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黒音と白奈  作者: nakada
第3章
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35/78

35.白奈の推理

白奈はテーブルの上の資料を見つめながら言った。

「例えばだけど、聞いて」

本田先輩が腕を組む。

「続けろ」

「仮に小西さんが六月三日の朝、六時二十五分より前――例えば五時半頃に殺されたとする」

私は黙って聞く。

「犯人はスマホの入ったバッグを持ち出して、小西さんの家の近くに隠した」

「宅配ボックスとか?」

「うん」

白奈は頷いた。

「宅配ボックスでも、植木鉢の陰でもいい。とにかくスマホだけを、彼女の自宅近くのどこかに置いておく」

本田先輩は何も言わない。

だが、否定もしていなかった。

「その後、中山さんは普通に会社へ行く。バイクでね」

「営業車に乗るためか」

本田先輩が補足する。

「そう」

白奈は頷いた。

「会社に着いたら、外回り用の営業車に乗る。

そして仕事の途中で一度、自分の家に引き返すの。

トランクに小西さんの遺体を積んで、山へ向かうために」

店内が、水を打ったように静まり返った。

「そして、埋める」

本田先輩が低く言った。

「最後に、スマホの電池が切れた頃合いを見計らって、彼女の家の近くに隠しておいたスマホを回収して、同じ山へ持って行く」

「ところが」

白奈が指を立てた。

「まだ電池が切れてなかった」


私は思わず息を呑んだ。

「だから……スマホに『バイク移動』の記録が残っちゃったんだ。

中山さんが自分の原付バイクでスマホを山まで運んだから」

「そう」 白奈は小さく頷いた。

「全部、私の仮定だけどね」

私は腕を組み、二人の顔を交互に見つめた。

「でも先輩、それなら証明できるかもしれません」

「え?」

白奈が私を見る。

「遺体を営業車で運んだなら、トランクに何か痕跡が残るはずです。

体液とか、目に見えない微細な毛髪とか」

私は少し頭をひねり、訓練中のあの子たちの姿を思い浮かべた。

「それに、警察犬です。死体を運んでいたなら、シートやトランクに独特の臭気が残ります。

臭気選別なら、数日経っていても追えるはずです」

本田先輩がゆっくりと顔を上げた。

「営業車なら中山個人の所有物じゃない。

村上製作所の協力が得られれば、すぐにでも調べられるな」

本田先輩は静かに立ち上がった。

「ちょっと会社に話を聞いてくるか。

中山の鼻をあかせる証拠を見つけにな」

そう言うと先輩は、テーブルの上に置かれた『三人分』の伝票を手に取ることもなく、

その場に自分の分と言わんばかりに1000円札をおいて

本田先輩はそそくさと店を出て行ってしまった。

「……行っちゃいましたね」

「うん。でも、コーヒー一杯しか飲んでないのに1000円札置いて行ったよ。お釣り、あとで計算して返さなきゃ」

「えーっ!? これ先輩の自分の分だけなんですか!?」

「え? 多分そうだけど……何でそんなに驚いてるの?」

「だって、前は『ここは俺が持つ』っておごってくれたじゃないですか!

だから今回もまたおごってもらえると思って、もうスペシャルプリンアラモード頼んじゃいましたよ!

これじゃ私の持ち出し(赤字)が出るじゃん!」

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