7.必殺技
目を切られてのたうち回るオオカミが、
咆哮を上げながら再度だいちゃんに飛びかかってきた。
おそらく、こいつが群れのリーダーなのだろう。
残りの二匹は「手出しは無用だ」とでも言わんばかりに、
行儀よくお座りして戦いを傍観している。
「いくぞぉ! 必殺!! 『ダイレクトアタック!!』」
だいちゃんが叫んだ瞬間、私の右腕が勝手に跳ね上がった。
そして――。
ブォンッ!!
「ええええええええ!?」
私の意思を完全に無視して、右腕がだいちゃんをオオカミ目がけて全力投球したのだ。
投げられただいちゃんは、空中でくるくると回転し……。
ドォーン!!
まるで砲弾のような衝撃音。
だいちゃんの持つミニマムな剣が、吸い込まれるようにオオカミの眉間へ突き刺さった。
巨体はそのままピクリとも動かなくなり、森に静寂が戻る。
「……倒し、ちゃった」
呆然とする私の足元へ、だいちゃんが「ぴょん、ぴょん」と軽快に跳ねながら戻ってきた。
そして、私の右手に慣れた様子でズボッとドッキングする。
残り二匹のオオカミはビビり散らし、森の奥へ逃げていった。
「さっ、魔核だ、魔核!」
依頼達成の余韻に浸る間もなく、だいちゃんはオオカミの死体へ歩み寄る。
そして、あの刃渡り5cmの工作用カッターのような剣を、
心臓あたりにズボズボと突き立て始めた。
「やったぁ! 依頼達成! 加奈お姉ちゃん、僕やったよ!!」
返り血(?)を浴びても気にせず、黒い石のような塊を掲げてはしゃぐだいちゃん。
……どこからツッコめばいいんだろう。
「……っていうか、何なのよ今の。ダイレクトアタックって。
あんた、投げられてたじゃない」
すると、だいちゃんは不思議そうにボタンの目をこちらへ向けた。
「やだなぁ、加奈お姉ちゃん。忘れたの?
前に配信が終わった後、『アンチコメントがムカつくー!』って泣きながら、
僕を壁に向かって全力投球したじゃん。あの時の動きだよ」
「えっ……私、そんな、そんな野蛮なこと……」
「………」
否定しようとして、止まった。
――深夜二時。
視聴者数「3人」の数字を見て、だいちゃんを掴んで「うおらぁぁぁ!」と
万歳三唱の勢いで投げ飛ばした、あの夜の記憶。
「あったわ……」
私の最低な八つ当たりが、この世界では「必殺技」へと昇華されていたらしい。
申し訳なさと恥ずかしさで、今すぐ地面に穴を掘って埋まりたくなった。




