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第三十一話 土産屋メメント

「OKボス。馬車を走らせるってのは、どこに向かって走らせればいいんだ?」


「そうだな……西北、ローニャ学校の方に向かえ。気絶させたケビンとお前を入れ替える」


 ローニャ学校は俺が通っていた魔法学校だ。

 そこにある時計台から狙撃するつもりだった。

 

 王都では、城を除けば一番高い塔だからな。


「どうやって?」


「うまくやるさ。お前は離れてても俺の声が聞こえるだろ?指示に従えばいい」


 見物人が居る中、ケビンとフムスを入れ替えるのは難しい。

 だが、あり得ない光景を数人が目撃して訴えたとしても、他の人間は信用しないだろう。


 下手な小細工をする必要はない。

 堂々と入れ替えても、見間違いで終わるはずだ。

 

 走っている馬車の中身を、外から観察するなんて出来ないしな。


 《審理の黙示録(アポカリプス・テセラ)》で作った土人形であるフムスには、どこからでも俺の声を伝えられる。


「OK、クールなオーダーを待ってるぜ」


「期待してろよ」


 俺たちは喫茶店を出て城へ向かった。


 ◇


「計画通り運べば、パレードの日、ここは通らないんだがな」


 ブロンズ像から城までの道を歩く。

 石でできた道は、城に近づくにつれて絵が彫られ豪華になっていく。


「今からワクワクしてきました!平和で幸せな王都の象徴たる国王が殺されたらどうなるんでしょう!」


 アンジュがうっとりとした顔で言った。


 王が祭典の最中に殺されれば、王都の民は混乱に陥るだろう。

 ドラゴンに襲われたウテメの街ほどではないにしろ、阿鼻叫喚に包まれるはずだ。


「パレードの日が国王と英雄勇者の命日になるんだ。もう魔王征伐の祭りはできねえだろうな」


 魔王の命日と国王の命日が一緒なんて皮肉だろう。

 午前中に祭典をして午後から追悼式典か?


 泣けばいいのか笑えばいいのか分からない。

精神分裂症になるね。


「賢者さん、そこまで考えていたんですか?とっても性格が悪いですね!流石未来の魔王様です!」


「まさか。ただ復讐のチャンスがあったから仕掛けるだけさ」


 魔王城を出るときは、偵察のつもりだったしな。


 城に籠ってる国王と勇者を殺すよりは市民も浮かれている祭りの日の方がやりやすい。


 失敗しても捕まるのはフムスだ。

 ケビンかもしれないが、少なくとも俺ではない。


「昨日と門番は変わっているみたいだな」


 二日連続で城門を眺める観光客、珍しくはないだろうが、怪しまれたくはない。


 門番の顔が昨日と違うことに安堵した。


「また腕を組みますか?」


 アンジュが両手を広げて言った。

 それは腕を組む格好じゃないだろう。


「いや、いい」


「えー、残念です」


 話していると、視線を感じた。

 城門の前に立った門番がこちらを見ている。


 珍しいな。

女の門番だ。

 

 黒い髪の目つきの鋭い女が腰に下げた剣に手をかけ、こちらを睨んでいる。

 

「おいおい、まだ何もしちゃねえぞ」


 周りを見渡すが、女の睨む先には俺たち以外はいなさそうだ。


 女の身長は高い。

 アンジュより10㎝は上だな。


「何ですか、あの女、こっちにガンつけてますよ」


「ボス、殺すか?」


 フムスが静かに物騒なことを言った。


「……パレードが終わってからな」


 女はこちらを睨んできているが、城門を離れる気はないようだ。


 俺は笑顔を作り女に手を振った。

 女はそれを無視し、こちらを睨み続けている。


「そろそろ行くか、土産を買うんだったか?」


「はい!行きましょう!」


 女に対抗して目を吊り上げていたアンジュがころっと表情を変え笑顔で言った。

 俺たちは城を離れ歩き出した。


「フムス、あの女が誰か分かるか?」


 歩きながらフムスに聞く。


「NO、ケビンの記憶にはない」


「ケビンは兵士を全員把握してた訳じゃないんだな」


「あの女の肩には飾緒がナッシングだった。まだ士官学校を卒業していないstudentかもしれない」


 俺にはケビンが着ていた軍服と変わらなく思えたが、違ったらしい。


 人手不足で士官学校の生徒が召集される、あり得ない話ではないか。


 初仕事で緊張して睨んでたのか?

 嫌な予感はするが、特に強大な魔力も感じなかった。


 あれはごくごく普通の兵士だ。


 ◇


 新聞屋が言った土産屋メメントに来た。

 明日のアリスのライブ、明後日の魔王征伐パレードのグッズが売り場に所狭しと並べられている。


 壁には王族の系譜とポスターが貼られていた。


 限定商品を求める客で店はいっぱいだった。


「大盛況ですね!」


「エドワード王ってのはこいつか」


 壁に貼られたポスターには、エドワードの文字と共に、王冠を被った壮年の全身が写っている。


 彫が深い顔だ。

 勇者よりも威厳があるな、あまり似ていない。


「フムス、アンジュ、お前らも明後日のターゲットの顔は見とけよ」


「OK、ボス!」


「アイアイサー!」


 ポスターは隙間なく壁に貼られている。

 色々なカットがあるな。

 これらを頭に入れちまえば、見間違える事はないだろう。


 白髪となった勇者を映したポスターもあった。

 

 マントを身に着け、金で飾られた杖を突いて立っている。

 

「俺が殺さなくてもすぐに死にそうだ」


 殺さなければ復讐はできない。

 孫に見守られて大往生?

 そんなハッピーエンドは許さねえ。


「賢者さん、リリスちゃんは何が喜びますかね?」


 勇者の写真を見ているとアンジュが呑気に話しかけてきた。


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