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第11話 知識の共有


ボロが出る前に話を終えるために、さっさと受け答えを済ませよう。


まず、前世が異世界の庶民だったことについては、もう説明しないと納得されないだろう。

あとゲーム機やパソコンは、電気を使った娯楽用魔道具の類似品という例えにしたら理解してもらえるか……?

この世界が何故ときクラの内容と同じなのか、それは俺も知らないから説明はしなくていいな……というか俺、転生した理由も知らないし。

ときクラに憤慨してた、くらいしか理由がないぞ。


とにかく異世界と魔道具の説明をした後は物語全体の流れを説明して、この知識が真実だという証明のために『はじまりの洞窟』の隠し魔装具を一緒に取りに行く。

これで行こう。

細かい点を聞かれたらなるべき正直に、でも深くは知らない事をアピールだ。




「殿下の疑念に答えるには少し説明が難しいのですが……わたくしの前世はこの世界ではなく、異世界の庶民でした」


「異世界……?」


「はい、神様や魔法の無い世界でした……魔物や魔王もいません。近代までは魔法の使えない庶民のような生活が一般的でした。しかし新しい技術が次々に開発され、電気を用いた魔道具のようなものにより生活は激変し、場合によってはこの国の貴族でも体験したことのないような贅沢な暮らしを庶民がするような世界でした」


「にわかには信じがたい話だね……その電気を用いた魔道具を君は作れるのかい?」


「いえ、わたくしは売られている道具を使っていただけで原理は知りません。ただ、初歩的な技術やこの国の貴族が学ぶような学問は義務教育として学びました。そして使っていた道具の中に、仕事から娯楽まで様々な事柄に使える魔道具がありまして……わたくしはその魔道具の娯楽機能でリーサント王国の物語を知ったのです」


「電気の魔道具には興味があるから、初歩的な技術などと一緒にまた今度話を聞きたいな……それで娯楽機能というのは?」


「例えるなら紙芝居や人形劇ですね。授けの儀で使っていたような板の魔道具に絵が描かれて、場面に応じて保存してある様々な人の声や音を流すことで、臨場感のある物語を楽しめるようになっていました。重要な場面での行動を選択肢で変えられてボタンで選べるようになっており、その結果として先ほど申し上げたいろいろな物語の結末を劇場に行くことも多くの本を店で探すこともなく魔道具一つで楽しめるようになっていたわけです」


「一つの魔道具で様々な物語を楽しむ、か……それができたら貴族には人気が出そうだ。それで、我が国リーサント王国の、私たちの物語はどんなものだったんだい?」


「聖女のギフトを授かる平民の少女が貴族の殿方たちと恋愛をする、というのは説明いたしましたが……物語は主に王立リクドン魔法学園に少女が特待生として入学するところから始まります」


「学園か……確かに同年代の貴族と知り合うのなら、大勢の貴族子息子女が集まる学園はうってつけだね。それで?」


「その学園で何人かの貴族の子息と仲良くなり、一緒に学園の行事『ダンジョン探索』で地道に神の褒美をもらっていきます。そして一学年の間に実力を一定以上身に着けることで、陛下の病気……実はイルウス帝国の呪術によるものなのですが、そちらを完全に癒します。その後は二学年になると、邪教『ダークマキン』に浸食されていた帝国の悪事を防いでいくことになります。三学年になると帝国と戦争をすることになり、戦争に勝利した後は背後にいる邪教によって解放された魔王を……聖女と神々の総力を挙げることで打ち倒すことに成功します。この時、聖女は愛の力によって聖女としての力を全力で発揮するので、殿方との恋愛が重要になります……魔王を倒した後は愛した殿方と一緒に暮らすことで物語が終わります」


「ふーむ……イルウス帝国か、確かに近年よくない噂を聞くようになっているね。それに邪教の存在は王家でも確認している……中々しっぽを出さなくて手を焼いているがね」


「学園の期間内に起こる事柄は覚えていますので、事前に対応することも可能かもしれませんが……その影響で本来の物語から変わってしまう危険があります」


「それは当然だね、かつてギフトで予知を授かった貴族がいた時も直近の予知内容を覆したことで、それ以前に見ていた予知が意味をなさなくなったケースがあったよ。それに、今僕に話してることですでに変化が出ているだろうね」


「……あの、殿下はわたくしの話を信じてくださるのですか? 荒唐無稽な妄想だと思われても仕方ないと覚悟していたのですが」


「確かに、まだ君が偶然見た夢や妄想の可能性はある……でもね、僕だって派閥ができるくらいには大勢の貴族たちを見てきたんだ。誠実な人間と見極めた人を無碍にはしないよ。それに僕にこの話を持ってきたという事は何か証明する手段があるのだろう? それに協力するよ」


「あ、ありがとう存じます」




なんか思っていた以上に高い評価を受けているみたいだ。

というか本当に十歳か?

前世含めた俺より頭も良くて器も大きいのでは?

お父様なんか頭が追い付いてなくて目を白黒させてるぞ。


ここから学園が始まるまでに何かあるのかな……学園が始まる前の情報は過去の回想シーンで知ること以外はあまり知らないんだよな。

こんなことなら設定資料集でも読んどくんだった。


まあ、今は俺の前世知識の証明についてしっかり説明しないとな。




「それでは、わたくしの知識が真実である証明として……初心者ダンジョンの『はじまりの洞窟』に隠された魔装具、古代のアーティファクトを回収しに行きましょう」


「あのダンジョンに隠された魔装具が……? 確かに今まで誰も見つけてない魔装具が、それも古代のアーティファクトであるなら……君の知識が本物であると認めるべきだろうね」


「殿下、ダンジョンに隠された魔装具はそれ以外にもあります。各地のダンジョンには最低一個、場合によっては複数存在し、それ以外にも階層ボスの倒し方によって得られる魔装具もあります」


「そうか……とりあえずは、はじまりの洞窟で隠された魔装具を回収して、それを鑑定師に見てもらう。それが古代のアーティファクトならば、君の知識を全面的に認めて『聖女』のギフトを授かる平民を保護しよう」


「ありがとう存じます。聖女の平民は今月の下旬に授けの儀を行うようですので、その前に保護をすることをお勧めします。聖女だと周知されれば、第一王子と第二王子による取り合いになると思われますので……」


「わかった、それなら週が明けたらすぐにはじまりの洞窟へ向かおう。その日の内に鑑定師に観てもらい、結果が出たら僕の派閥の司祭に授けの儀の用意をさせて……翌日には聖女の平民がいる孤児院へ訪れて保護しよう」


「それが良いかと存じます。それと聖女の平民はギフトを授かっただけでは陛下の解呪を行えません。王家管轄の禁止区域にある未発見ダンジョンの特別な魔装具を身につけるか、地道にダンジョンを攻略して神の褒美をある程度もらわなければ解呪できないと思われます」


「そうか……すぐに解呪できるわけではないんだね……禁止区域の未発見ダンジョンは聖女を保護したあとにどうするか決めようか、まだ君の知識が本物か分からないしね」


「はい、話を聞いていただけるだけで、わたくしにはありがたく思います」


「それじゃあダンジョンへ行くために僕は早速必要な公務を終わらせて、予定の調整を行うことにするよ。君たちも準備しておいてね」






そんな訳で一度解散となり、ミハエルとはじまりの洞窟へ行くことが確定した。

順調に行けば主人公ちゃんも保護してもらえるし、最低限の目標は達成したと思う。


ゲームの知識が完全にそのまま使えるかは検証不足だが……主人公ちゃんの授けの儀まであまり余裕がないからな、信じて準備だけは済ませておこう。

ダンジョンへ潜るための装備集めと空間魔法の訓練、そして主人公ちゃんがいる孤児院の下見をやっておくか。






それと隣で笑顔のまま怒っているお父様をなだめて詳しく説明するのもな……うぅ、気が重い。






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