第17話「お気に入り」
久し振りに全員が集まった。たった数日だったが、なぜか懐かしく感じた。
「エルー! これなんていう宝石なのー?」
「えっと……こんぺいとうってお菓子なの」
「「お菓子ー!?」」
アカとアオは目を輝かせてお土産のこんぺいとうを眺めていた。アライブに置いていかれたショックは忘れたらしい。
ライセングは二人を横目にアライブに話しかける。
「なにか情報はあったのか?」
アライブは首を横に振った。他の三人とも同じく首を横に振る。
「そうか……じゃあ結局王国の駒ってわけか」
「そうなってしまうな。まさかこのタイミングで鉱山遠征に行くなんてな」
「俺たちに何をして欲しいんだろう」
アライブとライセングは、う〜んと唸りながら考え込む。
「しかもトイラン王国の勢力はまだ森の五賢しか知らない」
「確かに危険すぎるな」
そう、何を隠そう今度の鉱山遠征とは、トイラン王国の端にある鉱山に向かうのだ。その鉱山は戦争の時にトイランに占領されたまま、今もなおトイランの支配が続いている。そして、アライブの故郷でもあるのだ。
しかし、まさかこのタイミングで鉱山を落としに行くのは、かなり危険なのだ。
「でももし罠だとしたら……俺たちが居ない間にトイランが攻めてきたら」
「それは行かない理由にはならないよ。今も奴隷として働かされている人だっているのに。見過ごすわけにも行かないよ」
マルカスが横から口を挟むと、アライブとライセングの二人は、そうだよなぁ、と、溜息をついた。
「じゃあやるしかないのか……」
「久し振りの戦闘になるかな……」
二人は納得がいっていない様子だったが、各地域の辺境騎士団に集会の伝達をしていた。
と、そこへ……
「マルカスさん! 分かりましたよ!」
と、キッチルが息を切らしながら走ってきた。彼女の手には真っ黒の本が握られている。
「これに、書いて、あるんです」
「これは……?」
「こっそり図書館から盗んできた本です!」
一同の動きが止まる。そして、アライブが震えながら、なにやら呟いている。
「やばいやばいやばいやばい……」
「アライブさん、大丈夫ですよ。ちゃんとダミーと入れ替えておきましたから!」
キッチルは自信満々という風に胸を張る。
「いやいや……流石にまずいでしょ」
「気付かれたらその時です」
彼女はまるで悪い事をしてないような顔をして、話を続ける。
「マルカスさんが持ってるその「売れない短剣」は、上級のクウォーテなんです。それは、ある条件で発動します。おそらく、「売れない短剣」は「怒りの感情」と「使用者の血」を吸って発動するのでしょう」
「……怒り……」
確かにあの時はどちらの条件もクリアしていた。が、果たしてそれだけだろうか。
マルカスは悩んだが、それ以外思い浮かばない。今までここまで怒りを表したことはなかったからだ。
「でも、なんでマルカスは発動条件の一つの「使用者の血」を知っていたの?」
エルの質問でマルカスはハッとした。
「確かに……なんで俺は知っていたんだ。いや、あの時誰かが喋ってるように聞こえたんだ」
でも誰が、そう思った時、もう一つエルが質問してきた。
「ところで……あなた誰なの? マルカスにそっくりな声だけど……」
「……は? 何言ってんだよ。俺は……」
マルカスだと言いかけた時、変な感覚に襲われた。まるで平面の中に閉ざされたように、立体的な感覚が無くなった。
「……え……いやだ、なんだよこれ……」
あるかもわからない背筋が凍った。一体何が……
「誰か……誰か助けてくれ!」
――薄くなる意識、その時、一人の人影が見えた。あれは……誰だろう。見たことがあるが思い出そうとするとなぜか頭が痛くなる。あぁ……また答えは教えてくれないんだ……
マルカスは意識を失った。平面の中で。




