34.あやしい計画犯罪
「中山の移動手段もバイクだった」
本田先輩が資料をめくる。
「ただし、一人乗りの原付電動バイクだ」
「一人乗り?」
白奈が首を傾げる。
「ああ。後部座席もない」
「じゃあ彼女を乗せるのは無理ですね」
「そういうことだ」
私は腕を組んだ。
「でも、怪しいんですよね?」
「怪しい」
本田先輩は即答した。
「ものすごく怪しい」
「ですよね」
「ただし証拠がない」
「あと…中山と小西が付き合っていたって話も、怪しくなってきた」
「え?」
白奈が顔を上げる。
「どういうことですか?」
「小西のスマホだが、ロックがかかってなかった」
「今どき珍しいですね」
「在宅ワーカーらしいからな。家ではそのまま使ってたんだろう」
本田先輩は肩をすくめた。
「で、LINEの履歴を確認したんだが……」
本田先輩はそこで言葉を切った。
「どう見ても恋人同士の会話じゃない」
白奈が眉をひそめる。
「そんなにですか?」
「ああ」
本田先輩は資料をめくった。
「しかも、小西と中山のやり取りと似たような会話をしている相手が他にも何人かいる」
「他にも?」
私は思わず聞き返した。
「男ばかりだ」
本田先輩は淡々と言う。
「会う約束をして、金を受け取る。しばらくやり取りをして、また別の相手に会う」
「……」
「恐らくは、お小遣い目当ての関係、といったところだな」
「でも」
白奈がぽつりと言った。
「小西さんは恋人だと思っていた。だからそう発言した」
本田先輩は小さく頷く。
「そう考えると、中山には十分な動機がある」
「動機?」
「認識の違いだよ」
本田先輩は腕を組んだ。
「小西は恋人だと思っていた。中山はそう思っていなかった」
「揉めるには十分だ」
私は黙って話を聞いていた。
本田先輩は続ける。
「正確な死亡推定時刻はまだ絞り込めていないが、六月三日前後一日、つまり六月二日から四日と見られている」
「六月三日……」
「その前後で小西が会う予定だった相手は中山だけだ」
店内に沈黙が落ちる。
「問題はその後だ」
本田先輩は資料を指で叩いた。
「小西は中山の家を出て自宅へ戻っている」
「そして、その翌日にバイクで移動し、山中へ向かったことになっている」
「なぜそんな行動を取ったのか説明がつかない」
白奈が首を傾げた。
「本当に?」
「ん?」
「本当に小西さんの家を出たの?」
私と本田先輩は同時に白奈を見る。
「証拠は?」
白奈は資料を指差した。
「スマホの位置情報だけだよね?」
「まあ、そうだな」
「だったらさ」
白奈は少し考えるように言った。
「これってETCと同じじゃない?」
「ETC?」
私が聞き返す。
「前のボウガン事件」
「ああ……」
「位置情報が証明してるのは、小西さんじゃなくてスマホの移動だよね」
店内が静まり返った。
本田先輩がゆっくりと顔を上げる。
「小西のアリバイじゃなくて……」
私は思わず呟いた。
「スマホのアリバイ、か」




