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パペットだいちゃん  作者: オレオレ!
第1章

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1/8

1.加奈とだいちゃん

「みんなー、今日も聞いてくれてありがとう! それじゃあ、加奈とだいちゃんでした! まったぬ~ん!」


配信終了のボタンを「プッ」と押した瞬間、私は電池が切れた人形みたいに床へ倒れ込んだ。


「はぁ……疲れた。死ぬ……」


さっきまでのハイテンションな作り声が嘘のように、安アパートの一室には重苦しい静寂が戻る。


私は加奈。一応、声優を目指している女子大生だ。

声には自信があるけれど、正直、顔には自信がない。

だから私は、手作りパペットの『だいちゃん』をメインキャラに据えて、

声優チャンネルのライブ配信を続けている。


ただ、リスナーの八割は、画面に映るのが「布の塊」だと分かった瞬間にブラウザバックしていく。


「私の声を聴いてほしいのに。声優は顔じゃないのに……」


溢れそうになる涙をこらえながら、私は意識を手放した。

右手には、相棒のだいちゃんをはめたままで。



ふと気づくと、私は見たこともない広場に立っていた。


どこか懐かしいドット絵の世界を、無理やり高精細な3Dに描き直したような街並み。

中世ヨーロッパ風の、いわゆる『王道RPGの最初の町』そのものだ。


そこで、ありえないものが聞こえてきた。


私の右腕から、聞き慣れた「男の子の声」が響いている。――私が喋っているわけじゃないのに。


「やぁ、おばさん! そのリンゴ、すごく美味しそうだね。どこで買ったの?」

「おや、可愛い坊や。あそこの果物屋さんだよ」

「そっか、ありがとう! さっそく買いに行ってみるよ!」


驚愕。


私の右手に鎮座するだいちゃんが、勝手に口をパクパクさせて村人と会話している。

それどころか、だいちゃんが走り出した勢いで、私の体は右腕に引きずられるように移動を開始した。


「えっ、ちょ、ちょっと待って!?」


必死に踏ん張って抵抗する私。すると、だいちゃんがグイッと首をひねって私を振り返った。

ボタンの目が、心なしか呆れたように細められる。


「ん? あれっ、加奈お姉ちゃん、どうしたの? リンゴ買いに行くよ」


「ちょっと待ってって言ってるでしょ! 何これ、夢!? っていうか何で動くのよ!」


「ああ、そっか。お姉ちゃんはこの世界は初めてなんだっけ。ここは『ミクスの町』。

僕はここで冒険者をやってる、勇者だいちゃんだよ!」


いや、そうじゃなくて。設定の話じゃなくて。


「すごいでしょ? さっきレベルも10に上がったんだ。――ステータス・オープン!」


だいちゃんがそう叫ぶと、空中に半透明のウィンドウが現れた。

そこには確かに【称号:勇者】の文字。


いや、だから、そうじゃなくて!


「ほら、加奈お姉ちゃんのも見てみなよ。ステータス・オープン!」


ブンッ、という効果音と共に、私の目の前にもウィンドウが展開される。


【名前:加奈】

【称号:勇者だいちゃんの足】


「…………えっ?」


私は、私という存在のすべてを込めて絶叫した。


「あしぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?」


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