2.だいちゃんの足
あまりの衝撃に、私は跳ねるようにして飛び起きた。
「はっ……はぁ、はぁ……」
視界に入るのは、見慣れた安アパートの天井。
どうやら、あまりの疲労で変な夢を見てしまったらしい。
「お風呂、入らなきゃ……」
シャワーを浴びながら、さっきの夢を反芻する。
いくらなんでも「足」って何よ。私は人間よ?
足扱いなんて、そんなフェティッシュな趣味はない。
けれど、風呂上がりにパジャマへ着替えながら、ふと思った。
「……続き、気になるかも」
あくまで明日のライブ配信のネタとしてだけど。
私は“もしかしたら見られるかも”くらいの気持ちで、
再び右手にだいちゃんを装着し、布団に潜り込んだ。
◇
「もう、びっくりしたなぁ。急に叫び出すんだもん」
意識が切り替わった瞬間、そこは再び『ミクスの町』だった。
だいちゃんは相変わらず私の右腕に収まっているが、
その態度は妙に堂々としている。
(本当に、続きの世界に来ちゃった……)
どうやらこれは、ただの夢ではないらしい。
かつて読んだ本には「明晰夢では自分の思い通りに世界を変えられる」
なんて書いてあった気がする。
例えば、空を飛ぶとか!
(飛べ……飛べ、私……!)
……ダメだ、1ミリも浮かない。
そうこうしている間に、私の意志とは無関係に右腕が先行し、体が勝手に歩かされる。
やっぱり私は、だいちゃんの“足”でしかないらしい。
やがて、私たちは目的の果物屋に到着した。
「おばあさん、そのリンゴちょうだい。とりあえず二つね!」
だいちゃんがどこからか取り出したコインを払い、リンゴを受け取る。
「はい、加奈お姉ちゃん」
促されるままにリンゴを受け取り、かじる。……シャリッ。
「……っ! 美味しい……なにこれ、ものすごく甘い!」
夢の中なのに味がする。
この、甘い香りが鼻に抜ける感覚が、思い込みなわけがない。
でも……本当に美味しい。この世界って一体……。




