10話
カキ氷を食べ終わった私達は、また砂漠を歩き出す──。
「それにしても、戦っているメリルお嬢様、とても御綺麗でしたね」とクルトさんが言うと、エリック王子様は頷いて「同感ですね。氷の妖精のようでした」
「まぁ、嬉しいですわ」
「俺もスゲェーと思った。なぁ、戦いじゃなくても、えっと……リンク? 作って、皆で見ること出来ないのか?」
「寒い地域なら出来ますわよ!」
「本当ですか!?」と、クルトさんが喰いついてきて目を輝かせる。
「では我が国でもう直ぐ御祭りがあるので、そこで披露いただく事は出来ますか?」
「構わないですわよ」
「おぉ……それは楽しみです」
「王子殿下。私もささやかながら、お手伝い致します!」
「宜しく頼みます」
勝手にドンドン話が進んでいってしまったけど……私も内心、楽しそうと思った。上手く演技が出来る様、練習しなくてはッ! ですわ。
※※※
御祭り当日──私は御祭りを楽しんだ後、クルトさんが用意してくれた青を基調とした煌びやかな衣装に着替えた。
「では、本日最後の催し物……フィギュアスケートとなります! 演技をしてくれるのは、氷の妖精のごとく美しく、イニティウムの町を救った英雄! メリルお嬢様となります! 皆さん、盛大な拍手でお迎えください!」
司会者の声が聞こえ、「わぁ……」と、歓声が上がる中、私はゆっくりとスケートリンクの上を滑って、中央へと向かう──大勢の人がリンクをグルっと囲んでいますわ。
そりゃそうよね……この世界ではフィギュアスケートなんて存在しないだろうし、初めての物を見たくなるのは当然の事ですわ。
私は気圧されない様に、スゥ……っと深呼吸をして息を整える。
「では音楽……スタート!」
司会者の掛け声とともにBGMが流れ、私はBGMに合わせて、ゆっくりと滑り出した──。
演技をしていく中、何故か異世界転移した後の思い出が走馬灯のように流れてくる──不慮の事故で夢を諦め、転生した後も追放され、心細い時は正直、最悪だなぁ……と思う時もあった。
でもこうして、私の夢だった多くの人に私の演技を見てもらうが実現している。私は今、喜びを一言で言い表せないぐらい幸せだ。
私は演出で両手を広げ、スピンをしながら細かな氷の結晶を放つ。
「おぉ……」
「綺麗……」
観客席から感動の声が漏れてくる……堪らなくチョー気持ちいいですわ! 私は順調に演技を続け──終盤となる。
最後は無難の技で締めようかと思っていた。でも……私はガランさんの言葉を思い出す。やる前から失敗することを考えるな。うん……そうだよね! 今の私ならきっとやれますわッ。
私はグッと思いっきり踏み込み──今まで一度も成功したことのないトリプルアクセルを繰り出す。
今までに感じた事のない手応え──私は転ぶことなく、氷の上に着地した。やった……出来ましたわ……私はあまりの驚きに一瞬、固まってしまったが、直ぐに演技に戻る。
BGMがあと少しで終わるという所で、ゆっくりと中央に戻り、肩幅ぐらいに足を広げてピタッと止まる。
三人のイケメンに囲まれて……クルトさんのおかげで氷売りも順調で……ほんと異世界──。
「エクセレントですわ!」と、私は叫び、左手を高々と突き上げピースをした。
私はこの日、最高の演技、最高の気持ちで幕を閉じた。
最後までお付き合い頂きまして、ありがとうございました。とにかく楽しそうに戦うお嬢様を書いてみたい欲求で、書いてみましたが、いかがでしたでしょうか?
私は書きながら、お嬢様を想像して楽しめました。どんな結果になろうとも、好きと言える作品になります。
何かのきっかけで、加筆したり修正したりとあるかと思いますが、ひとまず完結とさせて頂きます。