14.薬草採取
「今日はこれでお願いします!」
私は受付のお姉さんに依頼票を渡し、薬草が生えている森の場所を教えてもらっていた。
どうやら、柿みたいな実がなっている木の根元を探すと、生えていることが多いらしい。
だいちゃんはというと、
「受付のお姉さん、加奈お姉ちゃん、ひどいんだよー。僕、討伐に行きたいのにさ!!」
と、露骨に不満を訴えている。
「あらあら、だいちゃん。でも、新しいお友達――クロさんを守るためなんですって。お姉ちゃんは優しいですね」
受付のお姉さんは、くすくすと楽しそうに笑った。
その言葉に、左手のクロさんが即座に噛みつく。
「おい! 誰が友達だ、誰に守られるって!? 俺様の方が強いと言っているだろう!」
「だよねー! せっかくなら討伐行こうよー!」
「行きません!」
私がぴしゃりと言い切ると、右手と左手がそろって不満そうに暴れ出す。
……お願いだから、ギルドの中では静かにしてほしい。
私は、なおも言い争う二人を引っ張りながら、ため息混じりにギルドを後にした。
すると背後から、
「あ、そうそう! その柿みたいな実、ものすごく渋いから絶対に食べちゃダメ――あ、行っちゃった」
と、受付のお姉さんの声が飛んできた。
けれど今の私には、その忠告を聞き返す余裕なんてない。
右手では勇者が騒ぎ、
左手では魔法使いが吠えている。
……薬草採取って、もっと平和な依頼じゃなかったっけ。
◇
ミクスの町を抜け、目的の森へと向かう道中、私はふと思い立って尋ねてみた。
「そういえば、クロさんは、どんな魔法が使えるの?」
「そうか、知りたいか。ならば見せてやる」
クロさんが得意げに胸を張る。
すると、クロさんの細い腕の先に、マッチの火みたいな小さな炎がぽっと灯った。
しゅぽっ、と頼りない音を立てながら飛んでいき、道端の岩に当たる。
岩の表面が一瞬だけ赤く燃え広がり、そして、何事もなかったかのようにすうっと消えていった。
「今のはメラゾーマではない、メラだ」
フッ、とボタンの目を細めながら、クロさんは大物ぶって言い放った。
「自分で言っちゃうんだ……」




