3.本田先輩
本田先輩。彼は、私たちが警察学校に通っていた頃の教官助手のような存在だった。
実技も座学もからきしで、落第寸前だった白奈を(ついでに私も)厳しくも温かく見守ってくれた、頼れる兄貴分のような先輩だ。
そうか、富山県警で巡査部長をやっているとは聞いていたが、まさかこんな重大事件の担当として再会することになるとは。
「セ・ン・パイ!」
白奈が、現場の重苦しい空気を切り裂くような明るい声で手を振る。
「おい、浜。……それに渡辺も。どうしてこんなところに?」
本田先輩が驚いたように足を止めた。
「私たちが、今回の事件の第一発見者なんです」
私が一歩前に出て、居住まいを正して報告する。
「ああ、そうだったのか。災難だったな。……一応確認するが、二人と被害者との間に何か接点はあったのか?」
本田先輩の目が、一瞬だけ鋭い“刑事の眼”になった気がした。
「いえ、全くの赤の他人ですよー。今朝、黒音とサンの散歩をしてたら、玄関が開きっぱなしなのが見えて。覗いてみたら、あの方が倒れてたんです」
白奈が身振り手振りを交えて説明する。
本田先輩は「なるほど」と手帳を閉じ、少しだけ表情を和らげた。
「先輩! もしよかったらなんですけど、事件が進展したら内容を教えてほしいんです」
「おい、浜巡査。捜査情報なんだぞ」
私は即座に白奈の暴走を止めた。しかし白奈はめげずに唇を尖らせる。
「えー、だって気になるじゃない。黒音だって気にならないの?」
「それは……確かに気になるけど……」
言葉に詰まった私を見て、本田先輩は周囲を軽く見回し、声を一段低くした。
「……分かったよ。何かわかったら教えてやる。
だが、バレたら守秘義務違反で全員アウトだからな。
その代わり――お前らも第一発見者として、何か気づいたことがあったらすぐに俺に教えろよ」
私は、その言葉の重みを噛みしめながら、深く頷いた。




