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第二十五話 王都の食事

「ご注文が決まりましたら、お声をおかけください」


 席に座ると、絡繰り人形が水が入ったコップとメニューを運んで来た。

 ホテルで会ったセシルと肌の加工が違う。

 金属で出来た肌だと一目でわかる。


「賢者さん、何にするんですか?」


「そうだな……」


 メニューに並んだ料理は、とても街の酒場では食べられないような豪華なものに思えた。

 貴族の店なのかと思いあたりを見渡すが、入っている客は皆酒を飲み大声で話し、服装も簡素なものだ。

 普通の庶民だろう。

 50年前とは比べ物にならないほど豊かになっているらしい。


 メニューをざっと見て、決めた。


 手を上げて店員を呼び止め、注文を告げる。


「この、牛のステーキとウナギの香草焼き、ソラマメのスープ、オリーブのサラダ、あと黒パンで」


「かしこまりました。お飲み物はいかがしましょうか?」


「ミードを、水割りで二つ」


「はい、ありがとうございます」


 店員はペコリとお辞儀をして次の客の元へ去っていった。


 メモを取るそぶりがなかった。

 注文が自動的に厨房へ行ってるのかもな。


 ハイテクな店だ。


「楽しみです。どこからもいい匂いがしてます!」


 アンジュが待ちきれない様子で言った。


 テーブルの中央にはホログラム投影機がある。

 今は闘技場で剣士が熊と戦う様子が流れていた。


「すごい!いけいけ!」


「やっちまえ!」


 剣士が振りかぶる度に店の客が興奮してどよめく。

 銀色の鎧をまとった剣士が、剣と盾で熊とやりあっている。

 戦う様子を見て楽しむ見世物らしい。


「今だ!そこだ!」


 隣に座っているアンジュも剣士の動きに合わせて揺れながら歓声をあげる。


 剣士が盾で熊の攻撃を受け止めた。

 立ち上がり二本の後ろ脚で立った熊が体重を乗せてそのまま剣士を押しつぶそうとする。


 力では勝てないと悟ったのか、盾を置いて剣士が逃げた。


「逃げるな!」


「booooo!!」


 逃げる剣士を見て、酒を飲みながら店の客が野次を飛ばす。


 剣士は盾を捨て、熊の後ろに回り込むことにしたようだ。

 闘技場で剣士の熊の追いかけっこが始まった。

 

 後ろを取るために剣士は走る。

 剣士を追いかけて、四足歩行になった熊も走り出した。


 剣士と熊が闘技場をぐるぐると走る。

 熊と剣士の距離は広がりもせず縮まりもしない。


「やっちまえ!」


 店の雰囲気に当てられて、俺も声を上げて決闘に野次を飛ばしていた。

 膠着状態にイライラする。


 熊に追いかけられた剣士は、急に飛び上がった。

 目標を見失った熊が走るのを止め、立ち上がって周りを見ようとする。


 飛び上がった剣士は空から熊を刺した。

 きれいに決まった攻撃に胸がすっとする。


「Foooooo!!」


「やっちまえ!そのままだ!」


 客のボルテージも上がった。

 これは剣士が勝ちそうだ。


 ◇


「お待たせしました、ミードです」


 店員の声がした。

 そのままテーブルに金属のコップに注がれたラム酒が置かれた。

 

「賢者さん、乾杯!」


 まだ一口も飲んでないのにハイテンションなアンジュがコップを突き出した。

 軽く器を合わせて、ミードをあおる。


 うまい。

 ミードは蜂蜜で出来た酒だ。


 この店はレモンもいれてるらしい。

 甘酸っぱい味がのどの渇きをいやしてくれる。


「おいしいですね!」


 満面の笑みになったアンジュが言った。


 普段から焦点の合っていない目をしているから、酔っているのかいないのかはわからない。

 酔いつぶれたら店に置いて行こう。


「お待たせしました!」


 絡繰り人形の店員が、料理を盆に乗せて運んできた。

 目の前に次々と料理が並べられていく。


「美味しそう!」


 アンジュが歓声を上げた。

 手を上げて喜んでいる。


 確かにうまそうだ。

 さっきまで自覚していなかったが、俺は腹が減っていたらしい。

 こんなに空腹になったことはない気がする。


「食うか」


「はい!」


 早速ステーキを切り分けてかぶりついた。

 赤身の肉は噛むたびに舌を楽しませてくれる。

 いちじくのソースがかかっているようだ。


 フルーティな赤いソースはこってりした脂と絶妙に合う。


「お肉様!私、とっても幸せです!」


 ステーキを食べながらアンジュが言った。

 エルフは肉を食べないと聞いた気がするが、アンジュには当てはまらないようだ。


 オリーブのサラダは生のトマトと玉ねぎがたっぷりと使われていた。

 咀嚼の度にシャクシャクと小気味いい音がする。

 切ってあえただけで、味付けもほとんどなされていないが、うまい。


 ソラマメのスープもいい。

 粒が荒く残り、豆の味がしっかりするが、豆臭くない。

 たっぷりと使われた香辛料が食欲をそそる。


 タイムとローズマリーがふんだんに使われたウナギの香草焼きを食べた。

 ウナギにこんなにうまい食べ方があったのかと驚いた。

 

 これほどうまい食べ物は生まれて初めて食べたかもしれない。

 50年前は貴族でもこんなに豪華な食事をとっていなかった。


「隣いいか?」


 食事を楽しんでいると、隣に男が座ってきた。

 服装からして、城の警備兵か?

 

 男は昼間見た城の警備兵と似た制服を着ていた。

 制服のまま酒場に来るとは、不用心だな。 


「ああ」


 俺は快諾した。

 こいつに話を聞こう。


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