第6話 授かったギフト
「次、エイモン男爵家アンナリーゼ! 前へ!」
おっと、ついに俺の番か。
原作では主人公の親友ポジションで相談役のアンナリーゼは戦闘には参加しなかったし深掘りもされてなかったから、何を授かるのか分からないんだよな。
あまり凄いギフトを貰うと妬まれるし程々のギフトを貰えるとありがたいんだが……
前に出て女神像の前で跪く。
(神様、程々だけど地味に優秀なギフトを下さい……!)
心の中で俺は神に祈った。
そして女神像の水晶玉がそこそこの大きさに光る。
王子たちの時に対応してたのは教皇だったが、下級貴族の対応をするのは司祭に変わっており、その司祭がギフトが記載されるボードを確認する。
「アンナリーゼ男爵令嬢、ギフトは『空間魔法』である!」
おぉ、空間魔法か。
空間魔法は魔力量と出力量が膨大であれば、空間転移などの便利な魔法が使える。
俺くらいの魔力出力量だと自分の空間転移は無理だな。
でも野球ボールくらいの小さいものを見える範囲に転移させるくらいなら出来そうだし、空間収納や空間拡縮も同じように小さい範囲なら使えそうだ。あと、空間固定や空間削除も範囲を薄く伸ばして使えば有用な効果を発揮できるだろう。
それに魔力量もかなりあるし、風魔法のみの戦闘よりかは戦えるようになるばずだ。
実は幼少のころから風魔法の訓練を続けていたが、空気を移動させて密度を調整し酸素中毒狙ってみた結果……そもそも空気中の酸素を認識できないので、この攻撃方法は不可能だという結論になったのだ。
後は鼻や口の周りの空気を固定したり薄くして呼吸困難にする訓練も行っていたが……庭に降りてきた鳥相手にやってみた結果、異変を感じた瞬間移動するので呼吸困難になる前に逃げられることが分かった。
つまり俺の魔法の才能では……攻撃には全く向かないという事がこの十年で分かったのだった。
なので原作知識があっても俺の風魔法だけじゃレベルアップに時間がかかりすぎて、学園内の情報収集や主人公ちゃんのフォローの時間を確保できないと思って俺のレベルアップは諦めていたが……これならチャンスがあるのでは?
それにしても空間魔法をもらえるとは……もしかして風魔法で空気を操っていたから、空間魔法との親和性が増してギフトとして授けられたのかもしれないな。
まあ神様の考えてることなんて分からないけど。
「ふむ、空間魔法か」
「男爵家には過ぎたギフトだな、魔力量と出力量を考慮したら戦闘では使い物にならないだろう」
そのような声が周囲から聞こえてくる。
まあ確かに、下級貴族の男爵令嬢が十歳で平均以上であるかなりの魔力量を持ってるとは思わないよな。
でもこれくらいの扱いが下級貴族としては安心できる。
変に目立つと後が怖いからな。
そしてその後も儀式は続き、最後の男爵子息がギフトを授かった事で授けの儀は終了した。
この後は、無事に十歳になりギフトを授かった事を祝うパーティーが始まる。
このパーティーは主に自分の派閥同士でのご挨拶が目的である。
俺がいる国、リーサント王国は三つの派閥に分かれており、第一王子派閥、第二王子派閥、そして第三王子の派閥がある。
とは言っても、競い合ってるのは頭脳派の第一王子の派閥と武闘派の第二王子の派閥がメインで、第三王子ミハエルの派閥は三歩くらい及ばない。
派閥の貴族もミハエルを軽い神輿として扱っている節があり、求心力は無いと言ってもいいだろう。
俺の生まれたエイモン男爵家は第一王子の派閥だ。
陛下が伏している今、戦争による領土拡大よりも国内の経済安定を目的として政策を行うことが多い。
ただ、経済安定の対象者は主に貴族であり庶民は裕福とは言えない。
ぶっちゃけ生かさず殺さずで反乱を起こされない程度に飼い慣らすような扱いをしている。
前世が庶民の俺からすると、その立派な頭脳を使ってもう少し庶民にも慈悲を与えてくれないかなとも思う。
その点第三王子のミハエルは、原作で庶民にも優しい政策を行う王様になっていたので、そこは好印象だ。
ただ本人が天才ではない事や部下もそこまで優秀ではないので国の経済は多少不安を感じる結果となる。
まあそこら辺のことは置いといて、今は派閥の顔見せに集中しないと。
ミスって派閥の上級貴族から使えない認定されたら困るからな。
パーティーを行う会場に着いて、しばらく待つと第一王子のカマロンと第二王子のトコーツン、そして第三王子のミハエルが奥の扉から現れ壇上に上がった。
カマロンがマイクに似た魔道具で参加している貴族たちに語りかける。
「本日は授けの儀を滞りなく行えたようで嬉しく思う。我が父トゥースブル陛下の代わりに貴殿たちを祝福しよう」
続いて第二王子のトコーツンが周りを見ながら大きな声で宣言する。
「今回の授けの儀で強力なギフトを貰った奴、戦争で活躍したいならいつでも俺の下に来い。我が国の威光を他国の凡愚どもに知らしめるぞ」
「トコーツン、成人してもいない子供にあまり過激なことは言わないでくれ」
「いいんだよ、このくらいの歳から意識させた方が役に立つ奴に育つ」
「はぁ……とにかく、この目出度い場なのだから皆節度を守って交流するように。ミハエル、お前は何かあるか?」
「……いえ、私は授けの儀の際に皆に伝えたので大丈夫です」
「そうか。では未来ある貴族の子女に祝福を、乾杯」
そうしてパーティーが始まった。




