10.気づいた間違い
息を切らして坂道を登りきると、高いフェンスの向こう側に、
煌々と明かりの点る呉羽PAの建物が見えてきた。
「……この坂の上が、呉羽PA。目的地よ」
私が立ち止まって告げると、自転車から降りた白奈が目を丸くした。
「えっ、嘘。PAって、下道から入れる道があるの!?」
「当たり前でしょ。売店の店員さんたちが、
わざわざICを通って通勤してると思ってたの?」
私は「常識よ」と言わんばかりに鼻で笑った。
だが、白奈は私の嫌味をスルーして、じっとその通用路を見つめている。
「……そうじゃなくて。黒音、これって……」
白奈が、暗い坂道の下と、従業員用の通用門と、
その脇にある小さな隙間を指差した。
「この坂を使えば、ETCの記録を『高速道路内』に維持したまま、
中身……村上さんだけが外に出られる。
下道に三輪バイクを置いておけば、完全に自由になれるってことだよね?」
「え……」
心臓が、走ってきた時とは違うリズムで跳ねた。
村上はETCの記録上、ずっと高速道路上にいたことになっている。
だが、もし彼がここに社用車を停め、徒歩でこの通用路を抜け、
下道にあらかじめ置いておいた三輪バイクに乗り換えていたとしたら。
「……盲点だったわ」
私が絞り出すように言うと、白奈が「でしょ?」と笑った。
その笑顔が、たまらなく癪に障る。
私は毎日この街を巡回し、地図を頭に叩き込んできた。
この道の存在だって知っていた。
なのに、それを「トリック」として結びつけたのは、
不真面目な彼女の方だった。




