表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒音と白奈  作者: nakada
第3章
PR
32/78

32.山岳捜索訓練

翌週の日曜日。

私たちは、先日見学した訓練所が参加する県警との合同山岳捜索訓練にやってきていた。

「本当に来たのか……」

私は隣を歩く白奈を見た。

「だって面白そうだったんだもん」

白奈は悪びれもせず答える。

「見学だけだからね?」

「わかってるって」

全然わかっていない顔だった。

山の麓には県警の車両や訓練士たちが集まっており、何頭もの警察犬が待機している。

その中には、先週会った訓練士さんの姿もあった。

「今日は遭難者捜索を想定した訓練です」

訓練士さんが説明する。

「事前に山の中へ捜索対象役を配置してありますので、犬たちが臭いを追跡します」

「へぇ……」

白奈は興味津々だ。

サンはというと、訓練犬たちを見ながら尻尾を振っていた。

「お前は応援係だぞ」

私は苦笑した。

訓練が始まった。

犬たちは次々と山の中へ入っていく。

しばらくは順調だった。

しかし。

一頭のシェパードが突然立ち止まった。

「ん?」

訓練士が首を傾げる。

犬は鼻を地面へ近づけると、予定されたコースから外れ始めた。

「おい、違うぞ」

呼び戻そうとしても反応しない。

シェパードは斜面を横切り、そのまま林の奥へ進んでいく。

訓練士の表情が少し変わった。

「おかしいな……」

周囲の警察官たちも様子を見始める。

犬はさらに進み、ある場所で立ち止まった。

そして。

激しく吠え始めた。

「ワン! ワン! ワン!」

訓練士が近づく。

私たちも後ろからついていった。

そこには、小さな空き地のような場所があった。

「なんだこれ……」

黒っぽい土が不自然に盛り上がっている。

周囲の地面と明らかに色が違う。

白奈がしゃがみ込んだ。

「掘り返した跡みたい」

訓練士が真顔になる。

「誰もここには何も埋めていないはずだ」

その言葉で、空気が変わった。

ほどなくして訓練は中止となり、県警の警察官たちが現場を確認し始めた。

私たちも離れた場所から見守る。

スコップが運ばれてくる。

土が掘り返される。

数分後。

作業していた警察官の一人が動きを止めた。

「何かあります!」

現場がざわつく。

さらに掘り進める。

そして。

土の中から人の腕が現れた。

誰も言葉を発しない。

白奈も黙っていた。

やがて全身が掘り出される。

腐敗の進んだ女性の遺体だった。

「遺体発見!」

誰かの声が響く。

訓練は完全に捜査へと切り替わった。

その時だった。

「本田巡査部長!」

若い警察官の声が聞こえた。

規制線の向こうから、本田先輩が足早に現場へやってくる。

「状況は?」

「女性の遺体です。死後数日から一週間程度と思われます」

本田先輩は無言でうなずいた。

その時。

「こちらも何かあります!」

別の警察官が声を上げた。

遺体から少し離れた場所。

土の中から取り出されたのは、小さな水色のバッグだった。

「バッグか」

本田先輩は受け取ったバッグを見つめる。

「鑑識に回してくれ。中に身元の分かる物があるかもしれん」

「はい」

警察官がバッグを受け取る。

その瞬間だった。

「セ・ン・パ・イ!」

聞き慣れた声が響いた。

本田先輩が嫌そうな顔で振り返る。

そこには、いつの間にか規制線の近くまで来ていた白奈と私が立っていた。

「またお前らか」

本田先輩は頭を抱えた。

「お前らはコナン君かよ」

「えっ」

白奈の顔がぱっと明るくなる。

「コナン君ですか?」

「違う」

「私、コナン君好きですよ」

「そこじゃない」

私は思わずツッコミを入れた。

「白奈、そこは喜ぶところじゃないぞ」

「え?」

白奈は本気で首を傾げている。

本田先輩は大きくため息をついた。

「頼むから今回は余計なことをするなよ」

「はーい」

返事だけは良かった。

私は空を見上げて小さくため息をつく。

どうせ無理だろうな。

その時の私は、まだ知らなかった。

あの水色のバッグが、この事件の真相へ繋がる最初の手掛かりになることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ