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第36話 冒険者ギルドと第三攻略対象者




俺たちは店に並んだ旅道具を見ながら、市場を巡る。



「リア、旅に出る時に必要な物はなにかわかる?」


「ええっと……まずは食料。次に着替えの服、就寝時に使うマント……とかでしょうか?」


「そうね。それらも確かに必要だわ。でもそれ以外にも……これなんかも必要になるわ。服が破れた時、自分で繕えるでしょう?」


「針と糸ですね。それなら孤児院でもよく使ってました」



俺はマナリアに質問をして、考えさせながら買い出しを行う。

クイショスは俺たちを見つつ周囲を警戒してくれているので、安心して買い物に集中できるのはありがたい。


そして、必要なものを粗方買った俺たちは、次にどうするか相談することにした。



「リアは次に何をしたい? 宿に戻ってダンジョンの話の続きをしてもいいのだけれど」


「そうですね……もう少し外の気分を味わいたいので、あと一つどこかに寄ってみたいです」


「あと一つ……では、冒険者ギルドなんかはどうかしら? 今後、新しい活動を始めたら関わることになるのだし、わたくしも丁度登録が必要だったから、それを見て手続きの参考にするのはどう?」


「冒険者ギルドですか……? 確かに、冒険者の方とは街のお手伝いで何度かお話したことがありますが、ギルドに入ったことはなかったので私も興味あります」


「じゃあ、早速行きましょう。クイショス、ここから一番近い冒険者ギルドはどこかわかる?」


「バッチリ把握してますよ、お嬢。ここからなら南にある冒険者ギルドが近いです。ついてきてください」



俺たちはクイショスの案内で冒険者ギルドへと向かった。










俺は冒険者ギルドの建物を見上げていた。


小説や漫画ではお馴染みの冒険者ギルド、実際に来てみるとワクワクするものがある。

俺の中の少年心が歓喜に震えている。



おっと、マナリアがいるんだし真面目にやらねば。

大きな扉をクイショスに開けてもらい、俺たちは中に入った。



室内を見渡してみると、想像通りのファンタジー感あふれる内装をしていた。

受付嬢が冒険者や依頼人の対応をしており、掲示板には依頼書が張られ、併設された酒場では、少数の冒険者が食事をしている。


どうやらこの時間帯は、ほとんどの冒険者がすでに依頼を受けて出立した後みたいだ。

受付に並んでいる人も依頼を出しに来た街の人が大半で、冒険者は酒場にいる七人くらいしかいない。

その人達も酒を飲んで騒いでるわけではなく、休暇中といった雰囲気だ。


これなら絡まれることもないだろう。



「リア、それではわたくしが実際に冒険者の登録をするから見ててちょうだい」


「はい、アンナさん」



俺たちは受付に並んで順番を待つ。

前にいる商人っぽい見た目のおじさんが話しかけてきた。



「君たちも依頼をしに来たのかい?」


「いえ、私たちは冒険者登録に来ました。登録しておくと何かと便利だと聞いたので」


「ほう、お嬢さん方が冒険者に? だが、街中での依頼でお小遣いを稼ぐ……という訳でもないのだろう? その上等な服を着ているのだからね」


「その通りです。私たち、ダンジョンに興味がありまして……だけど冒険者登録しないとダンジョンに入れないではありませんか。だからこうして登録をしに来たのです」



まあ、本当は『二年間の計画』で各地のダンジョンを巡る時に、素材の売却や依頼の受注で金を稼がなきゃいけないから、冒険者証が必須なんだけど。



「怖いもの見たさ……というものなのかな? ダンジョンは確かに面白い特徴があったりするが、危険な場所でもある。親御さんも心配するだろうし、あまり無茶はしないようにするんだよ」


「ご忠告いただき、ありがとうございます。一応、ベテランの冒険者の方を雇ってご指導いただくつもりなんです」


「それはいいことだ。何事も先達に倣うことで、リスクを減らせるからね……おっと、わたしの番が来たようだ。それじゃあ、良い冒険者を」


「ありがとうございます。おじ様の商売のご繁盛うぃお祈りしております」



そう挨拶を交わし、商人のおじさんは少し離れた受付に歩いて行った。

親切でいい人だなぁ。


そんなことを思っていると、次が俺たちの番になった。

結局、創作であるような『お前みたいな子供がこんな所に来るんじゃねえよ(笑)』みたいな絡まれ方はせず、杞憂に終わりそうだ。


そんなことを思ったのがいけなかったのか、ギルドの外から何やら騒がしい声がした。

そして、ギルドの扉が勢いよく開かれる。



「ここが王都の冒険者ギルドかぁ!? ショボい見た目の内装に、しけたツラした冒険者くずれと、冒険者様に頼るしかない依頼人しかいねえじゃねえか!!」


「ヘイロン、王都だってのにこんなしょっぺえのが冒険者ギルドだなんて、わざわざラドッグ共和国からリーサント王国に来る必要はなかったかもなぁ!!」


「その通りだぜ、カンコイ! ヘイロン、こんな国とっとと通過してイアス皇国にでも行こうぜ! あそこは美人が多いって有名だし、早く行きてえよ!」


「まあ待てよ、マイター。せっかくだ、この国のダンジョンを次々に攻略して、俺ら『殲滅の獅子』の名前を国中に轟かせてやろうぜ!! ナーシンもそれでいいよな?」


「俺もそれでいい。俺たちに歯向かう弱者を甚振れるならな……」


「そりゃいいな! この国の弱っちい奴らに、俺たちの実力を直接身体に刻んでやろうぜ!」



おいおい、なんか変なのが湧いてきたぞ?

話を聞く限り、外国から来た冒険者のようだが……かなり実力に自信があるようだ。


ただ、性格の方はとてもじゃないが褒められたものではない。



受付に並んでいた依頼人たちは突然現れた無頼漢に恐れをなして部屋の端へ下がっていき、酒場エリアで食事をしていた冒険者たちはピリついた雰囲気を出し始めた。


俺たちも他の依頼人と同じように部屋の端へ避難しようとする……のだが、少し遅かったらしい。



「おっ? なんか可愛い子がいるじゃねーか! ヘイロン! 今夜はあいつらにしようぜ!」


「はあ? マイター……お前の子供趣味には付き合ってらんねーよ。欲しいなら勝手に連れて来い。俺らは別のところで物色していくからよぉ」


「わかった、わかった、早くするって! おい、そこの帽子をかぶってる女ァ! 俺たちについて来い!」



マイターと呼ばれたシーフっぽい見た目の小柄な男は、マナリアを見ながら大声をあげる。



「えっ、わ、私ですか……?」


「そうだ! 痛い目見たくないならさっさと来い!!」


「そ、そんなこと言われても……」



急なことでマナリアは混乱しているようだ。

俺はマナリアを背にかばった。


すると、マナリアが俺の袖を握る。

その指先からは魔力が練り上げられてるのを感じる。

防御魔法か補助魔法か、何の魔法を使うかわからないが……マナリアは言いなりになるつもりは毛頭ないらしい。


そうでなくっちゃな……!

それに、こんな冒険者を放っておけないというのもある。



ちらりと、ギルド職員を見る。

職員は、応援を呼ぶのか静かにスタッフ用通路へ向かう人と、受付から出てきて仲裁しようとする人とで、対応が分かれている。

だが、仲裁しようとした男性職員は頭を掴まれ、持ち上げられ、ぶん投げられた。

男性職員は受付を通り越して、職員の机をなぎ倒し、ようやく止まった。


おいおいおい、ギルド職員にも容赦なしかよ……罰則が怖くないのか?

もしかして……何か、こいつらの裏に巨大な組織とかがついているのか?


いや、それは今考えてもわからないことだ……それよりも現状の打開策を考えよう。



入り口を四人に塞がれている状況なので、クイショスは応援を呼びに行けない。

これは……もしもの時は、無理してでも俺とクイショスで対処するしかないな……

仕方ない……と覚悟を決めた俺は、クイショスへ視線を向ける。

クイショスも同じ考えだったのか、うなずいてくれる。


そして、俺たちは二人の間に割り込もうとするが、その前に酒場エリアから声が上がる。



「おやおや、ラドッグ共和国の冒険者ってのはマナーのなってないガキみたいな男しかいないのか?」


「まったく、こっちは久しぶりの休みだってのに……こんなふざけた連中を野放しにするわけにはいかねえな」


「どうせ国に居場所がなくなって流れてきた粗暴者だろう。軽く一発入れてやりゃあ大人しくなるだろ」



同じテーブルで食事をしていた冒険者三人が立ち上がり、乱入者四人へと向かっていく。


しかし、四人はそれを眺めながらニヤニヤとした顔を崩さない。

ヘイロンと呼ばれていた大柄な男が、近づいてきた三人に話しかける。



「たしか……この国の冒険者ギルドでは、冒険者同士のいざこざには介入しないんだよなぁ?」


「そうだ。だが、お前らに詳しいルールを教えるつもりはない」


「あん?」


「お前らは俺たちに負けて、失意のまま国に帰るしかないってことだ!!」



三人のうち、剣士と思われる男がヘイロンという男の顔面を殴った。


あれは痛そうだ……と俺が思っていると……



「これがお前の全力かぁ……? 殴るってのはなぁ、こうやんだよぉ!!」


「なっ!? ぐぁッ!!」



なんと、ヘイロンは痛くもかゆくもないといった態度で、逆に剣士の男を殴り返した。

剣士の男は酒場エリアまでぶっ飛ばされて、テーブルに突っ込んで、動かなくなった。

どうやら、意識を失ったようだ。



この男……想像していた以上に強い。

あの態度は、調子に乗った冒険者の根拠のない自信からくるものではなく、裏打ちされた実力からくるものだったのか……



残された二人の男たちは、今のを見て足がすくんでしまったみたいで、ぶるぶると震えだした。

それを見たヘイロンは大笑いする。



「はっ!! こいつらビビッてやがんぜ、なっさけねぇ!!」


「ヘイロン、こんな奴ら放っておいてもう行こうぜ」


「そうだな、カンコイ。おいマイター、連れてくるなら早くしろよ」


「わぁってるよ、ヘイロン。おい、そこの女! さっさと来い!!」


「ひぃっ!!」



マイターがマナリアへ近づいてくる。


俺とクイショスが間に入り、魔力を練り上げて空間魔法で拘束しようとした……その直前、マイターの動きが止まる。


なんだ?

俺たちが不思議がって、マイターをよく見ると……全身が霜に覆われている。


これは、強力な氷魔法でマイターを凍らせたのか……?




疑問に思っていると、ギルドの入り口から声が聞こえた。





「これは、どういう騒ぎだ? 客を脅す連中を、なぜ放置している? ここには、それを止める力もないのか? 答えろ」











男どもを左右へ退かせながら入ってきたのは……『ときクラ』でマナリアを独占欲で監禁した男。


第三攻略対象者『ヴィクトール・キラーテ』、その人だった。









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