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【休載中】(初稿版)本能寺は止めない、だが光秀は死なせない 〜未来を知る将軍・足利義昭、戦国を動かす〜  作者: 細川 雅堂
第五章 京の陰謀

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第二十四話 織田への疑い

京の朝はざわついていた。

将軍暗殺未遂の噂が、夜明けとともに広がっていた。


将軍襲撃。

刺客。

黒幕。


そして──

犯人の名は出ていない。

噂だけが、独り歩きしていた。



御所近くの屋屋。

数名の公家が集まり、声を潜めて話していた。


「将軍が襲われるとは……」

「京の治安はどうなっている」

「犯人は捕まったのか」


その中の一人が、ためらいながら言った。


「……織田ではないか」


空気が止まった。

誰も肯定しない。

誰も否定しない。


だが、信長の強さを恐れる公家たちは、

その可能性を口にすること自体が、

すでに“疑い”を生んでいた。



寺院でも同じ話が出ていた。


「将軍暗殺とは……」

「武家の争いが京に及んだか」

「いや、織田が京を支配するためでは」


僧たちの声は低い。

しかし、その低さが逆に重かった。

疑いは、静かに広がっていく。



光秀は義昭のもとへ急いだ。


「将軍様……京では、織田の名が出ています」


光秀の声には動揺があった。

織田家臣として、

将軍の側近として、

どちらの立場でも苦しい。


「信長様が疑われております」


義昭は庭を眺めたまま、答えた。


「そうか」


光秀は思わず言った。


「止めるべきでは……?」


義昭は首を振った。



「それでよい」


光秀は息を呑んだ。

義昭は続けた。


「疑いは止めるものではない」

「流れを読むものだ」


光秀は言葉を失った。

光秀はようやく理解した。


将軍は疑いを恐れていない。

疑いを止めようともしていない。

疑いを──使っている。


義昭は静かに言った。


「疑いは刃より速い」

「刃は人を斬る」

「だが疑いは国を動かす」


光秀の背筋が冷えた。



義昭は光秀に問う。


「光秀」

「織田はどう動く」


光秀は答えられなかった。

信長の性格。

織田家の立場。

京の空気。

どれも読めない。


義昭は微笑んだ。


「疑われた者は必ず動く」

「それが次の盤面だ」


その時──

廊下から足音が響いた。


「将軍様!」


伝令が駆け込む。

「京で……騒ぎが!」


義昭は静かに目を閉じた。


(来たか)


光秀は気づいた。

将軍は驚いていない。

最初から──

それを待っていたのだ。

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