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【休載中】(初稿版)本能寺は止めない、だが光秀は死なせない 〜未来を知る将軍・足利義昭、戦国を動かす〜  作者: 細川 雅堂
第六章 政治戦の開幕

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第三十話 白の沈黙

街道に、長い列があった。


安土へ引き返す荷車の群れ。

兵の姿はない。誰も、命じてなどいない。


それなのに──

人足たちは皆、同じ調子で鼻歌を歌っていた。


「ほいさ……ほいさ……」


妙に揃った足取り。軽い肩。揺れる荷車。

別の人足は、歩きながら安土の方角へ手を合わせていた。


祈るように。

帰るのではなく、帰りたがっているように。


光秀は列の端に立ち、一人の人足と目が合った。

……はずだった。


人足の視線は、光秀を通り抜け、その先の安土だけを見ていた。


鼻歌は続く。

「ほいさ……ほいさ……」


光秀の足元の土に、さらりと白い粉が落ちた。



荷車の列が、遠ざかっていく。


光秀は声をかけようとした。

「……待て」


喉が張り付いたように動かない。

ようやく絞り出した声は、白い粉に吸い込まれ、誰にも届かなかった。


頬についた白い粉を拭う。

手が白くなる。街道も、白く染まっている。


風に舞う粉が、光秀の肩に音もなく積もっていく。


誰も振り返らない。

誰も、光秀を見ない。


ただ、白だけが残った。



二条御所の奥。


畳に散った米を、義昭は一粒ずつ、丁寧に拾い上げていた。

指先は、決して震えない。


白い粒が、静かに掌に集まっていく。


「……これを、炊け」


藤孝が深く頭を下げ、静かに去る。


しばらくして、湯気の立つ椀が置かれた。

義昭は箸を取り、白い米を口に運ぶ。


咀嚼の音だけが、部屋の静寂に落ちていった。



街道には、もう誰もいなかった。


ただ、荷車が落としていった白い米の跡が一筋。


安土へ向かって。

細く、長く、どこまでも伸びている。


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