第3話 授けの儀のために王都へ向かう
そんなこんなで十歳になった。
今でも地球に帰れる手段がないか、たまに探しているが空振りに終わっている。
それはそれとして、幼児のころから続けてた魔法の訓練が実を結んだのか、最大保持魔素量と魔力操作などは平均よりもかなり高くなっている……っぽい。
計測機器が簡易版しかないのと家族やメイドたちの褒め方が過剰な気がして自信がないのだ。
無属性魔法の身体強化は、出力の関係で最大値は低い。しかし発動速度と持続時間はそれなりだと思っている。
戦闘スタイル的には身体強化で逃げながら空気を操り敵の窒息を狙うのが俺の定石になりそうだ。
それと、風魔法による情報収集は練度が増した。
今では屋敷中の話し声を集め、話している者の声を喜怒哀楽などで分類し、重要そうな話を重点的に聞けるようになった。
最終的にはリクドン魔法学園全域をカバーする程度の実力を身につけたい。
そして重要なのが、授けの儀。
今はその授けの儀のために田舎の領地から馬車で王都まで移動中だ。
もらえるギフトは強力な物もあれば何に使うのかわからない変なのをもらう時もあるとかで、ちょっと緊張している。
「緊張しているのかい、アンナ」
ボーガスお兄様が尋ねてくる。
「はい……授けの儀では神様からギフトを授かると聞いておりますので」
「はははっ、私も皆もアンナと同じように緊張したものだ。恐らく参加している他の子供たちも緊張しているだろうな。だから緊張するのはおかしなことではないぞ」
ダンガスお父様が励ましてくれる。
ポリーレお姉様やミネーラお母様も頷いている。
五歳のレーガスはよくわかっていないようだ。
家族が授かったギフトは、風魔法全体の威力や効率が大きく増す風魔導士や普通では行使できないような強力な風固有魔法なんかがある。
この十年で家族やメイドたちとも良好な関係を築いていると思う。
貴族の中では下位である男爵家だが、そのおかげか高位貴族に求められるような厳しい教育もなく、家族仲がいいので家督争いも起きそうにない。
この家に生まれてよかったと心底思う。
そんなやり取りをしているうちに、王都ティーギムに着いた。
今回は授けの儀のために教会に行くだけだが、ここにはリクドン魔法学園がある。
遠目に確認するだけになるだろうが、改めてシナリオに抗う決心を固められるだろう。
王都の中心にある教会「ボーツガルレイン」に着いた。
馬車から降りると教会の大きさに圧倒された。
広さも東京ドームが四個分入るくらいはありそうだ……どうやって作ったのだろう?
今回は当主であるお父様と俺だけが教会に入れる。他の家族は先に宿で休息となるだろう。
中に入ると、大勢の着飾った貴族の親子らしき人でいっぱいだった。
この授けの儀は同じ十歳の子が集められ儀式を行うが、まず全ての貴族が儀式を終えた後に平民が儀式を始めることになっている。平民は住んでる町や村にある教会で行われるが、これには儀式を行う力を持つ司祭が村を巡回しなきゃいけないため数週間かかる。貴族の子は王都へ集められこの巨大な教会で儀式を行い、夜に貴族の子として認められたという名目でパーティーを行うことになっている。
パーティーは王族も参加することがあるのだが、今年は攻略対象者の王族であるミハエル第三王子が参加することになっている。
うちの派閥は第一王子の派閥なので懇意にする必要はないが、下位貴族として最低限礼儀はわきまえないといけない。
パーティーが本格的に始まる前に大勢の貴族が王子へ挨拶にしに行く。
うちは底辺の貴族なので順番は後の方だ。
しばらく待ってようやく自分たちの番になった。
初めての攻略対象者との対面だ。




