる。

胸の奥に、嫌なざわつきが広がった。


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