35.演劇にする上で
「でもさぁ――」
大学を出て、夕暮れの通学路を歩きながら、
舞香がふと思いついたように口を開いた。
「もしこの話、本当に演劇サークルでやるってなったら、
沢木 連 にやらせる役がなくない?」
「……は?」
私は思わず聞き返す。
舞香は腕を組み、真面目な顔で続けた。
「だって沢木って、うちの演劇サークルの顔じゃん?
あの人を出さない企画、たぶん通りにくいよ」
「あー……」
それは、少し分かる。
沢木 連。
演劇サークルの看板役者。
背が高く、顔立ちも整っていて、
しかも演技まで上手い。
新歓公演では毎回女子人気をさらっていくし、
外部公演でも名前が知られている、
まさに“サークルの顔”だった。
でも――
「いや、だからってなんで異世界の話から
キャスティング問題になるの?」
「重要でしょ、そこ」
舞香は当然のように言った。
「だいちゃん主人公ポジだし、
加奈と私も実質メインキャラじゃん?
でも沢木が入る枠がないんだよねぇ」
「…………はっ」
私はそこで、ようやく気付いた。
「今更気付いたけど……
私、メインキャラなの……?」
「え?」
舞香がきょとんとする。
私はふらりと視線を逸らした。
「いや、だって……
異世界行ってるだけの一般大学生だよ……?
そんな、“物語の中心人物”みたいに言われても……」
自分で口にしていて、
なんだか急に恥ずかしくなってくる。
舞香は一瞬ぽかんとしたあと、
吹き出した。
「そこ今さら!?」
「だ、だってぇ……!」
「加奈、自覚なさすぎでしょ。
異世界行って、勇者人形と知り合って、
Aランク冒険者と遭遇して、
世界跨いで実験までしてるんだよ?」
「うぅ……」
「どう考えても主人公側だから」
私はその言葉に、
がくりと肩を落とした。
「………絶対に……無理……です」
「何が」
「主人公とか……
人前で注目されるのとか……
絶対ムリ……」
「あー」
舞香は納得したように頷く。
「まあ加奈、
“巻き込まれ型主人公”だもんね」
「主人公カテゴリで分類しないで……」




