【番外編】女子会
一昨日の夜、通知が届いた。それはまるで今までの王国を改革しようとするような内容で、それを怪しんだ団長が王都に情報収集に出かけようというのである。
そして、向かう道中で森の五賢の一人、ウノに遭遇する。戦いの中で団長であるアライブは、大怪我を負う。慌てて王都にテレポートした一行であったが、まだアライブは回復しておらず、今日一日は自由行動となっていた。
「キッチル〜、たまには二人でお茶しない?」
「女子会って言うものですか?」
二人は街をぶらぶら歩きながら、ケーキが美味しそうなカフェを見つけたのである。
「ここにしようよ! “特別なハーブを使ったハーブティーがあります”だって!」
「え、えぇ……そうしましょう」
半ば無理矢理エルが決め、可愛い花のついた扉を押して、中に入った。
内装はとても可愛く、花や小鳥のぬいぐるみが飾ってあった。店内はケーキの美味しい匂いが漂っている。近くの村には無い、心踊るカフェだ。
「エル、ここは少し落ち着かな……」
キッチルの言葉を塞ぐようにエルが声を上げる。
「うわぁ! すごいよキッチル! こんなお店来たことなかったから一回は来て見たかったんだよ!」
きっと彼女に何を言っても無駄だろうと、キッチルは諦め、店員に案内された席に着く。
「キッチルはどんなのが好きなの?」
エルは、座ると同時にメニュー表を開き、聞いてきた。
「私は……そうですね、ドライフルーツケーキにします」
ドライフルーツがケーキの中に入っていて、さっぱりした甘さ、と書かれている。甘過ぎるのは苦手なので、これで丁度良いと思った。
「エルは」
「んふ? わたしはね〜……春の果物全部乗せケーキかなぁ」
メニュー表に載っている写真を眺めながらエルは言う。彼女の目は、この世のどんな美しい宝石よりも輝いてみえた。
「ていうか、二人なんだから敬語はやめてよね〜」
と、エルがこちらを向く。確かに気を張るような仲ではないので、敬語をやめることにした。
「じゃ、じゃぁ……注文しま……する?」
「やだキッチルったらかわいいんだから!」
恥ずかしそうに俯くキッチルとは反対に、エルは楽しそうに笑っている。
二人は、それぞれのケーキを注文した。もちろん飲み物は、看板に書かれていたハーブティーだ。
「どんなのが来るかなぁ」
エルは足をバタバタさせてにやにやしている。そんな彼女を見ていると、不思議とこちらも楽しい気分になってきた。
「きっと美味しくてかわいいんだよ」
エルは、一瞬きょとんとしたが、多分敬語じゃない言葉遣いを久し振りに聞いたからだろう。
「んふふ、こういう時にしか食べられないからね。本当に楽しみだよ〜!」
「うちの男達は料理下手だもんね」
「そうなの! アライブはましだけど、ライセングは本当にひどいのよ」
そう言い、笑い合う二人。何年振りだろうか、とキッチルは思った。初めて屋敷に来た時は、どう接していいか分からず、大変困っていた。しかし、それを見て、笑顔で話しかけてくれたのがエルだった。彼女は表裏の無いとても良い人で、すぐに打ち解けることができた。その時はまだ穏やかな生活と任務だったから楽しかったのに……
キッチルの少し暗い顔に気が付いたのか、エルが心配そうに聞いてくる。
「どうかしたの?」
「ずっとこんな風に、平和だったら良かったのにね……」
「……」
「あ、ごめんね。暗い話題にしちゃって」
と謝ると、エルは柔らかく笑って、
「わたしも丁度そう思ってたんだ」
と、返してきた。キッチルは、まだまだこの人には届かないな、とエルの心の広さに感心した。
そうこうしているうちに、ケーキとハーブティーが運ばれてきた。予想通りとてもかわいい。お皿や手拭き、お盆やコップまで細部に「かわいい」を取り入れている。
「おお〜!! 食べれないよ〜」
エルは目が零れ落ちそうなほど大きく開けて、ケーキを見つめている。ケーキよりも彼女がかわいい。
「エル、ハーブティーもいい香りだよ」
「本当だ! この匂いは……」
「高い山に生える幻のハーブだね!」
「ん〜、懐かしいなぁ」
エルは山育ちなので、とても嬉しそうにしている。
「早くしないと焼きたてのケーキが冷めちゃう!」
そういうと、エルとキッチルは両手を顔の前で合わせて、「いただきます」と一言。アライブから教わった食事の儀式だ。
「うわぁー! ふわふわしてるー! 美味しいー!」
「うん! ハーブティーとぴったり合う!」
二人は終始笑顔で食べた。エルに至ってはもう一つ追加で注文したぐらいだ。
「つい食べ過ぎちゃった……」
「アライブには申し訳ないね〜」
と、言いつつも思いっきり楽しんでいるのである。しかし、流石に申し訳ないので、お持ち帰り用のケーキを一つ買い、店を後にした。
その後は、少し二人で街を歩くと、キッチルは先に戻ると言い、病院に向かっていった。
一人になってしまったエルだが、あることに気がつく。
「あ、服買ってない!?」
彼女はまた、忙しく街を駆け回るのであった。




