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【休載中】(初稿版)本能寺は止めない、だが光秀は死なせない 〜未来を知る将軍・足利義昭、戦国を動かす〜  作者: 細川 雅堂
第五章 京の陰謀

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第二十二話 京の暗殺捜査

京の朝は、ざわついていた。


将軍襲撃の噂が、夜明けとともに広がっていた。


将軍襲撃。

刺客。

黒幕。


そして──犯人の名は出ていない。


光秀は歩きながら思う。


(情報を絞る)

(噂だけを走らせる)


これは義昭の指示だった。

京の空気は、昨夜とは別の意味で重い。


光秀は刺客が捕らえられている部屋へ向かった。


縄で縛られた刺客。

黒装束、覆面。動かない。


光秀は装備を調べる。


短刀。縄。小袋。

どれも、わざとらしいほどに粗い。


(動きは訓練されている)

(だが装備は粗末……)


光秀は眉を寄せた。


(使い捨てだ)


侵入経路も不自然だった。

警備の隙を突いたように見えるが──


(誰かが、道を作った)


光秀は深く息を吐いた。


(だが、一体誰が……)


答えは出ないまま、義昭のもとへ向かった。


光秀が報告を終えると、義昭は静かに言った。


「犯人は……重要ではない」


光秀は思わず顔を上げた。


「し、しかし──」


義昭は光秀を見た。


「重要なのは、誰が得をするかだ」


光秀は息を呑んだ。


義昭は指を折りながら言う。


「朝廷。公家。寺社。三好の残党」




「……織田の内部」


光秀は驚愕した。

(内部まで含めるのか……!)


義昭は続ける。


「成功した場合と、失敗した場合」


光秀は黙って聞く。義昭は淡々と語る。


「成功すれば、将軍は死ぬ。混乱が生まれ、権力の空白ができる。……だが、失敗すれば政治事件になる。疑いが広がり、誰かが揺れる」


光秀は息を呑んだ。

義昭は静かに言った。


「この刃は、私を殺すためではない」

「政治を、動かすためだ」


光秀の背筋が冷えた。


義昭は結論を述べた。


「犯人は、まだ動く」


光秀は驚く。


「なぜ……?」


義昭は微笑む。


「暗殺は、始まりにすぎぬ。盤面を動かすための、最初の手だ」


光秀はそこで黙った。

言葉が出なかった。


(……もう盤面が、見えているのか)


義昭は、すでに“次”を見ている。


義昭は光秀に問う。


「光秀。噂は広がっているか」


光秀は頷いた。


「京中に」


義昭は微笑んだ。


「それでよい」


義昭は空を見上げ、静かに言った。


「噂は、刃より速い」


光秀は、何も言えなかった。

暗殺未遂の翌朝、京の空気が変わり始めました。


この章は「犯人探し」よりも、

その事件で誰が動くのかを描いていきます。


次話から、盤面がもう一段動きます。

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