33話 不運に不運を掛けたらラッキーになる…かも?
ミリアさん達が居る安全地帯を目指しながら、私が美涼さんと別れてから何をしていたのかを話していく。こうして自分でも思い返してみると、ここ数日で私を取り巻く環境というか状況の変化が目まぐるしいね。
「中々忙しい日々を送ってたみたいね…」
『まぁそのお陰で退屈はしなかったよ』
それにこうしてミリアさん達と行動していたから、美涼さんを見付けられたしね。……無事では無かったけれど。
「ギルド所属のモンスターというのも面白いと言うか何でそうなったと言うか…うん、ほんと何で?」
『…強いて言うならミリアさんのせいかなぁ』
まぁミリアさんの提案を飲んだのは私だけどね。後悔は勿論していない。
『私ばっかりじゃなくて美涼さんの事も教えて?』
「私?」
『例えば初めて会った時とか』
「あー…」
美涼さんと初めて会った時。つまりは美涼さんが死にかけていた時の話だ。何であんなボロボロの状態で彷徨っていたのか、ずっと気になってたんだよね。
「んー…まぁ簡単に言っちゃうと、転移トラップを踏んじゃったんだよね」
『転移? トラップ?』
「そう。この迷宮って結構色々トラップが散りばめられているんだけど、その中でも転移のトラップは最悪の部類でね」
何でも転移トラップは踏むとその周囲にいる者全てが、現在の階層から必ず下の方の階層へと飛ばされるらしい。…つまり、分不相応な階層に飛ばされると。だから初心者の死亡率が断トツで高いトラップなのだとか。
そして美涼さんはそんなトラップを踏んで、その拍子に荷物落っことして、更に飛んだ先に既にモンスターが待ち構えていたと。役満かな?
「で今回も似たような状況になってね…」
『……美涼さんお祓いしたら?』
「…今したら逆に浄化されそう」
確かに。
話しながら進んでいくと時間が経つのは早いもので、目の前に安全地帯の入り口が見えてくる。その瞬間、私の背中の上でゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。
『大丈夫?』
「…あ、うん…」
声を掛けても何処か上の空だ。美涼さんにはこの安全地帯にミリアさん達が居る事を既に伝えてある。でもミリアさん達に会う事に対して緊張しているというより…怖がってる?
「…いきなり斬られたりしないかな…」
『しないよっ!?』
そんなに過激な人達じゃないよっ!
まぁでも美涼さんの不安もそれなりには分かる。私もまた人ならざるものだからね。ミリアさん達に会うまでは私もそれなりに不安だったのだ。果たして受け入れてくれるのかってね。
でもだからこそ安心して欲しい。ミリアさん達なら、必ず何事も無かったかのように受け入れてくれるから。
美涼さんが若干逃げ腰になっているので、問答無用に駆け出して安全地帯へと突っ込む。往生せいやー! あれ、違うか? まぁいいや。
「───あっ、おかえりなさいっ!」
安全地帯に入ると、既にミリアさんは起き出していた。ただいまー。
「おかえり…また問題引っ掛けてきたみたいね?」
失礼な。まるで私がいつも問題を持ってくるみたい、に……うん、否定出来ないかも?
「血だらけじゃねぇか。大丈夫なのか?」
「あ、えと…大丈夫、です。一応」
「それなら良かった。近くに水場があるから洗ってくると良い。アリーシャ、案内してやってくれるか?」
「分かったわ。こっちよ」
アリーシャさんが目線で促してきたので、屈んで美涼さんを降ろす。行ってらっしゃーい。
◆ ◆ ◆
もうちょっと心の準備がしたかったのだけれど、容赦無くアヤメが駆け込んでしまったから全く準備なんて出来なかった。
「災難だったわね」
「そ、そうですね…」
…き、気まずい…アヤメっ! なんで私だけにしたのっ!
アリーシャさんという名前だけは聞いていたけれど、流石に初対面の人と仲良くお喋り出来る程私の対人スキルは高くない。ぼっちだよ悪いか。
アリーシャさんに案内された水場は小川のようになっていて、ここを今から血で汚してしてしまうのは少し戸惑ってしまいそうになる。
「気にせず洗ってしまって良いわよ。迷宮の自浄作用で直ぐに綺麗になるわ」
「それは知ってるんですけど…」
「どうせそのままにしても病気の元になるだけよ」
「は、はいっ」
言外に早くしろと圧力を感じたのでパッパと血で汚れた服を脱いでしまう。すると改めて自分の惨状を目の当たりにして、自分がどれほどの深手を負っていたのかを理解する。これは確かに死ぬね…。
「………」
「うーん…」
服に付いた血は軽く濡らしても取れる様子が無かったので諦め、身体に付いた血を流す方を優先する。若干固まっていたけれど、強く擦れば思いの外簡単に流れた。
「…ミスズさん、で良いのかしら?」
「っ!?」
「あぁごめんなさいね。別に驚かせるつもりは無かったの。ただそうかなって思っただけ」
「…何故、そう思ったんですか?」
「だってアヤメが態々連れてきたんだもの。ただの見ず知らずの人間なら治療して放置するはずだから、それだけ貴女という存在がアヤメにとって“特別”であると言う事になる」
あー…成程。どうやったのかは知らないけれど、どうやらアヤメは既に私の事を伝えていたらしい。なんだ、心配して損した。
「そうだったんですね。もう…知っていたならそう言ってくださいよ」
「私としても確信は無かったもの。名前しか知らなかったのだから」
「確かに写真なんて無いですもんね。はぁ…良かった。何時バレて殺される事になるかと…」
「え?」
「え?」
………ゑ?




