第8話 行動で示すために
「君、アンナリーゼ嬢だね。まずは礼を言わせてくれ。あの場で私に肩入れしてくれたこと感謝する……しかし本当に良かったのかい? 君はカマロン兄上の派閥なのだろう?」
ミハエルが話しかけてきた。
「ミハエル殿下。感謝の言葉、嬉しく思います。派閥のことに関しては、勝手に行動してしまった事は咎められるかと存じますが、先ほども申し上げた通り『行動で示す』ことでカマロン殿下もお許しくださると思います」
「そうか……でも君の髪色を考えると風属性の魔法と、先ほどの授けの儀で授かっていた空間魔法では武勲を上げるのは難しいのではないか?」
「ご心配してくださりありがとう存じます。ですが問題ありません。魔力出力量は自信ありませんが保持魔力量はそこそこあるので、創意工夫で結果を出してみせますわ」
おお、ミハエルがまさか俺の授かったギフトを覚えているとは。
まさか今日参加した貴族全員のギフトを覚えているのか……?
こう言うところを見ると充分優秀なんだけどなぁ……比較対象が悪すぎるんだよ。
「もし何かあったら僕が力になるから、遠慮なく言ってくれ。王族として協力すると誓うよ」
「ありがとう存じます。その際はよろしくお願いしますね……それでは友人を待たせているのでこれで失礼いたします」
「ああ、また今度話そう」
会場の中心から元いた端のほうへ移動する。
めっちゃ周りから注目されてる……
とりあえず顔合わせしようとしてた皆に謝らないとな。
「皆様、お恥ずかしいところを見せてしまい申し訳ありません。ご挨拶もまだしていないのに派閥に影響する事を勝手にしてしまいました」
俺の謝罪に対して、同じ下級貴族であるティーゴ男爵家の三女であるスイアティーノ嬢が微笑みながら話しかけてくる。
「いえいえ、トロスベリ公爵令嬢の言動は目に余りましたから……他派閥に対して物怖じせずに注意できるのはなかなか出来ませんもの。それに実力主義のカマロン殿下なら結果を示せば許してくださいますわ……何か秘策があるのでしょう?」
「そう言ってくださると安心いたしますわ。秘策と言えるかはわかりませんが、やろうとしてる事はいくつかありますの。まだお伝えできないのが申し訳ありませんが……」
そこでダンガスお父様が心配そうに尋ねてくる。
「一応何か秘策があるのか、後で詳しく聞かせなさい。それと派閥の上位貴族の皆様にももう一度お会いして謝罪して回るからな」
ですよねー……本当に勝手なことをしてしまったものだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
謝罪行脚が終わり、パーティーもお開きになった。
今日は王都に泊まり、明日朝一で領地へ帰る馬車に乗ることになっている。
高位貴族は王都に屋敷を構えているが、うちみたいな貧乏貴族はそんなものは無い。
なので貴族用の宿に泊まる、当然グレードは低い。
ちなみに王都に屋敷を構えている高位貴族はしばらく王都に留まりお茶会などの社交を行うが、我が男爵家のような下位貴族や辺境伯などは一度領に戻って冬になってから王都に出向いて本格的に社交を行う。
辺境の領地は農業などの仕事が一区切りしないといけなかったり、他国と隣接してる辺境伯なども行軍が不可能になる積雪期になってからようやく王都へ向かう事ができるからね。
そして夕食を食堂でいただいた後、ダンガスお父様に呼び出された。
「それで、アンナリーゼ……パーティーでの行いに対して秘策があると申したな。その秘策とは何だ?」
やっぱり聞かれますよねー……ここは腹をくくるしかないか。
原作知識という秘策を使う覚悟を……!
「授けの儀でギフトを授かった際に、御告げを受けました」
「なに……?」
「陛下と王妃が侵されているのは病気ではなく帝国が行った呪術によるものだと言うこと、その呪いを解呪できる平民が存在すること、ダンジョンで隠されている魔装具があること、未発見のダンジョンがあること、最後に帝国は魔王の復活を目論んでいること……この五つです」
「待て待て、いきなりそんなこと信じられる訳が無いだろう。何か証拠は無いのか?」
「そうですね……ダンジョンに隠された魔装具があると御告げにあったので、それを回収しに行ってみればわかるかと」
「ふむ、隠された魔装具か……それならば多少の信憑性はあるな。そのダンジョンはどこのダンジョンだ?」
「王都からの移動範囲内ですと、素人でも挑める初心者用ダンジョン『はじまりの洞窟』に一個魔装具があるようです」
「はじまりの洞窟か、確か王都から西へ一時間移動した場所にあるのだったな……よし、明日そこに行ってお前の言う魔装具があるか確認しに行く。もしあれば、派閥にお前の御告げを報告し対応してもらわねばならん」
カマロン第一王子の派閥に報告か……それはちょっと困るな。
主人公ちゃんの活躍は『誰と一緒に行うか』でその後のルート分岐に影響が出る。
今回、攻略対象者の誰とも行動を共にせず陛下達を癒せばバッドエンドに行く可能性が高まるだろう……何故ならカマロン第一王子は平民を飼い殺すタイプの人間だからだ。
魔王を倒す際に必要な愛の力を育む必要があるから、愛の無い飼い殺しをする第一王子派閥に主人公ちゃんを任せるのは避けたいんだが……仕方がない、ここはミハエルの好感度が上がってしまうが彼に一時的に任せよう。
国王夫妻を癒やすのは本来は学園に入ってから行うイベントだが、背に腹は代えられない……俺が間に入ってミハエルルートが確定しない程度に主人公ちゃんとミハエルの仲を取り持とう。
「お父様、恐らく一度だけでは偶然として片付けられてしまうのではありませんか? もう一つの御告げ『呪いを解ける平民』について調べてみることをお勧めします」
「陛下の呪いを解ける平民か……その平民はどんな奴なんだ?」
「王都の平民が暮らす区画で営んでいる孤児院に身を寄せている少女のようです。どうやら近々平民向けに行われる授けの儀で『聖女』のギフトを授かるみたいですが、ギフトを授かったばかりでは力が弱くて呪いを祓うことはできないようで……隠された魔装具の中に聖女専用の物があるのでそれで能力を強化することで、陛下にかけられた呪いを祓えるようになる……と御告げで聴きました」
「平民のことは理解した。それでその聖女専用の魔装具はどこにあるんだ?」
「それが……王家管轄の禁止区域に未発見のダンジョンがあり、そこに隠されているようです」
「ぐっ……禁止区域か。それではカマロン殿下の信頼を得るための行動なのに、信頼を得られてからじゃないと入れないのでは意味がないではないか」
「えぇ、カマロン殿下の許可は下りないと思われます。そこで別の王家の方にお願いしてみるのはどうでしょう?」
「なに? トコーツン第二王子殿下は無理だぞ。敵対派閥だからな」
「はい、なので第三王子のミハエル殿下に頼むのです」
「ミハエル殿下か。確かに授けの儀の後のパーティーで庇い立てした恩を理由に同行させてもらえるかもしれんが……そうだな、派閥としては我ら第一王子派閥に敵対できる程の力は無いし一度くらい許容範囲か」
「では明日、御告げのことを話してミハエル殿下にはじまりの洞窟に隠された魔装具を見つけるところから協力をお願いしてみます。魔装具を見つけたら、後日聖女になる平民を呼び出してミハエル殿下の派閥の司祭に頼み授けの儀を行うのです。そこで聖女のギフトを授かれば御告げの信憑性も増して、陛下の呪いを祓うための魔装具を取りに行くことも可能でしょう」
「うむ、陛下の容態が回復したらその功績は我がエイモン家とミハエル殿下のものとなる。第三王子派閥が得をするのが癪だが……御告げの有用性を示すことになるのだ、派閥内でも立場が良くなるかもしれん。では明日の朝一番に使いを出そう。アンナよ、上手くやるのだぞ」
「はい、お父様。私にお任せくださいませ」
こうしてなんとかお父様の許可を得られた。
あとは、俺がミハエルを上手く説得できるかにかかっている。
責任重大だなぁ……




