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第17話 はじまりの洞窟〜最下層ボス攻略〜



護衛騎士の方々のおかげで、俺は神の褒美をもらわずに人位下級・一段のまま、最下層まで来れた。




そして今、俺たちは階層ボスのいる大部屋に入り、ビッグスライムを目の当たりにした。





いや、デッッッッカ!


重力で横に広がっているが半径で3メートルはあるぞ。

ときクラのバトルシステムは、昔ながらの2Dドット絵のターン制RPGで、洞窟の背景の真ん中にドンとボスキャラ画像が置かれてただけだから大きさがわかってなかった……


ビッグスライムまでまだ距離があるから動かないが、威圧感がすごい。


俺がそんなビッグスライムにビビってると、ミハエルが気遣って提案してくる。




「アンナリーゼ嬢、無理なら一旦引き返してもいいんだよ? 女の子がいきなり……それに階位も低いのに階層ボスと一人で戦うのは危険でもあるのだから」


「いえ、大丈夫です。ご心配おかけしました……わたくしなら問題ないので、すぐに倒してみせます」


「それならいいのだけれど……無理そうなら介入して一度撤退するからね」


「はい、御心遣いありがとう存じます」





思いっきり心配かけてしまった。


最初の段階でつまずいてどうする、俺……!


これから主人公のマナリアをヤンデレ攻略対象者から守りつつ、できれば攻略対象者も病まないようカバーして、帝国と邪教、更に魔王の対応までしなきゃならないんだ。

グズグズしてられない……気合を入れるぞ!



頬をパチンと両手で叩き気合を入れ、ボスを倒すために集中する。


魔物の人間に対する行動開始範囲は、魔物のランクによって大体決まっている。

Fランクならおよそ10メートル前後だ。


警戒範囲はもっと広いけどね。



俺は魔力を練り上げ、いくらかを身体強化魔法に使い、残りを空間魔法としていつでも放てるように準備し……俺の攻撃可能範囲まで近づく。


空間魔法は授かったばかりなのと属性魔素の副作用で、まだ風魔法のように正確かつ広範囲に展開できない……精度を考えると、丁度Fランクの魔物と同じ10メートル程度は近づかないと核を一撃で破壊するのは難しい。


ジリジリと近づき、もう少し……と思って約10メートルに差し掛かったところでビッグスライムが動き出した。


くっ……奴の行動範囲の方が広かったか!



こちらに向かって粘液を飛ばしてくる。



咄嗟に左へ飛び、回避する。

身体強化しておいてよかった……


スライムに顔があるのかわからないが、移動した俺の方に顔を向けてまた粘液を飛ばそうとしてる気がした。



そうはさせるか……!

俺は残していた魔力を使い空間魔法を放つ。



「空間削除!」



そのまんまな魔法名を叫び、魔力が魔法へと変換され放たれる。

糸状に指定した空間が、重なった空間にある物を消しながらビッグスライムへ移動する。


その速度は、風属性魔素の副作用のおかげもあってそれなりに速い。

それなりなのは、風魔法とは使い勝手が全然違うのでもっと訓練しないと速くできないのだ。


でも避けられるのは、戦闘センスが磨かれている中級以上の冒険者や、中ランク以上の魔物くらいだろう。


糸状の空間魔法はビッグスライムの核と重なるように通過し、核が半分に分かれていく。



そしてビッグスライムの分かれた核が魔石へと変化し、粘液の身体が崩れて魔石へと収束していく。

どうやら無事に倒せたようだ。





振り返ってミハエルたちを見ると、笑顔で拍手してくれていた。



「おめでとう、アンナリーゼ嬢。魔装具を回収できるのも嬉しいが、まずは魔物を初めて倒したことを祝福しよう」


「ありがとう存じます、ミハエル殿下」




そうか、そういや初めて魔物を倒したのか……道中はずっと魔物と戦えないことを気にしてたのに、いざ一人で魔物を目の前にすると頭から抜けてたよ。



魔石へ瘴気が収束し終えると、俺の身体に力がみなぎってきた。


これが神の褒美……レベルアップか。


体内の魔素も回復してるし、心なしか魔法の威力が上がった気がするぞ。

俺の魔力出力量は変わってないっぽいが、世界への影響力が増した実感がある。


これを繰り返せば更に強く……レベルアップ恐るべし。

きっと、俺の幼少期の魔力消費訓練なんかとは比べ物にならないくらい強くなれるぞ。



お茶会などの社交会よりも、ダンジョン探索のレベルアップを優先したいくらいだ。



そんな初めてのレベルアップでハイになっていた俺にミハエルが注意する。



「アンナリーゼ嬢、喜びに打ち震えているところ悪いが、魔装具の回収に行こう」


「ハッ! ……申し訳ありません、ミハエル殿下。つい夢中になっておりました」


「いいよ。僕も初めて神の褒美をいただいた時は年甲斐もなくはしゃいじゃったからね」



いや、君もまだ十歳でしょ。


俺なんて前世を含めたら三十代なのに、それこそ年甲斐もなくはしゃいじゃったぞ。

普通に恥ずかしい……


それにしても、王族の教育では十歳になったら感情を殺す訓練でもやるのだろうか……確かに貴族は感情を表に出すのを避けないといけない風潮があるが、流石に十歳の子供にそこまで求めてないだろう。



それはそれとして、魔装具だ。



「それでは、転移魔法陣のある最奥の間に行きましょう。すでに魔装具のある部屋への通路ができてるはずです」




最下層ボスを倒した俺が先頭になり、奥へ進む。



そしてゲームでもよく見た、最奥の間へと入る。

転移魔法陣が周囲の魔素を取り込んで光っている。

いつでも転移できますよって感じだ。


だが、今は用はない……俺はその先にあるぽっかり開いた通路を指さす。




「見てください。通路が新たにできています」


「本当だ……これは僕たちも通って大丈夫なのかな?」


「そうですね……『ゲーム』ではパーティー全員で入っていたので問題ないかと」


「それでは遠慮なく……アンナリーゼ嬢、早く行こう。メイループ、ボスの部屋へ戻り見張りをしてくれ」


「はっ! かしこまりました」



五階層での確認で質問してくれた護衛騎士のメイループさんが急いでボス部屋へ戻っていく。

俺たちも早くしなきゃ。



「それでは参りましょう」



転移魔法陣を迂回して、奥の通路へ進む。


5メートルほどの通路を進むと、台座のある小部屋に出た。

これもときクラと同じだな。


俺は台座にある魔装具を取り、ミハエルへ見せる。



「見てくださいミハエル殿下、これが隠し魔装具です」


「ふむ、見た目は普通のネックレスだね……まあ今はいいか。部屋を見ても特に何もないし、すぐに戻ろう」


「承知しました、殿下」




小部屋の壁や台座を軽く調べてた護衛騎士の二人が、ミハエルの命令で調査を中断し一緒に小部屋を出る。




最奥の間に全員戻ると、小部屋への通路がみるみる埋まっていき……最後には継ぎ目さえ無くキレイな壁になった。


うーん……不思議パワーだ。



護衛騎士の一人がメイループさんを呼びにボス部屋へ行き、すぐに連れて戻ってきた。




「よし、みんな問題ないね。それでは転移魔法陣で入口に戻ろう」




ミハエルの言葉に合わせて皆が魔法陣に乗る。


すると眩しく魔法陣が光る。


そして一瞬で景色が変わった。

なんと俺たちはダンジョン入口の前に立っていた。


転移魔法陣すごいな……まばたきする間に戻ってきたよ。




そんな感慨にふけっていると、ミハエルが話しかけてきた。



「アンナリーゼ嬢、ここは邪魔になるから一旦移動しよう。メイループ、御者の手配を」


「はっ! かしこまりました」



メイループさんが走って馬車の停車場へ向かう。



俺たちは広場へ移動し、馬車を待ちながら小声で話す。



「アンナリーゼ嬢……例の平民専用の魔装具のあるダンジョンのランクは判明してるんだよね?」



ミハエルは、一応離れてるとはいえ人がいるので言葉をぼかして小声で聞いてきた。



「はい、Cランクのダンジョンです。以前申し上げた通り今はまだ未発見なのですが、後に『宵闇の古代都市』と呼ばれてました。様々なゴーレムが出現するダンジョンで剣のような物理攻撃は効きにくいですね」


「Cランクか……流石に護衛騎士三名では心もとないな。ダンジョンに行くまでに、適正の高そうな追加の護衛騎士と宮廷魔法師を手配しておくよ」


「はい、ミハエル殿下。よろしくお願いします」


「それでは馬車も来たようだし王都へ帰ろう。もうお昼時だし、鑑定師のところに行くのはランチを済ませてからだね」




王族が利用する飲食店でランチか……緊張で味が分からなくなりそうだ。





そんな事を思いながら馬車に乗って、王都への道を気持ち速めに進むのであった。



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