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孤独の辺境騎士団  作者: おんすい
第1章 決戦の始まり
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第9話「新たな敵」

 その日の朝早く、アライブ達は屋敷を出発した。まだ太陽が出ておらず、少し寒かった。ちゃんとライセングが工作してくれていれば、まだアカは寝ているのだろうか。本当は連れてきてやりたかったが、任務の妨げになるかもしれないと思い、足止めしてもらったのだ。


 「それにしても……アカとっても行きたそうだったのに」


 と、エルが責めるような目を向けてきた。他の2人は、普段の起床時間と違うのか、馬車の中で眠っていた。アライブは、寒そうに眠る2人に毛布をかけてやった。


 「どれくらいかかるの?」

 「だいたい5時間くらいだよ」


 エルは、「つまんないー」と、愚痴をこぼしていたが、王都に着く前に体力が切れたら困るので、仕方なく馬車に乗っているのだ。


 ――結局、3人とも寝てしまった。

 アライブは、一応起きているが、多分心配はない。あらかじめこの馬車に魔除けの塗料を塗っているのだ。恐らく森にいる獣は襲ってこないだろう。

 そう自分に言い聞かせ、アライブも眠る事にした。まだ少し寒かったが、睡魔には勝てなかった。





 「……」

 茂みから覗く黒い影は、走り去っていった。





 アライブ達が目を覚ましたのは、馬車の揺れが無くなったからだった。しかし、ついたわけではない。アライブが不思議に思い、外を覗いてみた。外は血の匂いが漂っていて、異様な雰囲気だった。馬は、首に三つの氷柱が刺さって、死んでいた。

 アライブは声が出なかった。何が起こったのか分からない。他の三人もそうだった。

 アライブは位置を確認できるクウォーテを確認する。王都まではあと少しのところである。本来ならこの先の村に寄ってから王都に行く予定だった。

 そして、マルカスが悲鳴をあげる。


 「クウォーテが……割れてる……」


 普段のヒビが入るような割れ方では無かった。木っ端微塵、と言う言葉がぴったりだった。アライブは、嫌な予感がした。この先の村から、異常なほどの魔力を感じる。


 「……先を急ぐぞ! 嫌な予感がする」

 「…………うん!」


 四人は走り出した。目的の村まではすぐなので、大した事はない、はずだった。

 突然、向かい風がひどくなった。


 「……まずい! 全員伏せろ!」


 アライブの掛け声と共に全員がその場に伏せる。瞬間、周りの木が大きな音を立てて、倒れた。全て綺麗に切られている。


 「……!」


 全員の動きが固まった。なぜなら、これほどの力のある風使いは見たことが無かったからだ。とは言っても、こちらも騎士団。焦ってはいなかった。


 「全員戦闘態勢! 今回はパターンCだ!」


 再びアライブの掛け声で素早く場を整える。キッチルは前衛で防御魔法を、エルはキッチルの左斜め後ろから攻撃魔法の準備、マルカスはその反対側で迎撃態勢、マルカスは後ろから指示を出す。菱形になり、前方からの攻撃に強い組み方だ。


 「進むぞ……気を抜くな……!」


 アライブ達は先を急いだ。その後も何度か吹く、強烈な風魔法に耐えながらやっとの思いで村に到着した。その時、怖いぐらいに風が止んだ。アライブが村を確認したが、


 「……誰も……居ない」

 「じゃあさっきのは……」


 エルが喋りかけた時、キッチルが何かを見つけたらしい。顔が真っ青になり、震えている。


 「キッチル! 何があった!」

 「あ……あれ……」


 彼女は、震える指を抑えながら、指をさした。


 ――そこには、身体を引き裂かれた村人の死体だった。1人だけじゃない。恐らくこの建物の中にいた人達全員だ……


 「ひどい……」


 キッチルはその場に座り込む。もともと戦闘は苦手なキッチルだ。相当ショックらしい。しかし、それは他の三人も同じだ。言葉が出ない。

 その時、突然笑い声が聞こえた。


 「あははっ! どうだい、ボクの死体(アート)は。美しいだろう?」

 「……てめぇ」


 そこに居たのは真っ黒なマントに少し緑の入ったハットを被った青年だった。


 「そのマントの紋章……トイラン王国の」

 「あははっ! よく分かったね。そうだよ、ボクは森の五賢のウノだ。ずっと君達の事を監視していたんだけどね、全く気付かれないから気付いて欲しかったんだっ」


 ――ボトリ

 そう言って何かを投げてきた。それは、人の生首だった。


 「君達が早くボクに気付いてればこんな事にはならなかったのにね。弱いって生きるだけで罪だねっ」

 「……お前は、俺が殺る……!」


 アライブが一気に覚醒状態になる。こんなに怒る彼を見るのは久し振りだった。それにつられるように三人も魔力を溜める。


 「それだよそれ! その顔が好物なんだっ」


 そう言うと、呪文を唱える。


 「君達はどうやって死にたい? あははっ!」


 ウノが握っていた手を開くと、今まであった建物が全て吹き飛んだ。村は、更地……いや、沢山の死体が転がっている。墓地の方がふさわしいかもしれない。


 「村人には申し訳ないが、貴様にもこの地で眠ってもらう……!」


 アライブは一気に間合いを詰める。アライブが攻撃を仕掛けようとした時、彼の目の前からウノは消えていた。


 「ボクね、風のような速さで動けるんだっ」


 そう聞こえたのは、アライブの背後。アライブは振り返る間も無く地面に叩きつけられる。


 「あははっ! 死ぬのは君だよっ」


 そう言うと、地面に叩きつけたアライブの首を片手で掴み、持ち上げた。アライブは苦しそうにもがいている。その時、エルが魔法を撃ち放つ。

 空から雷が落ち、ウノを襲う。瞬間、隙をついて、アライブが手から飛び退く。しかしアライブは休む間も無く、攻撃を加える。手を当てた地面が盛り上がり、ぱっくりとウノを飲み込んだ。そして、そのまま元の地面に戻って行った。


 「……そっちは大丈夫か……?」

 「アライブ、こっちは大丈夫! それよりも傷は?」

 「問題無い。ハーフの俺は回復力が高いからな」


 アライブは三人の元へ戻ってきた。体力消費が激しい覚醒状態は、長くは持たない。彼は、すぐに「ハリボの実」と言う、体力、魔力回復用の果物を食べた。とりあえず場を整えたが、まだ安心はできない。これぐらいで死ぬような奴じゃないだろう。と、思った矢先、地面が揺れ始めた。


 「あははっ! 死にそうだよっ」


 地中からウノの声が聞こえた瞬間、地面に一気にヒビが入る。

 地面を引き裂く大きな衝撃と共に地面から強烈な風が吹く。風は地面に落ちていた草や、木や、建物の残骸、村人の死体を一気に切り刻んだ。

 目の前が、血に染まる。


 「あははっ! 本当に死んじゃうところだったよ。流石に空気が無くなると苦しくてねっ」


 そう言い割れた大地から飛び出したウノはニヤリと笑い、ハットを脱ぐ。その瞬間、アライブを鋭い風が襲う。マルカスは慌てて防御魔法をアライブにかけたが、間に合ったかどうか……


 「まだ……だ。まだ……」


 アライブの身体はボロボロになっていた。右腕は肘から下が、左手は肩から切り落とされている。さらに、右肩から左脇腹にかけて身体がパックリと割れていた。


 「あははっ! さすがハーフだねっ。ボクの攻撃を食らったのに生きてみせるなんてっ。でもここで終わり」


 そう言うと彼は指を二本アライブに向けた。ばいばい、の声と共に指先から放たれた空気砲が彼の心臓を射抜いた。


 ――バタリ、その場に倒れ込むアライブにキッチルは再生魔法を唱えた。が、傷が酷すぎて殆ど治っていない。


 「あははっ! もう一つ、ボクの死体(アート)が出来ちゃったねっ。でも君達はラッキーだよ、丁度ボクの体力が切れちゃったからねっ」


 そう言うと、ウノは飛び去った。


 「早く! 王都に運ばないと!」


 エルは、今にも泣き出しそうだ。まだ死んではいないであろうが、遅くなれば結果は変わる。最優先は、アライブの治療だ。


 「キッチル、大丈夫か? 王都までテレポートを使って欲しいんだ」


 キッチルは、分かってる、と小さく呟き、エルとアライブを王都に飛ばした。定員は二人までだ。マルカスとキッチルもそのあとにテレポートを使い、王都に飛んだ。慌てていたので荷物を忘れてしまったが、今はそんなことはどうでも良かった。


 ――この日、アライブ達はあらかじめ押さえておいた宿屋に向かう予定だったが、アライブの回復が優先となり、全員病院で眠る事となった。





 ――しかし、まだ、彼らは気付いていない。屋敷が襲撃されているという事を……

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