第12話「それぞれの任務」
朝早く、四人は宿を後にした。まずアライブ以外の三人は、図書館に潜入するために知り合いの司書官を訪ねていた。
「そこをなんとか頼むよ……」
「お願いっ!」
「お願いします……」
その司書官は困ったような顔をして首を横に振る。頑固な野郎だ。だが、とにかくこの男を説得しない限りこの話は進まない。マルカス達は何度も頭を下げる。
「めっちゃ上手い酒持ってきた」
「居酒屋代奢る!」
「オススメの酒屋教えます……」
司書官の男は、うーんと少し悩み、
「そんなに言うんだったらしょうがない、許可しよう。その代わり、絶対に喋っちゃだめだからな。それと、キッチル。俺はこの街の酒屋は全部回った」
男は、それじゃ、と手を上げ去っていった。
「あぁ、あいつが無類の酒好きでよかった」
「後で適当な場所に連れて行かなくちゃ」
「酒屋……全部……回った……」
マルカス達は息を吐き出した。しかしここからが本番である。彼らは早速制服に着替え始めた。
「……マルカスさん、こっち見ないでくだ」
「見てないよ!」
そんな疑いをかけられるとは思っていなかったので、慌ててしまったのかエルがジッとこっちを見て、
「……気持ち悪いよ」
と、一言。流石にこれ以上心を痛めつけられたくなかったので、仕方なく図書館の狭い個人スペースで着替えることにした。全く、ひどいもんだ。
三人は着替え終わると早速作業に取りかかった。が、流石にすぐに裏に入ると怪しまれるので、最初は通常業務から。そして徐々に裏に入っていくという作戦だ。
「これ……いつまで続ければいいんだ?」
「えぇっと、キッチルが調べた限りだと、昼間に休憩が入って、その時に人の出入りが薄くなるみたい。だからそのタイミングで調べに行こう」
「なるほど……」
その情報をどこで手に入れたのか気になったが、知らぬが仏、なのかもしれない。
「それじゃもう少し待つか」
そう言ってまた作業に戻った。
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一方のアライブだが、困ったことになった。近衛騎士団長が不在なのだと言う。まさかここまで来て不在だとは思ってもいなかったので、彼は行き詰まってしまった。
一人寂しく騎士団本部を後にするが、諦める訳にはいかない。何としてでも王国を操る影の尻尾をつかんでやりたかった。
そこで彼は、街の人に色々な噂を聞いて回った。しかし、どれもあまり役に立つものでは無かった。流石に歩き回って疲れたのか、彼はベンチに座っていた。これじゃ三人に合わせる顔がない。
と、その時、急に手を引っ張られた。驚き、顔を見上げるとそこには見知らぬ女性……いや、少女か。
アライブは振り払う事も忘れ少女に引っ張られるまま路地裏に連れて行かれた。
「ちょっと……ちょっと待って!」
アライブが叫ぶと、ようやく少女は止まりこちらを振り向いた。少女の目にはうっすら涙が浮かんでいる。何があったのか分からないが、ただ事ではないような気がした。
「あの……」
「早くついてきて!」
彼女はまた走り出した。アライブは慌てて彼女について行った。
更に路地裏に入っていく。と、そこに現れたのは小さな扉。その扉は、屈まないと入れないような小ささだ。
「ここは……」
「私の……弟がここに……」
そこから先は言わなかったが、どうやらここに監禁されているようだ。しかし、なぜ彼女が俺を選んだのか、不思議でたまらない。そしてもう一つ、なぜ彼女はこの場所を知っているのか、ますます怪しいが、ここで逃げるのは流石にこの子が可哀想、しかし昨日怪我から復活したばかりなので、出来るだけ戦闘は避けたいところだ。
が、ここは騎士団長。そして男だ。女の子にカッコいいところを見せたい一心で扉を開ける。
今にも壊れそうな扉を開けると、広い倉庫のような場所に出た。そこは少しカビの臭いがしたが、そのほかにも、少し血の匂いもする。
「なんだ……ここ……」
その時だ。突然目の前からナイフか飛んでくる。すんでの所でナイフをかわす。
「誰だ……!」
しかしそこには誰も居ない。その瞬間、目の端で何かを捉えた。
「まさか……!」
その時、聞きたくない声が聞こえた。
「あらぁ、まさかこんな所で再開するなんてねぇ。あははっ! 君も運が悪い」
あいつは、一昨日村で遭遇したウノ……!
「あははっ! 死に損ないには興味は無いんだぁ」
しかし、アライブは彼の後ろに少年がいる事に気がつく。
「おい、その少年を放せ!」
「あははっ! だから君には興味が無いって言ったじゃない」
ウノは笑う顔を戻し、
「もしかして、今度こそ死にたいの?」
そう言ってまた笑う彼を見て、アライブは怒りを抑えきれない。まだだと言い聞かせたが、自分を制御しきれそうにない。
「ならいっそ殺してしまうか、俺の平常心と、こいつを……!」
ウノは、にやりと笑うと少年を倉庫の奥に蹴り飛ばし、
「それを待ってたんだ、あははっ!」
と、コートを脱ぎ捨てた。




