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第三章22.帽子とカメラと

だいちゃんとクロさんに、完成したばかりの魔法使いの帽子を被せる。

黒いフェルトの三角帽子。先端には、私と舞香で徹夜して縫い付けた小さな星飾り。


「わぁ……かわいい……!」

舞香がクロさんを持ち上げながら笑った。私は右手にはめた、だいちゃんを見る。


「……なんか、ほんとに魔法使いっぽい」


もちろん、返事なんてない。だいちゃんもクロさんも、現実ではただのパペットだ。

……なのに、少しだけ嬉しそうに見えてしまうのは、きっと気のせいなんだと思う。


今日は“実験”の日だった。舞香と恋人繋ぎをして、その手のひらの間にスマホを挟む。スマホも異世界へ持ち込めるのか試すためだ。


「よーし! 今日は異世界映え写真撮りまくるぞー!」

「成功したら大発見だよね」

舞香が楽しそうに笑う。私はベッドへ潜り込みながら、右手のだいちゃんを見た。


「……じゃ、おやすみ」

そのまま、私たちは眠りについた。



次に目を開けた時、そこはいつものミクスの町の広場だった。

石畳、噴水、行き交う冒険者たち。


「来たぁー!」

舞香が勢いよく立ち上がる。右手のだいちゃんも、左手のクロさんも、ちゃんと魔法使いの帽子を被っていた。

『わーい! ほんとに魔法使いみたい!』

『ふっ、当然だな』

二匹が得意げに胸を張る。……やっぱり、こっちでは普通に喋る。


私はそこで、ふと違和感に気付いた。

「あれ? なんか、町の雰囲気違わない?」

前回来た時より露店の位置が少し変わっている。噴水横にいた果物屋もいない。


「そういえば前にもあったよね」

舞香が思い出したように言った。

「加奈、だいちゃんのランクC昇格祝勝会、参加してないって言ってた」


「あ……」

そうだ。あの時も、ギルドの仮眠室で寝てから現実へ戻った。そして次に来た時には、数日後みたいな空気になっていた。


私は腕を組みながら考える。

「多分だけど、宿屋とかギルドの仮眠室で寝ると“正式ログアウト”なんだと思う」

「正式ログアウト」

舞香が面白そうに繰り返した。

「で、だいちゃんが驚いたりしてリンクが切れた時は“強制切断”だから、続きから始まる……とか?」

『ゲームっぽい!』

『なるほどな』


……いや、実際かなりゲームっぽい。


「Baseの考察はここまで、今は実験!」

私はポケットからスマホを取り出した。当然、圏外。けれど、ちゃんと持ち込めている。


「きゃーっ!だいちゃん、その帽子かわいい!」

『えへへ!』

「クロさん、もうちょっと右!」

『俺様を撮るなら格好良く撮れ』

「はいはい、並んで並んでー!」


パシャリ。

スマホの画面には、ミクスの町の石畳。その真ん中で、魔法使いの帽子を被った、だいちゃんとクロさん。

どう見ても、完璧な“映え写真”だった。

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