第15話 ミハエルと世界談義~後編~
ミハエルとの談義は続く。
次は人間が持つ魔法の適正について。
まずは髪の色、これには魔法の属性色が現れる。
火とか水みたいな属性のことだな。
髪の色は
火属性:赤色
水属性:青色
風属性:緑色
土属性:茶色
氷属性:水色
雷属性:紫色
光属性:金色
闇属性:黒色
無属性:白色
雷が紫なのは紫電がイメージされたのかもしれない。
人によって髪の色には明るい暗いが出るが、基本的に髪色が二色以上になることはないし、複数属性の中間色になることもない。
一人一属性が原則だ。
例外は『聖女』のギフトを授かった女性のみで、元々持っていた属性の髪色に光属性の金色が混ざるのだ。
ちなみに無属性の魔法は前に述べた『身体強化魔法』の他に、俺が授かった『空間魔法』や『時間操作魔法』もある。
ただし、空間魔法も時間操作魔法も、授けの儀で固有魔法を貰わないと使えない特別な無属性魔法なのだ。
ついでに言うと髪色に変化は無い。
無属性魔法は『誰でも使える魔法』なので使う魔素を選ばないから、元々の俺の属性である風属性の魔素で十分ということだろう。
もちろん副作用は健在だが……
そして俺は空間魔法全般を使えるが、固有魔法として『空間転移魔法』を授かった人に比べると魔力消費効率や効果が段違いで低い。
広く浅く、狭く深く、のどちらかになるわけだな。
次に目の色、これは得意な系統色が現れる。
系統とは魔法の作用の分類で、『移動・固定・振動・流動・停止・集中・拡散・収束・結合』などがある。
色は以下の通りだ。
振動:赤色
流動:青色
移動:緑色
固定:茶色
停止:水色
集中:紫色
拡散:金色
収束:黒色
結合:灰色
似ている作用があるが、細かい部分で違いがある。
固定と停止は、強固に固まるのが固定で、動かなくなるのが停止。
停止は魔素同士の結びつきが固定されないので壁を作るような防御には不向き……みたいな違いが出る。
収束と集中なんかは……一点に集めるのが得意なタイプが収束で、一方向に集められるのが集中だ。
例えば闇属性なら『引力』の力を利用できるのが収束で、星の引力を使い重力を何倍にも変化させて相手を動けなくしたりできる。
集中は光魔法のレーザービーム……って感じかな。
俺の得意系統は、目が緑色なので『移動』系統の魔法が得意だ。
そういや空間魔法の訓練は薄い面を作ることを目標にしていたが、糸状の空間を移動させながら削除を同時に行えば……うん、こちらの方がコスパが良いかもしれないな、場合によりけりではあるが。
それにしても地球ではもっと色々な物理作用が定義されていたが……ときクラでは神様の数と合わせるために少なくしたのかもしれない。
ミハエルに地球で発見されている物理現象について少し話すと、興味津々で聞いていた。
やっぱりこういう学問が好きなんだな。
地球に生まれていれば、大学院を出て研究者になっていたかもしれない。
最後に目の紋様、これは授けの儀で固有魔法を授かると現れる。
基本は片目に現れるが、固有魔法を複数授かった場合などは両目に現れるし、強力なほど複雑な紋様になる。
俺みたいに広く浅くタイプのギフトだと、紋様が現れることは稀だな。
魔法を使う時は、体内で生成される魔素『人造魔素』を魔力へと練り上げる。
パズルのピースみたいにピッタリハマれば少ない魔力で魔法を使える。
魔力の形がいびつだとパズルの枠内に隙間が出て魔法が発動しない。
ムキになっていびつなまま魔法を使うと隙間を埋めるために多くの魔力が必要になり、消費量が多くなる。
なので魔力を練る訓練は幼少のころから始める貴族は多い。
しかしかなり感覚的な話なので、人によっては体内の魔素を把握できず、魔力を練られるまで数年かかる子供もいる。
平民の子どもは運が良いと魔法を教えてくれる冒険者などに出会えるが、ほとんど独学で魔力を練られるようになる場合が多い。
ただし、そんな才能のある子どもは千人に一人、さらに魔力量や出力量が貴族並みに多い才能のある子どもは…一万人に一人いるかいないかくらいだろう。
ちなみに、鉱山から取れる魔宝石は魔力を貯められるし武器にも使われるのは先ほど話したが、純度が高く高級な魔宝石ほど多くの魔力を貯めることができるし、高速で魔力を練れるようになる。
高位貴族はいくつも魔力貯蔵用の高級魔法石を持ち歩いており、一般的に指輪や腕輪、ネックレスなんかにして身に着けてることが多い。
そんな便利な魔法石だが、そもそも他の人の魔力は使えないので他人から借りる……なんてことはできないので注意が必要だ。
例外は無属性のライバル令嬢だけだな。
彼女はその特性で色々やらかしてくれるんだが……その話は後にしよう。
そしてみんなが気になる『神の褒美』ついて。
神の眷属が人と魔物の魔力の流れを感知してどれくらい貢献したかを判断し、一定以上貢献したと判断されたら貢献値が貯まり、貢献値が一定以上貯まると褒美を授かることができると言われている。
褒美は授かる度に必要な貢献値が増していくので、いわゆる高レベルの人はほとんどいない。
ちなみに神の褒美を貰った回数は現代で言えばレベルだし、ときクラのゲームでもステータス画面ではレベル表記だった。
しかし、この世界では神貢階位と呼ばれていて階位は十の位に分かれており、更にそこから段位が十も存在する。
単純にレベル表記でよくない? と思うが日本にも位階が採用されてた時代があるので、それを真似て『ときクラらしさ』を出したかったのかもしれない。
面倒な……
階位は最高神の光の神ミスラと基本属性の四柱に基づき五つの基準が設けられ、それが各階位で上下二つに分かれている。
具体的には、上の方から
第一階位:光位上級・光位下級
第二階位:天位上級・天位下級
第三階位:空位上級・空位下級
第四階位:地位上級・地位下級
第五階位:人位上級・人位下級
となっている。
人に始まり、天空地があり、最も尊い光が最上だ。
段位はそのまま一段から十段まである。
今の自分は『人位下級・一段』、現代で言うとレベル1だ。
これがレベル12になると『人位上級・二段』になる。
現在の人類の最高階位は、宮廷魔法師団団長の天位下級・三段だったはずだ。
勇魔大戦のころにいた勇者は光位まで行ったと聞くが、それ以降のここ数百年は光位まで行った人はいないと聞く。
……やっぱり普通にレベル表記の方が楽だって。
お偉いさんは肩書を重視したがるからそのせいなのかな……まあ、この国は名前に肩書を大量に入れるタイプじゃなくてよかったよ。
長ったらしい名前だと、俺じゃあ派閥内の貴族の名前さえ覚えられないからな……
そこから、更に使える魔法によって称号が付与される。
国が設けた要件を満たすことで、その人の使える魔法と合う魔宝石にちなんだ称号がもらえるわけだ。
例えば火力を求めた火属性の攻撃魔法なら
対人高位魔法を放てる者は『ウンテンルビー』
対軍高位魔法を放てる場合は『ミッテルビー』
対城高位魔法の場合は『オーベンルビー』
他に防御魔法や補助魔法によってガーネット、カーネリアン、サンストーンなんかもある。
実は、金属や宝石類は地球のものと同じ名前と見た目をしている。
そして魔物の見た目や名前も、スライムやゴブリンなど地球と同じだ。
これについては……ときクラのファンタジー設定がこちらの世界に影響したのか、俺と同じ転生者が過去にいて広めたのか、判断がつかない。
まあ、分からないことは置いておこう。
称号の話だったな。
例えば、トロスベリ公爵令嬢なんかはギフトとして『固有魔法インフェルノ』を授かったので、ミッテルビーのトロスベリと呼ばれるだろう。
階位と合わせると、式典などの公の場では『ムイアリークス公爵家、人為下級・一段 ミッテルビーのトロスベリ・ムイアリークス』と名乗ることになる。
そして普段の社交会、俺なら同じ派閥のご令嬢とのお茶会などがあるが……階位や称号が更新されたら報告しあうのが通例だ。
ただし段位の上昇についてはお茶会で報告しなくてもいい。日常会話で済ませる程度だ。
社交界で報告するのは人位下級から人位上級に上がった時などの『階級』が上がった場合で、俺みたいな貴族の女性は自分でお茶会を開いて派閥仲間に報告して祝ってもらう感じになる。
もちろん派閥のトップのお偉いさんにも報告は忘れない。
称号と言えば、冒険者にもランクと二つ名が付けられている。
もちろんクランも存在する。
この辺は地球にいたころの創作物でよく見た形式だな。
まず冒険者ギルドが国をまたいで世界中に存在する。
その国や地域によって多少差はあるが、冒険者にはある程度の基準がある。
ランクは上から
Sランク:世界を救うレベルの英雄。
Aランク:竜種などを単独で撃破できる一部の強者。
Bランク:冒険者の中ではベテラン。信頼があり大型の魔物をパーティーで相手にする。
Cランク:中ランクの魔物をパーティーで倒せる中級者。
Dランク:低ランクの魔物を安定して倒せるようになり、初心者から抜け出した冒険者。ここまで上がってようやく一人前に認められる。
Eランク:採取依頼に慣れて討伐を行い始める初心者。
Fランク:登録したばかりの駆け出し冒険者。薬草などの採取依頼を主に行う。
なんでレベルは階位で表すのにランクはアルファベットなの? と思うだろう。
これは単純にこちらの文字体系がアルファベットと似ているので俺が該当する文字を当てはめているだけだ。
まあ、ときクラでは普通にアルファベットだったけどな。
そして冒険者をやるなら最低限文字は覚えてないと依頼票も読めないので、冒険者になりに来る奴は読み書きが多少できる。
これは国が寺子屋のような教育施設を各地に作ったので、一般的な平民は簡単な読み書き、足し算、引き算ができるのだ。
なので、みんなが知ってる文字でランク分けしたらしい。
金属をランク名にする案もあったらしいが、国が設けた魔法使いの称号と似てしまうので文字でランク分けする方を採用したのだとか。
クラン名や二つ名は、各々勝手に決めている。
ただしクランの方は冒険者ギルドに申請が必要だ。
二つ名は自称して広める場合と、周りから勝手に呼ばれて広まる場合の二種類がある。
それと、ダンジョンも冒険者ギルドによってランク分けされている。
ランクは冒険者のランクと同じでS〜Fまで存在しており、はじまりの洞窟はFランクだな。
ダンジョンは瘴気がある程度溜まりやすい場所に偶発的に出現するので、国が各地域の見回りを行い、冒険者ギルドが見つけた内部を調査する仕組みになっている。
ここで重要なのが神の眷属の『精霊』についてだ。
神の眷属の中には精霊を使役するものがおり、精霊と親和性が高い人間がたまに生まれるのだ。
その生まれた者は属性色の髪色が銀色のように輝いている。
あくまで銀色ではなく属性色が銀色のように輝いているのであり、二つの属性を持ってるわけではないので注意してほしい。
それでこの精霊と親和性が高い人は、精霊からダンジョンが生まれた場所を教えてもらえるんだと。
いわゆる精霊ネットワークのようなものが存在しているらしく……各地の精霊が得た情報を眷属が統括し、必要な情報を各精霊に伝えているという仕組みらしい。
なので銀色に輝く髪を持って生まれた子は、聖女と同様に国から保護される。
精霊魔法も扱えるので国からしたら喉から手が出るほど貴重な存在なんだろうな。
ここまで話して、大体は知識の確認はできたかな?
と思ったので意見を聞いてみた。
「この世界について、『乙女ゲーム』での知識は基本的には僕の知識とそこまで差はなさそうだね……でも君のいた世界の技術や知識は、こちらと比べてかなり進んでいるようだ。それに創作の中で出る魔物の名前までこちらで実在するものと同じなのは、君が言う『転生者』が広めたのか別の要因なのか気になるね……考えることは多そうだ」
ミハエルは俺のあやふやな知識も含めて真剣に悩んでいる。
うーん……やはりミハエルは王族として生きるよりも学者の方が向いてそうだな、と思っていたら外から声がかけられる。
「殿下、はじまりの洞窟前の広場に着きました」
どうやら話し込んでる間にかなり時間が経過していたようだ。
それにしても、ついに人生初のダンジョンか……楽しみでもあるが不安でもあるな。




