31.再会と時計の設置
次に目を開けた瞬間、視界に飛び込んできたのは、見慣れた安アパートの天井ではなかった。
眩しい太陽の光、どこか懐かしいドット絵風の3Dの街並み。
そして、活気のある『ミクスの町』の広場だった。
「……来られた」 胸の奥から、言葉にならない安堵が込み上げてくる。
私は気がつけば、自分の右手――魔法使いの帽子を被った相棒を、両腕で思いきりぎゅーーっと抱きしめていた。
「わわわっ!? ちょっと、加奈お姉ちゃん急にどうしたの!? 苦しい、綿が出ちゃうよぉ!」 突然の熱烈なハグに、だいちゃんが私の腕の中で大慌てでバタバタと暴れる。
もちろん、こっちの世界の彼には、現実の私がどれほど不安な夜を過ごしたか知る由もない。
完全に意味が分からないといった様子で、ボタンの目を丸くさせている。
「よかった……本当に、また会えてよかった……」
「はいはい、感動の再会はそこまでね。
ほらクロさん、私たちがいない間に毛並みボサボサになってない?」
隣で舞香がケラケラと笑いながら、自分の左手のクロさんを撫でている。
「フン、俺様の高貴な毛並みがこの程度で乱れるわけなかろう」
クロさんもお揃いのとんがり帽子を揺らしながら、いつも通り偉そうに鼻を鳴らした。
「よし、それじゃあ早速ギルドへ突撃!」
舞香の号令で、私たちは冒険者ギルドへと向かった。
ギルドの扉をくぐると、そこには賑やかな冒険者たちの笑い声と金属音が混ざり合う相変わらずの光景、
私たちは受付カウンターへ直行する。
幸い、いつもの親切な受付のお姉さんが笑顔で迎えてくれた。
「あの、すみません! ちょっとお願いがあるんですけど……これ、ここに置かせてもらってもいいですか?」
私が恋人繋ぎの隙間から無事に持ち込めたデジタル時計を差し出すと、お姉さんは不思議そうにそれを手に取った。
「あら、珍しい魔道具ですね。鏡の中に数字が浮き出ている……?」
「あ、はい。時間を測る道具なんです。 ちょっとした実験で、しばらくここに置いておきたくて。
あ、絶対に迷惑はかけませんから!」
「ふふ、だいちゃんのお姉さんのお願いですから、これくらい構いませんよ。カウンターの隅に飾っておきますね」
お姉さんは快く引き受けてくれた。
設置を終えた私は、念のために時計の液晶を確認する。
現実世界でセットしてきた時間はぴったり正確に刻まれており、コロン(:)のマークが規則正しく点滅していた。
再びここに戻ってきた時、この数字がどう変化しているかで「時間の法則」が判明する。




