第7話 顔見せのパーティー
第一王子カマロンの掛け声でパーティーが始まった。
場は和やかなムードで満たされている。
何故かと言うと、今回の授けの儀では言ってしまえば使えないギフトを授かった貴族がいなかったのと、使えるギフトは高位貴族が軒並み授かっていたからだ。
もし凄まじいギフトを授かったのが下級貴族だったり、高位貴族が使えないギフトを授かったら、この場はピリピリした雰囲気になっていただろう。
今、俺とお父様は第一王子のカマロンと四大公爵家のうちの一つ……チャーリョク公爵家の当主テーキンカとフェイカン公爵子息と挨拶をしている。
俺はギリギリ使えなくもないという判定を受けたので、派閥の上位貴族やトップの第一王子からの印象も悪すぎない程度で済んでいる。
殿下たちに、薄く展開して空気の天井を作れば雨に濡れないなどの地味なライフハックのような活用方法をいくつか弁明した結果だ。
派閥で完全に役立たずだと思われたら家族に迷惑がかかるからな……
上位貴族への挨拶も終わって、第一王子と第二王子は執務があるとのことで退席した。
そして派閥の下級貴族同士で親交を深めようとした時、問題が起きた。
「なんと言った! もう一度言いたまえ!」
「あら? 聞こえなかったのかしら。何度でもお伝えいたしますわ。ミハエル殿下、貴方は早く王選から辞退し、王位継承権を放棄した方がよろしいかと存じます」
どうやら口喧嘩のようだが、端のほうで固まっていた俺達はよく見えない……だが声で分かった。
第三王子ミハエルとトロスベリ公爵令嬢が言い合っているな。
まずいな……原作では書かれていない事だから介入すべきか迷うぞ。
病ませない為には介入してミハエルの肩を持つのが理想だが、第二王子派閥から目をつけられるのは避けたいところだ。
「私は確かに兄上たち二人には頭脳で劣り、武力でも劣っている……だが私は王として国を統治することを諦めてはいない! 足りない部分は仲間と補い合い、正しい道へと歩めるはずだ!」
「仲間と補い合う、ですか……それは他の王子殿下お二方も同じであり、その結果はミハエル様以上の成果をもたらしてくれるでしょう。ミハエル様である必要はありませんわ」
「……っ!」
そろそろと近くまで来てみれば、思っていたよりもギスギスした空気だな。
完全にミハエルが場の空気とトロスベリの圧に飲まれちゃってる。
どうにか助け舟を出してやりたいが……
「ミハエル様、貴方にしかできない事はありますか? ありませんよねぇ? ギフトも平凡、魔力量も平凡。頭脳や武力に優れてるわけでもない。継承権を放棄して私たちトコーツン第二王子殿下の派閥に下るべきかと存じます」
「っ! 僕は……!」
トロスベリ公爵令嬢、ちょっと言い過ぎだ。
何がきっかけかは分からないが誰かが丸く収めないと……ミハエルが病んで主人公ちゃんの身が危ない!
ついでにミハエルも可哀想だから見てられないと言うのもある。
周りを見る。
トロスベリ公爵令嬢の派閥仲間はニヤニヤして、ミハエルの派閥仲間の方はオドオドと成り行きを見守っているようだ。
目立ちたくないがしょうがない。ここは一肌脱いで諍いを終わらせるか。
「皆様、今は祝いの場。罵り合うような真似はやめて、建設的な話し合いをしませんか?」
会場の真ん中で二つに分かれたグループへ語りかける。
「あら、見ない顔ね。名乗りもせず高位貴族への無礼を働くなんて、どこのどなたかしら?」
「大変失礼しました。わたくし、第一王子カマロン殿下の派閥に属するエイモン男爵家の次女、アンナリーゼと申します」
「まあ! たかが男爵家の子女が一体何様のつもりかしら?」
トロスベリからギロリと睨まれる。
なかなかの迫力だ、まだ十歳なのに。だがここで引くわけにはいかない。
「先ほども申し上げた通り、祝いの場での諍いはお止めになっていただきたいのです」
「諍い? ただ無能な愚者に引き際をわきまえるよう忠告しただけですわ」
「その無能な愚者と言うのがミハエル殿下のことをおっしゃるなら間違いです。殿下は他の王家のお二方とは違い、民に寄り添う政策を考え、実行できるお方です。国民を蔑ろにした政策しか行わなければ、いずれ国は破綻します」
「やはり男爵令嬢ごときでは貴族の立場と言うものがわかっていらっしゃらない様ですのね。貴族あっての国、それが真理です。それに、何故カマロン殿下の派閥の貴方がミハエル殿下を擁護するのです? 競合する相手に塩を贈るような真似をするなんて派閥の事も考えられないのですか?」
「確かに貴族による統治がなければ今の時代立ち行かなくなる事もあるでしょう。しかし、ご存知かと思われますが民主国家の存在が他国にある現状、それは絶対ではありません。今この国は時代の節目を迎えていると思います。より良い国にする為には、足の引っ張り合いを誘発するような煽り合いではなく、自らの正しさを行動で示すやり方で国に利益をもたらす事が最善かと。ミハエル殿下への侮辱に異を唱えたのもそれが理由です」
「民主国家が存在している事は当然私も存じております。しかし、あのような野蛮な国を理想とするわけにはいきません……ですがいいでしょう、これだけの啖呵を切る貴方の口車に乗せられます。エイモン男爵家のアンナリーゼとおっしゃいましたわね、『自らの正しさを行動で示す』と言うのなら二年後から始まる学園で示していただきましょう……下級貴族である男爵家の子女でしかない貴方が、どういった利益を国にもたらすのか楽しみにしています」
そう宣言してトロスベリは派閥の仲間と共に会場を出ていった。
やばいなー……その場のノリで思いっきり反抗してしまった。
柄にもなく出しゃばったのが完全に裏目に出た。
頭が良いわけでもないのに舌戦を挑むもんじゃないな。
所属している第一王子のカマロン殿下の派閥は実力主義なので結果を出せば許してくれる……と思いたい。
父上や家族達は、まあ許してくれるだろう。こう言う一方的な罵りとか嫌いだし。
そんなふうに会場の中心で遠巻きに見られながら、やっちまった後悔と厳しい将来を考えて少し黄昏れていると、声をかけられた。




