18.杖・小悪魔
「加奈お姉ちゃん、あの子大丈夫? ステータスに『悪魔』って書かれてたよ」右手のだいちゃんが心配そうに囁く。
「多分、大丈夫よ。この世界の悪魔とは意味が違うからね」
「ふーん……」
私たちがそんな会話を交わしていると、舞香の左手にはまったクロさんがギラリとボタンの目を輝かせた。
「ほう、お前が俺様の『杖』なのか! ならばちょっと試してみるか!」
次の瞬間、クロさんが意思を持ったようにぐいっと引っ張られ、
それに連動するように、今度は舞香の何もはめていないはずの右手が勝手に跳ね上がった。
まるで、左手のクロさんが「引き金」で、右手の指先が「魔法の砲身(杖の先端)」にでもなったかのような不思議な感覚だ。
そういえば、現実で眠る時はしっかり恋人繋ぎをしていたはずなのに、目覚めた時には私と舞香の手はいつの間にか離れていた。
これも接続実験の影響なのだろうか。
私がそんな考察をしている暇もなく、クロさんの鋭い掛け声が響く。
「メラ!」 ドォンッ!
舞香の右手の指先から発射されたのは、さっきクロさんが見せたマッチの火のような頼りないものではなかった。
それは、どう見てもテニスボール大はある、真っ赤に燃え盛る火の玉だった。
「きゃー! クロさん凄い! 私も凄い! びっくりしたー!」
舞香は目を輝かせ、左手にはまったクロさんを胸元に引き寄せると、両腕でギューッと抱きしめた。
「ふ、ふふん……っ! お、俺様にかかれば、こ、このくらい当然だ!」
突然のハグに戸惑ったのか、クロさんは綿をムギュッと潰されながら、上擦った声で精一杯のドヤ顔(布だけど)を決めている。
威力が上がった魔法。懐いている野生(?)のオオカミ。そして、当の本人は一切の悪気がない満面の笑み。
私は冷や汗を流しながら、舞香のステータスウィンドウを二度見した。
「……え、なにこれ。舞香の『小悪魔』って、私たちが思ってた意味じゃなくて……本当にガチの、恐ろしい“状態異常”なんじゃないの?」
頼もしすぎる(?)新たな仲間の爆誕に、私のツッコミのキレだけが森に虚しく響き渡るのだった。




