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第二十三話 王都ホテル

 広場から西にある城に向かって歩く。

 遠目からでも存在感があるな。

 

 コンクリートでできた丸い城だ。

 五角形の城壁が張り巡らされている。


 城に至るまでの道には、天使を模した像が並べられていた。


 水堀には白鳥と蓮の花が浮いている。


 城の近くはほとんど人が居ない。

 門番が二人いるだけだ。

 槍をもった門番がこちらを見ている。


「天使の像がたくさん!綺麗ですね」


「そのはしゃぎ方、観光客っぽくていいぞ」


 水堀を超える橋は一つだ。

 入り口には門番が居る。

 ここで魔法を発動させるとあいつらに怪しまれるな。


「裏に回るか。アンジュ、行くぞ」


「はーい!」


 アンジュと腕を組んで歩いた。

 恋人同士で観光している体の方が怪しまれないだろう。


 裏手に回る。

 こちらには守衛は居ない。

 水堀はあるが、大した距離じゃないな。


 ここで魔法を発動させることにした。

 人目につかない家と家の隙間で杖を構え、呪文を唱える。


「《審理に問う。我、見えぬものを見ることを望む。この眼に映らぬうたかたを、見出すことを望む》」


 城の立体図が頭に浮かんでくる。

 中には70人ほど居るようだ。


 大きな広間に15人集まっている。

 何か会議をしているのか?

 

 会議室に意識を集中させて更に魔法を発動させた。


「《審理に問う。我、聞こえぬものを聞くことを望む。遠けきものの言の葉を、音に聞くことを望む》」


『──で、ド…──』


 閉じていた窓を開けた様にゆっくりと声が聞こえるようになった。

 

『ドラゴンが出ただって?』


『そんな…あり得ない』


『ウテメの街の報告書です』


 俺が使い魔にしたドラゴンの話か。

 この会議に勇者は参加していないみたいだな。


『ドラゴンが最後に確認されたのは?』


『40年以上前です』


『記録に残っているレッドドラゴンかと…』


『被害状況はどうなってる』


『不明です。明日調査団と援助部隊を派遣します』


『魔王征伐のパレードの直前にドラゴンが出るなんて』


『中止しましょうか』


『私は中止に反対ですよ』


『多数決を取りましょう』


『投票でいいですかな?』


 沈黙し、ペンを走らせる音が聞こえた。


『…では、予定通りパレードは行うということで』


『エドワード王の帰還は明日ですね』


『アルフレッド前王にはドラゴンの件、伝えますか?』


『お体に障ってはいけない。伝えない方が良いだろう』


 勇者の健康状態は悪いらしい。

 魔王征伐の旅で死にかけてたし、もう年だしな、無理もない。


 勇者がくたばっちまう前に復讐を終わらせよう。


 会議は終わったようだ。

 俺は魔法を解いた。


「何かわかりましたか?」


「ああ、ドラゴンが四十年ぶりに出て皆大慌てだ」


「魔物自体見たことない人も多いですからね」


「ドラゴンは50年前でもレアだったよ。ゴブリンは飽きるくらい倒したがな」


 ◇


 ぐるっと城の周辺を回った後は、宿を探した。

 “HOTEL”と書かれた看板を見つけ、そこに入る。


「ようこそ王都ホテルへ」


 扉についたベルが鳴ると、カウンターに座っている宿の主人が歓迎の言葉を口にした。


「開いてる部屋はあるかい?」


 主人に話しかける。


「運がいいね、ちょうどキャンセルが出た所だ」


「そりゃよかった。一週間分頼む」


「ここに名前を書いとくれ。料金は金貨三枚、前払いだ」


 紙に“コリン”と偽名を書いた。


 懐から金貨を取りだし、カウンターに並べる。

 主人は金貨を勘定箱に入れ、代わりに壁に掛けられた部屋の鍵を渡してきた。

 203室と書かれている。

 鍵を受け取り、ローブのポケットにしまった。


「おすすめの飯屋と酒場を教えてくれないか」


 酒場には情報が集まる。

 聞き込みがしたい。


 宿の主人に聞くと、彼はカウンターの傍に佇む女を指さした。


「アレで調べてくれ。王都のデータなら入ってるはずだ」


 アレで調べる?

 主人の物言いに引っ掛かりながらも、俺は素直に女の方へ向かった。


 女は宿のフロアにいる人間に愛想よく手を振っている。


 案内役だろうか。

 女の前に立ち声をかけた。


「王都の店について聞きたいんだが」 


「こんにちは。王都ホテルへようこそ。案内人のセシルです」


 こちらに顔を向け、女が答えた。

 視線は確かにこちらに向いているのに、目が合っていない気がする。

 腹の前で手を組んだ女は、笑顔を全く崩さない。

 

「おすすめのご飯屋さんと、飲み屋さんを教えてください!」


 アンジュがセシルに言った。


「ご飯屋さん、飲み屋さん、承知しました。しばらくお待ちください」


 セシルは目を閉じた。

 微動だにしない。

 髪の毛が空気の流れに乗って動く以外、筋一本動いていないようだ。


 呼吸もしていない。

 目を閉じているのを良いことに、じろじろと観察する。

 

 うなじに書いてある魔法陣を見つけた。


「こいつ絡繰り人形(マリオネット)か」


 完璧に人間と見分けがつかない。


 肌の質感も、声も生きた人間と変わらない。

 50年で絡繰り人形(マリオネット)の技術は進んだらしい。


 俺の記憶にある絡繰り人形(マリオネット)は一目でそれとわかるものばかりだった。

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