34話 冤罪だっ!
私の優秀な耳は、水辺でのアリーシャさん達の会話を最初から最後までバッチリと捉えていた。うん…多分二人の間に絶望的なまでのすれ違いがある気がする。
美涼さんは私がアリーシャさんに何かしらの方法で美涼さんの事を伝えたと思っている。それ自体は間違ってないのだけれど…問題はその伝えた時間だ。
まぁ要するに、美涼さんは私が“今日”アリーシャさんに伝えたと思っているのだろう。だから自分がアンデッドになっている事をアリーシャさんが既に知っていると思い、見当違いの安心をしたと。…コントかな?
「───ミリア集合ー!」
「?」
どうやら自分一人だけでは対処しきれないと判断したアリーシャさんが、大声でミリアさんを招集する。まだ美涼さん服着てないからね。ガレフさんとリンダさんはまだお留守番です。
……面白そうだから私もついて行こーっと。
「アヤメも来るのですか?」
「ワウッ」
一応証人…証狼? でもあるからね。断じて面白そうだからという理由だけでついて行くのではないのである。うむ。
「ミリア…ちょっと聞くんだけどね」
「はい、何でしょうか?」
「……この人、どう思う?」
そう言ってアリーシャさんが指し示したのは、美涼さん。あー…成程? 隠してはいるけど、ミリアさんって聖女なんだっけ。聖女ならアンデッドとかと相性が良いと言うか深く関係してそうだし、何か感じる物があるのかも?
「ふむ…特に何も感じませんね。少しその首輪は気になりますが、悪しき気は殆ど感じませんよ」
「そう…」
およ? 首輪から悪しき気は感じないの? 着けさせた私が言うのも何だけど、かなり冒涜的な道具だと思うんだけど?
「仄かに首輪からアヤメの優しい魔力を感じますから、この人が死者だとしても警戒する必要は無いと想います」
『っ!?』
…全部お見通しだったのね。正直何時もぽわぽわしたミリアさんしか見てないから侮ってた。
驚いたのは美涼さんも同じで、ミリアさんを見て目を白黒させている。うんうん分かる分かると頷いておく。
「なら問題無いわね。いきなりバレて殺されるとか言い出したから驚いたわよ…」
「あ、ははは…」
「そもそも死者…アンデッドになったとすれば理性なんて消え去りますから、こうして会話出来る時点でアリーシャも心配はしていなかったのでは?」
「ええ。まぁ愚者の首輪によるアンデッドを見たのはこれが初めてだけれど…使役しているのはアヤメで良いのかしら?」
アリーシャさんが目線を向けてきたので大きく頷いて答える。アリーシャさんも最初から気付いてたのかな? 愚者の首輪を知ってるような口ぶりだし。一応の最終確認としてミリアさんを呼んだ感じかな。
「あのー…それで私ってこれからどうすべきでしょうか」
「別に普通に生活していいんじゃない? アヤメから魔力を供給されている限り死なないだろうし」
「ですね。ただのアンデッドではなく“愚者”であるならば、モンスターとしては認識されないでしょうから」
『愚者とアンデッドって違うの?』
「……愚者とアンデッドは、何が違うんですか?」
ありがと美涼さん。通訳してくれて。
「一番の違いは理性があるか否かね」
「そして魂を持つかどうか、です。アンデッドとは魂を失って尚肉体が現世に縛り付けられた存在ですから」
「あと愚者は魔力によって肉体を維持しているから、モンスターと言うよりもゴーレムに近いのよね」
ほうほう。意外と違うんだね。というかゴーレムって居るんだ。
まぁ一先ずは安心かな。問答無用で敵として殺されるような感じでは無さそうだから。
「ところで日光って浴びても…?」
「大丈夫だと思うけど…どう?」
「文献が少ないですからね…理論的に考えれば問題無いはずですが」
扱いがアンデッドではなくゴーレムに近いから、普通のアンデッドの欠点は無くなってるかもしれないね。
「ただ帰還石による転移は避けた方が良いかと。縛り付けた魂が乖離しかねません」
「「あー…」」
二人して何とも言えない納得の声を上げる。息ピッタリだね。
「まぁ取り敢えず未知は避けた方が無難って事ね。ミスズさんは外に知り合いって居る? 居るなら私達が連絡してあげるわよ」
「大丈夫です」
美涼さん独り身? 仲良い人とか…もしかしてぼっ「キャンッ!?」
「ミスズさんっ!?」
「…ちょっとアヤメが変な事考えたみたいなんで」
だからってドスって容赦無く脇腹突かなくても良いじゃん!?
「アヤメ?」
『アッ、ハイ…』
ミスズさん、その笑顔怖いです……。




