第4話 初めての攻略対象者
本来王族への挨拶は、現国王とその王妃も同席するのだが今はとある事情で第三王子のミハエルだけが挨拶の対応をしている。
実は国王と王妃は病にふせっているのだ。
しかも病と言われているが本当は敵国による呪術によるものだったりする。
それをヒロインである主人公ちゃんことマナリアが、彼女の特殊な癒しの力で解決するのだが……それは学園に入学する二年先のことになる。
それまでは、なるべく原作知識を活かしたいので干渉はしないつもりだ。
国王には申し訳ない気持ちもあるが、マナリアの救出が最優先だからな。
そんなことを考えながらミハエルにお父様とともに挨拶をする。
「お初にお目にかかります、ミハエル・フォウ・チャコウ殿下。エイモン家当主ダンガスにございます。本日はミハエル様の授けの儀を拝見できること、光栄に存じます。アンナリーゼ、ご挨拶なさい」
「お初にお目にかかります、エイモン家次女のアンナリーゼと申します。殿下と同じ学年になれたこと、とても嬉しく存じます。学園で殿下のご活躍を拝見できることが今から楽しみでなりません」
「ダンガスとアンナリーゼだね。授けの儀という重要な場で僕も緊張していてね、皆もどんなギフトがもらえるか心配だろうが……どんなギフトをもらっても落ち込まず他人のギフトを貶さないようお互いに気をつけよう」
「はい、正直に言いますと……わたくし有用なギフトを授かることができる自信がありませんので、殿下が皆様にそのように促してくださり感謝しております」
「そう言ってくれると助かるよ。僕も優秀な兄様たちと比べられて気落ちしたこともあったからね。同じようなことにならないよう、どうしても気になってしまうんだ」
攻略対象者の第三王子ミハエルが持つ心の闇、その一つがこの優秀な兄たちと比べられたことによる自信のなさだ。
第一王子のカマロン様は頭脳明晰、第二王子のトコーツン様は武力に秀でている。
しかしミハエルは、言ってしまえば王族の中では才能のない凡庸な人間なのだ。
保持魔素量も平均より少し高い程度、出力も平均、王族の象徴である金髪で光魔法を使えるが、魔法も頭脳も武力も兄たちには遠く及ばない。
そしてこの授けの儀でもミハエルは平凡なギフトしか貰えず、両親からも期待されずに愛情に飢えて、鬱屈した心をさらに抱え込むことになる。
表向きはイケメンで優しく一般的な貴族からしたら優秀な人間なんだが、やはり立場というのは人を狂わせるものなのだろう。
そこで彼の心を救うのが我らが主人公ちゃんことマナリアだ。
真っすぐで優しいマナリアはミハエルの表の部分だけでなく内面を受け入れて、学園生活でともに成長していくのだ。
しかしここでこじらせた彼の心の闇が出てくる。
ひとことで言えば、依存してしまうのだ。
マナリアがいなきゃ何もできない愚かな男なんだと自分を卑下し始めることで、そんな彼に真面目に対応するマナリアはやがて彼のそばを離れられなくなる。
最終的には軟禁のような生活を強いられミハエルのためだけに生きる人生になってしまう。
これでも一応攻略対象者の中では一番マシなエンディングなので、もしシナリオの改変が不可能だった場合ミハエルのルートに進んでもらうつもりだ。
この世界にシナリオという名の運命の強制力というか矯正力というべきか、そんなものがあるなら完全にお手上げだ。
俺みたいな弱小貴族のろくに力もない次女ができることなんてたかが知れている。
とにかく改変できない場合に備えてミハエルとはある程度の付き合いを続けて、マナリアとの好感度を調整する準備をしなければならない。
「ミハエル様の気配りには感服いたしますわ。わたくしなんか自分のことしか考えていませんでしたもの。もしミハエル様がお困りでしたら、わたくし何でもお手伝いいたしますわ」
「ははっ、それは嬉しいね。学園ではダンジョン探索もあるから、皆が協力しあって切磋琢磨できるように君も協力してくれるかい?」
「はい、もちろんでございます。ミハエル様のおかげで今から学園が楽しみですわ。入学するまでに自分を磨いて助け合えるような人物になれるよう精進いたします」
「うん、頼んだよ」
今回は誰でも言いそうなことを言いつつ、学園で関わる口実のための言質を取るくらいでいいだろう。
そしてお父様と二言三言喋った後、ミハエルの御前から離れた。
この後は授けの儀を行い、儀式の後にパーティーが開催されるのでそこで我が家が属してる派閥の顔見せと会合だな。




