第14話 ミハエルと世界談義~前編~
俺がいた世界から見たこの世界の魔法や神様の知識について、議論を交わしたいとお願いされた。
どうやら異世界の知識と自分の知識の比較をしたいらしい。
快諾したはいいが、俺は何から話すか悩む。
ゲームの内容で、この世界と知識で差が出る箇所なんてあったかな……
そんな俺を見て、ミハエルは自分からこの世界での知識について話しだした。
「まず、僕が学んだ知識と、君の知識に違いがあるか確認しようか」
まず、この世界の名は『ル・テーラ』。
そしてル・テーラは人間が住む世界であり、神のみが住む世界が『ド・ガルアス』である。
なんとなく、地球にいたころに聞いた単語に似ている気がする……とは思っていたが、外国語には詳しくないので深くは考えていなかった。
ときクラは具体的に何かをモチーフにしたゲームという話も聞いたことなかったしな。
それで、ド・ガルアスには神様が九柱いて、人間界を見守りながら世界の法則を担っている。
最高神であり、光の神である『ミスラ』
火の神『アグニ』
水の神『オーケアニス』
風の神『アイオロス』
土の神『エンキ』
氷の神『モラーナ』
雷の神『タラニス』
闇の神『ノート』
無の神『カオス』
世界は最初『無』だったが、光の神ミスラが世界を照らし『無』が『有』となったところから始まる。
ミスラは照らし方により『有』から7つの属性を見出した。
それが『火・水・風・土・氷・雷・闇』であり、そこに『光』とまだ照らされていない『無』が加わり、九の属性が生まれた。
『無』は自分の一部が『有』となることで、意思が生まれ『有』のための無属性の特別な魔素を生み出し続けた。
そして光と無以外の属性は長い時間をかけて意思が生まれ、やがて法則を操る神となった。
神々の名前は地球にいた頃、いくつか聞いたことがある。
海外の神々の名前を引用したのかもしれない。
カオスは混沌の意味が強い印象を持つが、『全てが始まる前の虚空』の意味もあるらしいのでそこから来たのかな。
『火・水・風・土』が基本属性、『氷・雷・闇』が上位属性で『光』は最上属性と言われている。
光属性は王族と聖女のみが扱える。
重要なのが『無』属性で、この属性は『原初属性』と言われており、人間が使う魔法での意味と、神が扱う世界の法則で意味が違う。
まず、人間の使う魔法で無属性と言えば『身体強化魔法』が挙げられる。
どの属性の人間も身体強化魔法は扱えるのだ。
しかし人間が生み出す魔素が属性を持つがゆえに、無属性魔法を扱うと副作用が起きる。
具体的な例をあげるなら……火属性の人間が過度に身体強化を行うと、熱を発し始めるのだ。
そんな副作用が各属性で起きる……例外は無属性の人間のみなんだよね。
そして、神が扱う『世界の法則』での無属性の意味について。
先ほど述べた特別な魔素、これはこの世界を構成している原子のような特別な魔素『神創魔素』であり、生み出しているのが無属性の神『カオス』なのだと言う。
無属性の神が生み出した神創魔素を他の神が使い、それぞれの属性の物質や法則を生み出している。
ただし最高神で光の神の『ミスラ』は独自に神創魔素を作れるが、他の神はその魔素を操れない。
ちなみに、現在までに確認されている無属性の人間は二人しかおらず、一人は数百年も過去の勇魔大戦の時に勇者パーティーの一員として存在していたとされる女魔法使い。
もう一人は現在俺と同じ十歳で……ときクラではライバル令嬢として登場していたキャラだ。
見た目は真っ白な長髪と灰色の瞳で、性格は少し内気な普通の少女。
学園に入れば関わることになるだろう。
世界は光の神ミスラの出現で始まり、無属性の神カオスが生み出した神創魔素によって構成されているのは分かってもらえたと思うが、実は無属性の神カオスは他にも活躍している。
それが『ダンジョン』だ。
ダンジョンとはカオスが造った『瘴気を隔離するために空間魔法によって生まれた特殊空間』であり、なるべくダンジョン内でのみ魔物が生まれるよう眷属と一緒に調整してくれている。
瘴気は闇の神が生み出してしまった生物、人間から『魔王』と呼ばれる存在が生み出している。
その魔王を大昔に神々が力を合わせ、どうにか星の中心に封印することができたのだ。
しかし封印は完璧ではなく、瘴気が漏れ出してしまう。
その瘴気は地表へとせり上がってきていて、そのまま放っておくと瘴気が収束してあちこちで魔物が生まれる……
そんな神出鬼没に魔物が現れてしまうと人間がまともに生活できない……なので空間を隔離してダンジョンでまとめて人間に倒してもらいやすくしているんだとか。
そしてダンジョンは二つの種類に分類される。
固定型ダンジョンと消滅型ダンジョンだ。
固定型は最下層ボスを倒してもダンジョンがなくならない。常に瘴気が溜まりやすい土地なので無属性の神が維持している。
消滅型は無属性の神の眷属が、瘴気がそこまで溜まりやすくない土地に一定以上瘴気が溜まりそうになると生成する。
固定型と違い、最下層ボス倒してしばらく経過すると消滅する。
ダンジョン消滅時に中にいる人間は、ダンジョン入口付近に転移させられるのだが……ダンジョンと一緒に消滅しなくて済むのだから神の眷属に感謝しないとな。
そんなダンジョンで魔物を倒すと魔石が手に入る。
しかし魔石は瘴気で汚染されてるので、王族や聖女などが浄化することで初めて利用可能なエネルギーとして使うことができるのだ。
なので王族は、即位できた国王以外が日夜魔石の浄化を行っている。
ミハエルも国王になれなければ、魔石の浄化作業に一生を費やすことになる。
幸運なのか不運なのか、直系の子どもは光属性の適正を受け継ぐ可能性があるので、公爵家に光属性の子が生まれることも望まれている。
でも、光属性に生まれた公爵家の子どもも一生魔石の浄化を義務付けられるので、自由とは無縁の人生になる。
トロスベリ公爵令嬢のように別の属性を発現させた場合は、特に決まりはないので他の貴族と政略結婚することが多い……というか貴族そのものが人生に自由がないな。
その分恩恵はあるけれど……俺もそのうち政略結婚させられるんだよな。
……家を出て冒険者にでもなろうかな。
ちなみに魔石は魔物から得られる物で、魔鉱石は鉱山などから採掘される『魔力を通す鉱石』、魔宝石は『魔力を貯められる鉱石』である。
魔鉱石は近接武器や防具の素材に使われることが多い。
そして、貴族や冒険者は魔力切れを起こした時の保険に魔宝石を所持しているが、武器にも使われることがある。
よく魔法使いの杖に使われる魔宝石が代表的な例で、魔力を込めると自動で魔法に変換しやすい形の魔力に練り直してくれるのだ。
だから消費魔力が抑えられるし、魔法を放つ速度も上がるのだとか。
ただし、魔鉱石や魔宝石にはそれぞれ適正があるので、同じ属性の魔鉱石や魔宝石を複数用意して、どれが自分の魔法に合うのか確認するのが授けの儀のあとの恒例行事になっている。
ここまでお互いの知識を確認して、俺たちは一旦お茶を飲み一息入れる。
「世界の成り立ちや王族の責務については特に差はないね……ただ、こちらの世界の神々の名前が君がいた世界に別々の宗教として存在するのは驚いたよ。まあ、僕達の人生が異世界で物語になっていると聞いた時から驚きっぱなしだけれど……それじゃ次は魔法についてもっと詳しく話そうか」
「はい、殿下」
なんか楽しそうだな、ミハエル……こういう学問が好きなのかな。




