19.だい活躍?
「加奈お姉ちゃん、僕もギュッとして!」
右手のだいちゃんが、さっきの舞香たちの様子を見て羨ましくなったのか、甘えた声を出した。
「活躍したらね」
私はわざと素っ気なく返す。
「ちぇー」
だいちゃんは不満そうに口を尖らせた。
「そんなことより、薬草拾ってギルドに戻りましょ。舞香にも、早くミクスの町の風景を見せたいしね」
私たちは気を取り直し、再び地面の薬草を集め始めた。
その時だった。
ふいに、だいちゃんがぴたりと動きを止める。
ボタンの目が、森の奥をじっと見つめていた。
「……ん?」
次の瞬間。
私の意思とは無関係に、右腕が勢いよく持ち上がった。
「えっ、ちょ、だいちゃん――」
言い終わる前に、だいちゃんが叫ぶ。
「敵発見ーっ!!」
そして――走り出した。
いや、違う。
私が、だいちゃんに引きずられて走らされたのだ。
「うぁああ!? ちょっと待って待って待って!!」
次の瞬間、私の足は勝手に地面を蹴って大ジャンプ。
視界が一気に浮き上がる。
「行くぞぉ! 必殺――『ジャンピング・ダイレクトアタック!!』」
空中で前のめりになった状態から、右腕が勢いよくだいちゃんを射出した。
いわゆる全力投球モードである。
だいちゃんの飛んでいく先には、大きなコモドオオトカゲみたいな魔物の姿があった。
「あっ、なんか強そうなのいる――」
そこまで確認したところで、私は重大な事実に気付く。
推進力を失った私は、普通に落ちる。
「ちょっと待っ――」
ズサァァァァァンッ!!
私は盛大に地面へダイブした。
顔面から。
「痛ったぁぁぁぁぁ!!」
泥と草まみれになりながら、私は地面に突っ伏す。
その直後。
ドォォォン!!
少し離れた場所で、重たい衝突音が響いた。
「やったぁー!!」
ぴょんぴょん跳ねながら、だいちゃんがこちらへ戻ってくる。
「加奈お姉ちゃん! 僕、活躍したよー!」
振り返ると、さっきまでいた巨大トカゲが完全に伸びていた。
どうやら、本当に仕留めたらしい。
「…………」
私は泥だらけの顔のまま、無言でだいちゃんを見上げた。
「えへへ」
「えへへ、じゃないわよぉぉぉ!!」
私は勢いよく立ち上がった。
「だいちゃん! 勝手に飛び出したら危ないでしょ!? せめて動く前に言いなさい!」
「は、はいぃ……」
だいちゃんがしゅんと縮こまる。
隣では、クロさんが露骨に不機嫌そうな声を出していた。
「そうだぞ。俺様の活躍の場を台無しにしやがって」
「そうそう! 完全にだいちゃんの単独ライブだったね!」
舞香はケラケラ笑いながらクロさんに同調している。
「うぅ……ごめんなさーい……」
だいちゃんが私の右手の上でぺこりと頭を下げた。
布の塊のくせに、耳まで垂れ下がっているように見える。
「うっ……」
私は思わず言葉に詰まる。
「そ、そんな顔されたら、それ以上怒れないじゃない……」
あざとい。
絶対あざとい。
でも、ちょっと可愛いのが悔しい。
私は大きくため息をつきながら立ち上がり、服についた泥を払った。
そして、倒れている巨大トカゲと、周囲に散らばった薬草を見回す。
「……ハァ。ほら、だいちゃん。魔核回収して」
「はーい……」
「薬草も拾って、さっさとギルドに戻るわよ」
すると、舞香がニヤニヤしながら口を開く。
「でも加奈、“活躍したらギュッとしてあげる”って言ってたよね?」
「……あっ」
しまった。
私が固まると、だいちゃんのボタンの目がぱぁっと輝いた。
「加奈お姉ちゃん!!」
右手が全力でこちらへ飛びついてくる。
「わっ、ちょっ――!」
ぎゅうううっ。
勢いそのままに、私はだいちゃんを抱きしめる形になった。
泥だらけのまま。森のど真ん中で。
「えへへぇ~」
だいちゃんは満足そうに頬をすりすりしてくる。
「……もう。調子いいんだから」
私は呆れ半分でため息をつきながら、そっと右手を撫でた。
――ふと見ると、だいちゃん、魔核回収のせいで血まみれだった。
「あー、私の服が血だらけになったじゃない」




