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黒音と白奈  作者: nakada
第2章
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23/78

23.犯人

「――白奈、すぐに110番通報して! 山口さんは胸を刺されて、事切れている!」


窓枠に手をかけ、大樹さんの部屋に入って脈を取るべきか一瞬迷ったが、私は思いとどまった。

あの床の血の量をみる限り、その必要は無い、そう判断した。

となると下手に侵入すれば現場を荒らしてしまう。警察官として、まずは現場保存が最優先だ。

私は数段ほど縄梯子を駆け下り、そのまま地面へと飛び降りた。


着地の衝撃を逃がしながら顔を上げると、白奈はスマートフォンを握りしめたまま呆然と固まっていた。

「白奈、110番通報は……まだしていないようね」

焦りから、私は自分のポケットからスマートフォンを取り出そうとした。


その時、白奈が鋭い声で引き止めてきた。

「ちょっと待って、黒音。山口さんは、どんな感じで亡くなってたの?」


「どうって……デスクの椅子に深くもたれかかった状態で、胸にナイフが突き刺さって、のけ反るようになっていたわ」

「その時、おじさん、ヘッドフォンしてなかった?」


言われて、ハッとした。薄暗い部屋の記憶が鮮明に蘇る。

「あぁ……ごついヘッドフォンが落ちていたわ。

……でも、なんで白奈がそれを知っているの?」


私が問い詰めようとした、その時だった。

「おい! 朝から何があったんだよ!」

宿の玄関から、大河さんと美咲が血相を変えてこちらへ駆け寄ってきた。


状況が呑み込めず狼狽する大河さんを、白奈は一歩も引かない真っ直ぐな瞳で見つめ返した。普段のふにゃふにゃとした幼さは完全に消え去り、そこにあるのは鋭利な刃物のような、探偵の目だった。


白奈はゆっくりと手を挙げ、人差し指を大河さんに突きつけた。


「大河さん。……なんで、お父さんを殺したの?」


「な、何言ってるんだよ白奈ちゃん! どうして大河くんがそんなこと……!」

美咲が慌てて大河さんを庇うように前に出る。大河自身も顔をわなわなと震わせ、うろたえていた。

「何がだい、どうして、そうなるんだよ……っ!」

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