17.部屋割り
父・大樹が部屋の説明を始めた。
「各自の部屋だが、二階にそれぞれ同じ間取りの部屋がある。一番左の部屋が管理人である私の部屋で、その隣から順番に201号室~205号室と続いている。四人と聞いていたので205号室は掃除していない。204号室までの好きな部屋を使いなさい」
205号室の向かい側には共同のトイレと洗面台、そして一階へと続く階段がある。
大河が、四人分の鍵を父の大樹からまとめて受け取る。
そして、「201号室は、元々俺の部屋なんだ。うち、昔は兄弟が六人いる大家族だったからさ」
といって、201号室のカギを自分でもち、あとは、普通に202号に美咲・203号に白奈・そして私に204号を手渡した
◇
部屋に入ると、八畳の畳敷きにカーペットが敷かれていた。
ドアの正面には窓があり、高台にあるため日本海が一望できる。素晴らしい眺めだ。
部屋の作りは少し独特だった。
右側には押し入れがあり、布団の他に「緊急用縄梯子」と書かれた箱が備え付けられている。火災の際などに窓から脱出するためのものらしい。
左側の壁には、壁と一体化したタンスがある。
「己」の字を逆にしたような凹凸――つまり、自分の部屋のタンスと隣の部屋の押し入れが互い違いに噛み合う構造だ。
左側の壁際、ちょうど隣室の押し入れが張り出している部分には立派な書斎机があり、27インチほどのテレビとLANケーブルも完備されている。
反対の右側、押し入れの横には大きな鏡が取り付けられていた。
全体として、古さはあるが実用性が高く、どこか合宿所のような雰囲気だった。
(……思っていたより快適に過ごせそうだ)
◇
「夕食までは一時間ほどありますので、ごゆっくりおくつろぎください」
吉田さんの言葉を、大河が遮った。
「とりあえず荷物は置いたし、近くにテレビでも紹介された立ち寄り湯があるから、ちょっと出かけてくるわ」
私たちは大河の案内で、国道8号沿いにある天然温泉へと向かった。
100%源泉かけ流し。露天風呂からは山と空が広がり、抜群の開放感だ。女子三人の湯船は、さっそく「女子会トーク」の場と化した。
「ねぇ美咲、大河くんとは本当に付き合ってないの?」
白奈が湯にぷかぷか浮かびながら、直球を投げる。
「つ、付き合ってないってば!」
美咲の顔が一気にお湯の温度以上に赤くなる。
「でもさぁ、“気の合う友達”の実家に女友達を三人も連れてくるって、普通じゃないよねぇ?」
「白奈、やめなさい」
私は窘めながらも、内心では少し気になっていた。
美咲はタオルをぎゅっと握りしめ、「……だって、友達連れてきていいから一緒に行こうって、彼が誘ってくれたから」と小声で漏らした。
白奈がニヤリと笑う。
「ふぅん? じゃあ美咲は、ちょっとは意識してるんだ?」
美咲は少し悩むような表情を浮かべ、呟いた。
「そうじゃなくて、ただ……普段は優しくてイケメンなんだけど。……ふとした瞬間に、怖い時があって……」
(怖い時……?)
確かに彼は爽やかな好青年だが、美咲が直感でそう感じるのなら、何かあるのかもしれない。
白奈が不敵に笑った。
「よし、じゃあこの私が、その『正体』を見定めてあげる!」
ふと、何かを思いついたように白奈が続ける。
「ねえ、美咲と黒音、部屋チェンジしない?」
「え……」私と美咲が不思議そうに顔を見合わせる。
「大河くんが部屋を決めたけどさ、あの構造、なんか怪しくない? 押し入れの天井とタンスの天井、たぶん繋がってるよ。大河くん、夜中にこっそり隣の美咲の部屋に侵入するかも!」
「えーっ、そういう怖いじゃないんだけど……でも、そういう正々堂々としてない行為は、いくら何でも……」
美咲はオロオロしているが、大河を信じたい気持ちもあるのか、どこか複雑な表情だ。
白奈が、なぜか楽しそうに語りだす。
「でもさ、もし大河くんが本当に侵入してきたら、そこにいるのが黒音だったりするわけでしょ? 即刻現行犯逮捕だよ。ウケる!」
「……不謹慎なこと言わないの。まぁ、別に大河さんにそんな故意はないと思うけど、美咲が気になるなら変わるわよ」
防犯の意味も含めて、私たちは部屋を交換することにした。




